第4話 掃討戦

 

 習得したスキルを使ってみた。生活魔法でクリーンが使えなかった。納得いかない。しかし検証とかやっていられる状況ではない。残ってるゴブリンを殺すべく移動しなければ。


 接敵。スキル威圧で相手を崩し、攻撃を当てる。ひるんだところでナイフで出血させ、突きまくってトドメ。これの繰り返しだ。


 ゴブリンは集団戦を好むはずだが、ラノベでよくある設定が反映されないのか、単体で行動している。お陰で次々と倒せている。車に向かって威嚇しているゴブリンを見つけ、後ろから襲いかかる。車の運転手にどう思われただろう。いや、気にしていられない。



「次っ!」


 何体か倒してて思ったのだが、ナイフで出血させてもなかなか死なない。なのに傘だとさっくりと死ぬ。ゴブリンナイフに設定された攻撃力の問題かなぁ? なんか傘が異様に強い。戦いにくいけど、効果が高いなら使い続けた方がいいに決まっている。



「空間把握。……あっちか」


 怪我した人はいるけれど、重篤な被害はまだ出ていないようだ。がんばって追い払ったりしている。7~8体だったか、あらかた倒したと思う。やっと休憩できそう。



「はぁ、はぁ、疲れた~」


 こんなに動いたのはいつぶりだろう? 3~4体で殺しに慣れたとはいえ、精神がこわばれば、体もこわばる。明日か明後日は筋肉痛だろう。土日は寝て過ごそうと思う。まぁ、いつもそうしてるけど。


 索敵圏内に残った敵はいない。死体は残っているが、誰かがフォローしてくれるだろう。それこそダンジョン庁とやらか、警察、いや、自衛隊かな?


 こうなると、どうしてゴブリンが唐突に出てきたのかが問題だ。俺以外に戦える人材がいなかったことも疑問だしな。そもそもここでは何が起こっていたのだろう?



「っ!!」


 異常な気配が膨れ上がる。えっ、今からボス戦ってこと? もう体力とか残ってないんですけど……?


 気配は駅前ロータリーの中心にある植え込み(?)みたいなところからだ。これってダンジョンが発生したのか? 魔物が溢れ出た? いわゆるダンジョンブレイクってこと? 辻褄はあってそう。


 背丈が180センチはあるだろうか、人型の魔物だ。姿・形はゴブリンだけど、上位種っぽいやつ。ホブか? いや、キングとかロードなのでは? 言うて俺とタッパは変わらないけど、そういう問題じゃない。ヤバいって。逃げてぇ~。戦いたくねぇ~。



(ダメだ、弱気は見せるな!)


 そこらの現代日本人に戦士としての本能なんてあるわけが……。けれど、ジンとしての部分が許さなかった。狂え! 襲いかかれ!と叫んでいる。そんな殺生な……。



(自己鑑定!)

 

 時間が停止する。良かった。まだ有効だった。一端、落ち着かせてください。


 うーん。レベルが上がっていない。レベルがないシステムなの? ステータスポイントは27になっていた。ゴブリンを9体倒したっぽい。そのぐらいかな? そんなことより、スキルポイントが増えてないのはどうして? 目論見が崩れ去ってしまった。


 とりあえずアレと戦う前にステータスを振らなきゃ。幸運を含めて7項目。4×7=28で、4ポイントずつ振るには1点足りない。いや、バランス振りしてアレに勝てるのか? どうするよ?


 いっか、適当で。ステータスは補正値の可能性が高い。数値化されていない元値の方が実力だろう。そっちが足りなければ、補正が高くても同じだ。そうさ、言うてタッパはかわりゃしないのだ。


『えーと、3ずつ振って~。残り6か。念のため筋力を20にして~』



ジン


筋力 20

体力 13

芸力 13

知力 13

魔力  5

意力 13

幸運 13


鑑定 生活魔法 空間把握 威圧

 

 こうなった。3ずつバランス振り。筋力だけ念のため20にして、残った1ポイントは魔力へ。

 

 作戦ったって、やれることは限られている。あとはもう覚悟を決めるばっかりだ。よし、行くか……!

 

 

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