003 魔法学院入学試験:第2部
第一段階の試験に合格したらしい……ローズ先生はどういう判断基準だったのかは知らないが、まあ、結果オーライだろう。今回は誰も文句を言わなかった。恐れていただけだろうか……まあ、いい。とにかく合格だ。
これで正式にネズラ学院の生徒になったわけだ。あの老いぼれのタオに会いに行って、顔を見てみたい。どんな顔をするか楽しみだ。
しかし、試験はまだ終わっていない。第一段階の試験が終わって、第二段階(競争段階)が始まる。
ローズ先生は生徒を5人ずつのグループに分けるらしい。約20人だから、4つのグループになる。各グループで上位3位までが勝ち残り、残りの2人は脱落する。
新入生にしては、かなり厳しいルールだな。まあ、私は参加しないので、椅子に座って見ているだけだ。他の人たちが必死になっているところを見るのは楽だ。ヘヘヘ……まるでカンニングしている気分だ。
ローズ先生はグループを発表しました。「第一グループは、ネヴィラ アストル メルディスシャルロット フィオールグラン、アリアンです。」
……?
「はっ!?」 椅子から跳ね起きた。
「何だこれは!試験に合格したって言っただろうが!どういう意味だ、ローズ先生!」 鋭い視線を向け、怒りを込めて声を張り上げた。
「うるさいわね。確かに合格よ。だけど、あなたとあと二人のレベルに匹敵する生徒が他にはいないの。だから…こうなったのよ。」ローズ先生は、少し呆れたように答えた。
「マジかよ…!」 落胆と不満が混じった声で呟いた。
「でも、3人しかいない。あと2人足りないじゃないか。」
「4人目のメンバーはすぐ来るわ。それまで、競争を始めましょう。」ローズ先生は、不敵な笑みを浮かべた。
突然、何の前触れもなく、鋭い打撃が胃に突き刺さった。ローズ先生からの奇襲だ!衝撃で大きく後ずさりした。
「ふっ!なかなかやるじゃない、ブロンド。」ローズ先生は、自信に満ちた笑みを浮かべ、鋭い視線を私に向けた。「最後の瞬間に私の攻撃を察知し、風のバリアで身を守ったわね。さらに、衝撃波を利用してうまく方向転換した。なかなか抜け目ないわ!」
ローズ先生は、指を突き出して言った。「私が5人目のメンバーよ、アリアン。親睦試合…いや、真剣勝負を申し込むわ。」
「な、なぜ…?」
「私が試験の責任者よ。私が決めることなの。」
ローズ先生は右上を見上げ、誰かに合図を送った。近くの建物の窓から、誰かがこちらを見ていた。
男が部屋に入り、すぐに武器を持って現れ、ローズ先生に手渡した。
ローズ先生は武器を私に突きつけた。「私の親友、『サイレントランス・ノールフィア』よ。」
「三本の槍を持つ、その名の通り『サイレント』な槍。音もなく、目に見えず、静かに傷つけるの。気づけば既に傷ついている…そんな恐ろしい武器よ。」ローズ先生は、武器の特徴を説明した。
「この勝負を生き延びてみろ。」ローズ先生は、冷酷な眼差しで言った。
…まさか。状況がこんな展開になるとは…。いや、真剣勝負だ。考える時間はない。
真剣な表情で言った。「そういうことなら、本気で挑む。先生が誰であろうと、今は敵だ。…ローズ先生、死にたくはないわよ。」
「ハハハ…それが聞きたかったわ。」ローズ先生は、狂気じみた笑みを浮かべた。「さあ、諸君…本物の戦闘を見せてもらおう!」
ローズ先生は、超高速で突進し、槍を水平に振り回した。「これを受けろ!」
私は身をかわし、低い姿勢になった。髪の毛が少しだけ槍に触れた。
拳に風を纏い、腹への一撃を返した。
ローズ先生は、槍の先端を盾のように使って防御を試みた。しかし、衝撃で大きく後退した。
ローズ先生は、狂気に染まったような笑みを浮かべていた。
ローズ先生は、猛スピードで槍を垂直に私の頭上に突き刺そうとしてきた。
風の流れを利用して、私は右に素早く移動し、攻撃を回避した。
私は彼女の周りを高速で回転し……「竜巻!」
巨大な竜巻が発生し、ローズ先生は中心に巻き込まれた。
「ハハハ!面白い!実に面白いわ、アリアン!」ローズ先生は、興奮した様子で笑った。
他の生徒たちは、目を丸くして、呆然と私たちを見つめていた。
「サイレントランス…霧の技!」
私の「竜巻」は消え、灰色の霧が私を包み込んだ。何も見えなくなった。
ローズ先生の低い声が、霧の中に響き渡る。「私のターンよ。」
「ぐっ…!」 突然、左肩に何かが突き刺さった。
すぐに右肩にも攻撃を受けた。痛い!激痛が走る…霧で何も見えません。槍の音も聞こえない…。まさか!こんな武器を…!?このままでは負ける!こんなところへ戻ってくるために来たんじゃない。目的を達成するために、あの男を見つけるために、私は勝たなければならない。
「はあああああ!」 叫び声を上げ、残りの力を振り絞り、最後の攻撃に出た。「双剣!」両手に巨大な刃が現れ、霧の中央で円を描くように回転させた。
霧の中から小さな閃光が見えた。「そこに隠れているのか!」
「ハリケーン!」両方の刃からハリケーンを放ち、同時に同じ場所に叩きつけた。
霧が晴れ、ローズ先生は微笑み、口から血を流し、疲労困憊の状態でいた。「ふっ…よくやった…。」彼女は言葉を続けられず、気を失った。
「へへっ…くそっ…勝った…」両方の肩と口から血を流し、私も気を失った。
騒動が収まった後、他の生徒たちの驚きの声が聞こえた。その声がだんだん遠ざかっていく…。分かった…意識を失うんだ…。
.............
目を覚ますと、見上げたのは部屋の天井だった。右手に温もりを感じ、そちらを見ると、ネヴィラが私の手を握っていた。
「ここは…どこだ?」
その言葉に、ベッドのそばに座っていたネヴィラとシャルロットは、同時に驚いた顔で言った。「起きたの!?大丈夫?痛いところは?」
「いや、大丈夫だ。」
「信じられない!ローズ先生と互角に戦い、王宮騎士団第四位をあっさり倒すなんて…一体君は誰なんだ?どこでそんな力を身につけたんだ!?」
軽く笑って答えた。「ああ、子供の頃から鍛錬してただけさ。」
「でも…魔法の刻印もないのに、どうやって魔力があるってわかったんだ?子供の頃から魔力量を増やす訓練をして、それで強くなったのか?」
「ああ、そうだ…見抜かれたか。」
「きゃあ!見抜かれた!」ネヴィラは顔を赤らめた。
ネヴィラは、私が子供の頃から魔力量を増やす訓練をしていたとでも思ったらしい。まあ、これでいい。自分が過去から来た人間だってことは、絶対に信じてもらえないだろうし、言っても無駄だ。私だって、そんな話をされたら信じないだろう。
「ところで、試験はどうなったんだ?意識を失ってから、何が起きた?」
二人の様子から、誰かが敗退したのではないかと少し罪悪感を感じつつ、尋ねた。
「大丈夫だよ。あのとんでもない戦い後、4人目のメンバーが辞退して、福木先生が試験を続行して…私たち2人、合格したよ!」
「安心した、でもちょっと待って…福木先生って誰?」
「ああ、そうだ。ローズ先生は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。自分で見てみなさい。あなたの隣のベッドにいるわ。」
白いカーテンで仕切られているため、ローズ先生は見えない。というか、感じられない。相当な魔力を使ったせいか、まだ完全に力は回復していない。完全に回復するには、2、3日かかるだろう。
「ハハハ…やっと起きたか、ブロンド。」背筋が凍るような笑い声が聞こえた。カーテンの向こうから、ローズ先生が私たちを聞いていたのだ。
ベッドから降り、ローズ先生のベッドへ行った。全身包帯で巻かれているにもかかわらず、彼女は狂ったように笑っていた。
「ああ、すまない。あんなことになるとは思わなかった。」
「ハハハ…いいのよ。冒険者引退して以来、こんなに楽しかったのは初めてよ。」
は?冒険者?
「それに、君が原因じゃないわ。」
「どういう意味だ?」
「ノールフィアのサイレントランスの副作用よ。使いすぎると体に悪影響があるの。だから最近はあまり使っていなかったんだけど…くくっ」ローズ先生は血を吐いた。
その時、誰かが部屋に入ってきた。「ローズ!やっと起きたか!あの槍はもう使うなって言っただろう!一体何を考えているんだ!」
「ヒマリ、心配しないで。大丈夫よ。」
ヒマリさん…栗色の艶やかな髪と茶色の瞳の女性。
「今回は使いすぎよ。以前のようには体が耐えられないわ。このままでは…もっと酷くなる可能性もある。」
「でも…でも…こんな面白い体験は毎日あるわけじゃないわ!」ローズ先生は全く反省の色がない。
ヒマリさんは涙を流した。「でも…でも…わああああ!」
「わかったわかった!もう無茶はしないわ!」
「本当に!?」
「ええ、だからもう泣かないで、子供!」
ローズ先生に言われて、ヒマリさんの頬が膨らんだ。
「すみません…」
「あら、まだ自己紹介してなかったわね。私はヒマリ・アイトウ、医者よ。そして…あのミイラみたいな人の妹。」ヒマリさんはローズ先生の方を見た。
「おい、ミイラ呼ばわりするなよ、泣き虫!」
「だって、いつも私の言うことを聞かずに、勝手に無茶して、ミイラみたいになってるじゃない!」
「一体どういう意味だ!?」
「フン、ミイラみたいな人にはわからないわ!」ヒマリさんは頬を膨らませて、顔をそむけた。
「おい、ちゃんとこっちを見て話せ!」
本当に姉妹だな…と思った。
ローズ先生は言った。「ところで…あなたたち3人は第一グループよ。つまり、最強グループね。おめでとう。」
これは本当に嬉しい知らせだ。あの試験の騒動の後、無事に終わった。目的達成に向けて、一歩前進だ。次は、この世界の情報収集だ。あの男を見つけるために。
「皆さんの制服は、今準備中よ。すぐに届くから、着替えてきなさい。特に、ブロンド君。」
新しい制服…なんだか、子供の頃にお気に入りの服を着る時みたいな、懐かしいワクワク感が蘇る。こんな気持ち、久しぶりだ。
「ありがとうございます、ローズ先生。すぐに着替えてきます。」
3人で、校舎右翼2階にある着替え部屋へ向かった。あの建物には教室がない。魔法が込められた武器、剣、槍、短剣などが廊下の壁に飾られ、空っぽの部屋や、あちこちに赤い線が引かれた部屋、そして、普通のサングラスとは明らかに違う、巨大なゴーグルのようなものがある。
「ネヴィラ、あれは何だ?」私は部屋の中央にあるゴーグルを指さした。
「仮想現実ゴーグルよ。」
仮想現実…何だそれ?
ネヴィラの説明を聞きながら首を傾げると、彼女はため息をつきながら説明を始めた。「仮想現実とは、簡単に言うと、現実じゃない世界のこと。これを装着すると、現実とは違う世界が見えるの。まるでその世界の中にいるみたいだけど、実際は現実の世界に繋がったまま。意識だけが仮想世界へ行くのよ。」
「それで、何の役に立つんだ?」
「危険な魔法の訓練に使うのよ。例えば、英雄時代で訓練したいとか、偉大な英雄と戦いたいとか、そういうのを座標に設定すれば、その時代や場所に瞬間移動できるの。」
「なるほど…」ネヴィラの説明を理解したふりをしながら、うなずいた。
ふむ、また未来の高度な技術だな。
2階を奥へ進むと、廊下の突き当たりに男女別の着替え部屋があった。
「私たちはここで着替えるわ。私たちが先に出てきたら、ここで待つわ。あなたも、同じようにね。」
「わかった。」
「こっそり覗かないでね、いい !」
「も、もちろんそんなことしないよ。」
「アハハ…冗談よ。セキュリティシステムを突破できるわけないじゃない。じゃあ、着替え終わったらここでね。」
ネヴィラは部屋に入り、軽く会釈してシャルロットも続いた。
私も入ろうとしたが、ドアには取っ手がなかった。
ふと、二人の女性が着替え部屋の前に立っているのを見た。二人はドアの左側の小さな円に、1秒間ほど真剣な眼差しを向けると、ドアが自動的に開き、彼女たちは中に入り、ドアは自動的に閉まった。
これは…すごい。
私もやってみよう。「よし…左…左…あった!」緑色の円を見つけた。
近づいてじっと見つめると、緑色の光が垂直に動き、私の目と交差した。そして、ドアが開いた。
部屋に入り、ドアは自動的に閉まった。
着替え部屋は…銀色の光沢のある部屋で、天井には照明が、壁には大きな円がいくつも付いていた。部屋の外にあった目センサー(と勝手に呼んでいる)と同じものが、各円の中央にある。
センサーの前に立ち、目を向けると、先ほどと同じように緑色の光が目に届き…は?私の写真と名前、そして第一グループ、そして青い文字で「ブロンドの少年」と書かれていた。
考えるまでもない。あのミイラ先生(ローズ先生)がつけたんだな…。
まあ、恥ずかしいあだ名じゃないから、今は気にしないでおこう。
目の前の円を開けると、何かが袋に包まれた状態で飛び出してきて、私の顔に当たった。新しい制服だ。
嬉しそうに着替えた。制服には、金のネックレスが付いていた。鏡に映る自分を見て、なかなか様になっている。
「よし、外に出て二人に合流しよう。もちろん、覗き見はしない。部屋の前で待つだけだ。紳士はそうするべきだ。「変態ブロンド」なんて呼ばれたくない、ただの「ブロンド」で十分だ。」
部屋から出ると、目の前に広がった光景に私は言葉を失った。赤い髪と丸顔、そして魅力的な体型の女性が、赤と黒の制服に金のネックレスを身に着けている。ピッタリとした制服は、彼女の美しい体を際立たせている。彼女の隣には、漆黒の髪と白い肌の女性が立っていた。彼女は少し背が高く、表情はほとんどないものの、独特の美しさを持っている。
「やっと終わったわ。かなり時間かかったわね。」赤い髪の女性が言った。
赤い髪の少女は、隣にいる少女の手を取った。「どう?似合うと思う?」
「素敵です!」私は目を輝かせて言った。
二人の顔に少し照れが見え、可愛らしい顔が赤くなった。黒髪で冷静な印象の少女は、ほんの少し微笑んだ。
ネヴィラ・アストル・メルディス、シャルロット・フィオールグラン。この二人は私の目にはとても魅力的に輝いていた。
「アリアン、あなたも素敵よ。もしかしたら、将来あなたに恋をするかも、あはは。」ネヴィラはそう言い、シャルロットも同意するように軽く頷いた。
「さあ、時間を無駄にしないで、教室に行こう。」
「うん、行こう。」
私はアリアン、過去から来たこの奇妙な世界に不慣れな男。右側にはいつも笑顔を浮かべるネヴィラ、左側には沈黙を保つシャルロット。彼女は私の隣を静かに歩き、目に見えない感情を秘めている。私たちの冒険は、ネズラ学院で今、始まった。
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