第4話
ぼんやりと開けた視界に飛び込んでくるのは白。
ぱちぱちと瞬きを繰り返して周りを見渡し、点滴につながれた自分の腕と水色の病院服に気づいて、ため息をついた。
「あ、碧斗さん起きたんですね。もう、どれだけご飯食べてなかったんですか?睡眠不足も重なってたんじゃないですか?」
ちょうどそのタイミングで病室のドアを開けて入ってきた柊也が、つらつらとお叱りの言葉を並べる。俺は返事をしようと口を開けるが、喉から空気の漏れるような音しか出なかった。
「…っ、」
「碧斗さん?どうしたんですか?」
怪訝な顔をして近寄ってくる柊也に、慌ててベッド横の棚に置かれたメモ帳を手に取り、文字を書いて見せる。
『こえがでない』
「え、」
『ぜんぜんこえがでない』
文字を書きながら、だんだん手が震えてきた。握りしめた鉛筆を持つ手に、柊也のかさついた手がそっと重ねられる。
「先生呼んでくるから、ちょっと待っててくださいね」
その声はどこか不安げだったけれど、背中を優しくさすりながら「大丈夫、大丈夫だから」と繰り返す。その暖かさに縋るように、小さく頷いた。
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