花は紡ぐ
梅里ゆき
秋はコスモス
どうやらこの時期になると金木犀が騒がれるが、私はそうではなかった。
彼ーーはコスモスの花を買って私の部屋に飾っていた。
そういう奴だった。
いつも自分の好きな花を買っては飾っていく。
しかも季節によっていつも同じもの。
「私は買わんぞ」
強い意志だった。
奴ーー花宮雫が出ていって1年が経過しようとしている。
最後まで何も言わないで消えていくような奴だった。
ヒモというわけでもなかったが、私の家に大学の友人だという理由だけで居座って半同棲をする男であった。
「今頃何してんだか」
コスモスの花畑が近くにあり、少し座りながら見ていた私。
「仕事してたんだよ」
「……は?」
怪しんで振り返るとそこには雫が立っていた。
コスモスを大量に抱えて。
「不審者みたいなのやめてくれる?」
私がそういうと、ゲラゲラと笑っていた。
「だってさ、お前さ、気づいてくれなかったじゃん」
「何を?」
「ほら今も気づいてない」
よくわからないことばかり言う雫に腹が立って、足を踏みつけると、悲痛な声が響いた。
「何に気づいてないのよ」
「俺がお前を好きだって」
「はあ?」
透き通る声に、色素の薄いモテそうな男からキザなセリフ。
小説かよ。
「半同棲なのに手出してこなかったじゃん」
「それは好きだから当然だろ」
順序とかとごちゃごちゃ言っている。
見た目の割に堅いらしい。
「私はコスモス飽きたから、今度は牡丹にして」
「牡丹かあ。考えとくよ……で、答えは?」
「付き合ってなんて言われてないわ。帰るわよ」
end
花は紡ぐ 梅里ゆき @minlinkanli
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