第2話
夏に入り、会社のプロジェクトが一段落し、やっと少しの余裕ができた安心感からか、俺は熱を出してしまった。むせかえるような猛暑の午後、ただぼんやりとスマホを眺めていると、とある投稿が目に留まる。
「…?」
なんとなくの好奇心で声を出してみたが、掠れた声しか出なかった。咳払いをして「あー、あー」と声を出そうとするも、完全には戻らない。
昔から体は強い方ではなく、風邪をひきやすい。今回もただの風邪のはずだったのに、どうしてこんなに長引いているのだろう。夏休み明けには会社の新プロジェクトの準備が始まる。それまでには治さないと、と焦っても、一向に治る気配がない。
「…でも、声が出ない時と、本当に全く出ない時があるんだよなあ…」
普段の風邪のひき終わりなら、声は多少掠れるだけで出せる。でも、全く出ない時は違う。喉が掠れているわけでもないのに、声帯そのものが機能しないような感覚になる。
「いつなんだろう…声が全く出なくなるのは」
原因がわかれば早く治せるかもしれない。そう思い、スマホを横に置いて腕を組み、考え込む。
会社で会議をしている時?
隣のデスクの同僚と雑談をしている時?
昼休みにリフレッシュしようと外に出た時?
いろいろ思い返しているうちに、一つの結論にたどり着いた。
――そうだ。俺は、柊也と一緒にいる時に声が出なくなることが多いんだ。
その事実を自覚した瞬間、体が強張った。心臓が一瞬止まったような気さえする。だが、それが本当に正しいかどうか確信は持てない。試してみるしかない。
俺はスマホを手に取り、柊也に「今、電話大丈夫?」とメッセージを送った。ほどなくして、スマホが震える。
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