第7話
「レーナお姉様がいない場所で聖女として働くなんて……わたくし、息ができなくなりそうです」
「つ、つまりは……」
「家出してきちゃいました!てへっ」
レーナの腕に胸を寄せながらペロリと舌を出して上目遣いでこちらを見ているエイブリーの仕草は全てがあざとい。
そこからエイブリーの暴言が続いた。
「クソ王子のこちらを見る目が気持ち悪い」「他の聖女達がウザすぎる」
街を抜けてもエイブリーの暴言が止まることはなかった。
彼女はリリース伯爵家の三女である。
しかも母親違いで歳が近く、長女と次女は聖女としても力もないためか相当窮屈な思いをして育ったらしい。
城でも伯爵邸でもうんざりしていたエイブリーはレーナが現れてから景色が変わったと語った。
レーナと一緒に聖女として働いている時だけが、エイブリーにとって幸せな時間だそうだ。
「レーナお姉様は今まで関わってきたゴミクソ達とは違いますわ!気高くて美しくて勤勉で、わたくし自身を見てくださった……そのことで、どれだけわたくしが救われたのか、嬉しかったのかをレーナお姉様はご存知ないんだわ!」
手を合わせて目をキラキラと輝かせながらレーナの手を握っている。
グラグラと体を揺すられながら落ち着くように片手を出して促していた。
「エイブリーの気持ちはわかったわ。ありがとう」
「わたくしはレーナお姉様にどこまでもついていきますから!」
「僕もついていきますから。レーナ」
「…………えっと」
どうやら銀の騎士、金の女神と呼ばれているクリスフォードとエイブリーが共について来てくれるようだ。
しかし一人旅よりもずっと楽しくなりそうだとレーナは頷いた。
「とりあえずどこに行きますか?」
「この国から出るために辺境に向かうわ。ターグ町の教会に一晩、宿を借りようかと思っていたの。あそこの牧師は……話がわかる奴だから」
「それがいいですね……!レーナお姉様」
「ターグ町ですか。レーナは月に一度ほど辺境の教会に行ってますよね?」
「どうして知っているのかしら……?」
「レーナを守るために騎士を派遣したのは僕ですからね」
「レーナお姉様をつけ回すのはやめてくださいっ!何が銀の騎士よ……!ただの二重人格だわ。それからこれだけは言いたいと思っていたけど、レーナお姉様に先に目をつけたのはわたくしなんだから!」
「そちらこそ金の女神と言われていますが、誰もこんなに毒を溜め込んでいる恐ろしい女性だとは思わないでしょうね。僕は彼女の支えになるつもりです。下品な争いに巻き込まないでください」
「クリスフォード殿下、エイブリー、やめて頂戴」
「はい、レーナ」「わかりましたわ!レーナお姉様」
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