第5話


銀色の髪はアシンメトリーのウルフカットになっていて髪色と同じ揺れるピアスをつけている。

水色の瞳は宝石のようにキラキラと輝いている。

魔法剣士とは様々な魔法を組み合わせて剣で戦う戦士で、レーナが召喚される前までは魔物から国を守っていたようだ。

その仕事がなくなり、今はレーナの護衛をしてくれている。


文武両道、眉目秀麗、謹厳実直という褒め言葉を全て詰め込んだ完璧な男であった。

城で迷子になった時にクリスフォードに助けてもらった時から好印象である。


そして広間を出たレーナは早足で自室へと向かい、貯めていたお金や護身用のナイフをカバンに詰めていた。

早くしなければ宰相が用意した騎士や侍女達が押し寄せてくるだろう。

カバンを持って手早く城の門まで走っていく。

城の中ならばレーナは大体顔パスである。

事情を知らない門番にいつものように挨拶をして門を開けてもらう。


そして城の外に飛び出して街への道を歩いて行った。


(───自由だわっ!)


駆け足で街へと向かい、まずは服屋でワンピースを買って支給されていた聖女服をゴミ箱へと投げ捨てる。

髪型も変えて帽子を被って、なるべく髪が隠れるように変装して眼鏡をかけた。

ここでは明るい髪色や瞳の色が多いため、レーナの髪色は目立ってしまう。


その足でレーナはすぐに酒場へと向かった。

刺さるような視線を感じながらカウンターへ。

立派な髭を携えた初老の男性がレーナを見て驚いているが、お金を払って待っているとすぐにあるものが出てくる。

その顔は戸惑っているように見える。


レーナは日本人らしい顔立ちをしていて、額が広くパッチリとした目、口も小さく鼻も低いからか幼く見られることが多い。

元々小柄なのもあるが、この世界の七個年下のエイブリーやジェイデンの方が年上に見える。


こちらの世界に来た時も実年齢を言った時は疑われて大変だった。

一応は信じてくれているが、今も初対面の人には子供だと驚かれる。


レーナは酒を売るのを渋り「……子供に酒を出すわけには」と言っている店員に「子供じゃないわ」と言って睨みつける。

レーナの圧に屈したのか首を傾げた初老の男性は首を傾げつつも酒を前に出す。


透明のグラスには黄金色に輝き、気泡が下から上に上がってくる。

レーナはジョッキを片手で持ち上げて一気に飲み干した。



「───ぷはっ!はぁ…………うまっ!」



あまりの飲みっぷりに周囲が静まり返る。

空になったグラスを置くとドンと大きな音が鳴る。



「もう一杯」


「…………」


「聞こえた?おかわり頂戴」


「あっ、はい」



すぐに出される二杯目のジョッキ。

吸い込まれるように消えていく液体。

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