第3話 同級生の友人(前編)

自宅に帰る車の中、拓は息子に質問された。


「とーちゃん、同級生の友達はいなかったの?」

「いなかったわけではないが、とーちゃんは変わり者だから友達は少なかったな」


拓は過去のことを頭の中で思い出していた。


…………


成績最下層、運動もダメ。おまけに歳下の子供と仲良くしていた俺は変わり者のレッテルを貼られていた。宿題は意味がないと思っており意図的にやらず、教師に放送で呼び出されてもいかない。

息子には言えないが、ブラック団は盗みもやったし、他の地区の子供と喧嘩してボコボコにして、校長室に呼び出されたりした。

まぁ呼び出されても行かなかったが。

何故なら叱られるだけだと知っていたので。

あまりの素行の悪さに、自転車の盗難や誰かが怪我をしたときなど真っ先に皆んなが俺を疑った。

疑われて当然なのだが、俺は俺のやったことじゃないことに文句を言われると怒髪天となりすぐ暴力を振るった。

そんなクソみたいな俺にも僅かだが友達はいた。今にして思えば、こんな俺と友達やっててくれた奴らには感謝しかない。

ブラック団の悪事は本当にダメなことだったが、同級生との悪さは子供なら誰もがやった程度の小さなことばかりだった。

夏休みの夜にプールに侵入して遊んだり、線路の鉄橋から女風呂を覗いたりした程度だ。


ブラック団の話とは関係ないが、中学生になり素行の悪さもパワーもアップした俺は喧嘩相手が病院送りになるくらいボコボコにした。二年生になると俺の陰口を言っていたという理由だけで理不尽に拳を振るった。

同級生に舎弟まで作り、本当にどうしようもない奴だった。

同級生の家に「お前の息子を誘拐した」などとイタズラ電話をして警察沙汰になったこともあった。


あの頃は何もかもがどうでも良かった。

いつ死んでもいいとすら思っていた。

全てをぶっ壊してやりたいと思っていた。


面白くねぇ学校、面白くねぇ毎日。

…ロクでもねぇ家庭環境。


そんな俺はある日大事件を起こした。

クソ以下の俺の事を「拓くんは優しいね」と言う女の子が居た。

何故かはわからんが、多分歳下の連中と遊んでいたからだろう…

ある日の掃除の時間に俺はその子に


「おせぇぞ豚」


と言った。その時の彼女の表情は今も忘れない。(やべぇ)と思った時にはもう遅く、彼女は走り去り、翌日から学校に来なくなった。

次の日、俺は職員室に呼び出され死ぬほど詰められた。

今ならばわかる事の重大さを当時の俺は分からなかった。


「お前の言葉であの子がどれだけ傷ついたからわかってんのか!!」


俺は凄む大人に対して1ミリも引かずに言い返した。


「知らねぇよ!!俺ならんなこと言われても何とも思わねぇよ!!」


俺は思いっきり殴られた。

俺も殺す気で向かったが周りの先行どもに止められた。


「ふざけんな!成績悪いからって俺だけ差別してんじゃねーよ!死ね!死ねクソ野郎!!」


俺は職員室のドアをぶっ壊す勢いで閉めた。

外には同級生が数人いた。


「拓…大丈夫か?」

「うるせぇ、喋んな」


俺はまだごぜんそのまま帰った。だが3日ぐらい学校をサボってから何食わぬ顔で投稿した。

高校に行けなくなったら将来困るぞという親父の言葉を間に受けていたからだ。

それから特にドラマもなく、俺の死ぬほどつまらなかった中学生生活は終わった。



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