第3話 スキルと戦闘タイプ

 

 ゴブリンと戦うべく、ステータス画面から復帰した。再び時間が流れだす。振り向いて、被害者女性に声をかけた。


「すみません、大丈夫で……」


 ゴブリンを殺した俺を、恐怖の目で見ていた。あっ、ダメだ。これ以上は良くない。


 正直、『助けたのにそりゃねぇよ』と思ったが、『怪我をさせてしまった。実際、間に合ってないのだから仕方ない』と打ち消しておいた。おばはんに駆け寄る人がいたので救助はそちらに任せ、俺はゴブリンへの対処に移ろう。適材適所だ。



「空間把握」


 索敵系スキル。習得に2ポイントかかった。索敵範囲はそこまで広くなさそうだけど、小さな駅前ロータリーの範囲ぐらいは把握できる。十分だ。ゴブリンらしきが何体もいるようだ。


 視界に見えてたゴブリンがもっとも距離が近い。また犠牲者が増える前に片づけてしまいたい。急ごう。


 武器代わりの傘を持ち、疲れない程度の小走り。こっちを向いていたから背後から襲ったりはできない。気付かれた。



「ウギギィ!」


 威嚇してくるが、攻撃はしてこない。こちらが攻撃のモーションに入ったら、避けようとしたのかパッと動いた。生意気。時間を掛けてられないのに、回避しようとしてくる。これで敵の数が増えるとよろしくないことになる。相手はゴブリンとはいえ、囲まれたら負けそう。



「オオオッ!」


 威圧スキルを使用。これも習得に2ポイント。効果はてきめんで、ゴブリンの動きが鈍った。おびえて身が竦んでいる様子。すかさず傘を突き込んだ。一息に制圧してしまおう。のし掛かるような膝蹴りで押し倒す。


 強さの方向性は、根本的なところで、2パターンに分類される。隠密型か、威圧型か。


 隠密型の場合、隠れることで攻撃を受けない様にしつつ、不意打ちを狙う。遠隔攻撃と相性が良く、遠距離ではスナイパー、近距離だとアサシンやニンジャのスタイルになる。

 射線が通る、もしくは、隠れる場所が必要といった具合で、得意な戦闘フィールドが限定される。対多数戦は不向き。戦闘ではなく狩りを行うタイプ。


 威圧型の場合、相手を萎縮させることを狙う。格下相手には滅法強いが、格上には効果がなかったり、逆に萎縮させられることも。方向性として存在をアピールするため、目立つし、狙われ易い。

 ちなみに遠距離威圧型の最大級のものは、核兵器による『核抑止力』だ。戦闘そのものの発生を抑えるように使うのが本道。

 フィールドこそ選ばないが、上を取ることを好む。多対多の集団戦闘向き。戦闘を行うタイプだが、囲んで滅多打ちにすれば狩り化することも可能。


 もっと単純なスピード型でも、隠密的に相手の意識をかいくぐるのか、速度でもって圧倒するのかでタイプ分類される。


 隠密型は自覚的に運用しなければ成立しない。一方で威圧型の場合、近距離パワータイプなら必然的に威圧型になるといった形で、無自覚なこともある。……個々人の向き不向きに合わせて自覚的に運用した方が強くなりやすいだろう。


 相手はゴブリン。手持ちに遠距離武器がない。自分の体が縦横にデカいとくれば、答えは決まったようなものだ。


 傘の中心の骨が折れないように、中間部分をもって突く。押し倒したゴブリンの、ナイフを持った手を踏みつけて反撃を殺す。顔などの柔らかい部分に向かって突く。必死に、狂ったように、心を殺して、相手を殺す。


 黒い煙が出て体に吸収された。ゴブリンの体は小さいとはいえ、不思議と簡単に死んでくれる。本当の生き物はこんなんじゃ済まない。まるでゲームの雑魚のよう。ファンタジー生物だから?



「死体が残ってる……?」


 1体目はすべて黒い煙に変わったのに、2体目は残った。まだ生きてるのかと疑ったが、動く様子はない。ラノベなんかの常識で考えたら、ダンジョン外のモンスターの場合、死体が残るのは割と普通の気もする。死体が残らないのは、ダンジョンが吸収するからって設定だな。


 踏みつけていた手の先に、ゴブリンのナイフがあった。小振りだがこれも刃物。形状的には剣鉈になるのかな? まだ使えそう。


 しかし、ゴブリンの使ってたものだ。きちゃない。ここは生活魔法の出番だろう。1ポイントで習得したスキルだ。……いざ!



「クリーン!…………あれ?」


 なにも出なかった。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る