第2話 特に変わらない日曜日

〈平成13年7月29日〉

 夏休みでも日曜日は特に今までと変わらなかった。というか、思えば初日も夏休み最初の日というテンションでなんとなく特別感があったが、終わってみれば普段と変わらない土曜日だったような気がする。

 親父の給料日は25日で、最初の日曜日に当たるこの日の親父の予定は朝イチからパチンコだった。


 今日はブラック団の集まりがいい。

 四年生のビーフ、ガリ勉、兄者。

 三年生の肉まん、ピザまん、たこ焼き。

 二年生のチビ。

 ブラック団全員集合だった。

 ビーフは体が大きく力自慢。団地住みではなく近くの一軒家に住んでいて貧しいわけではない。

 ガリ勉は成績優秀。

 兄者はゲームの天才で、たこ焼きの兄である。


「みんな揃ったな!」

「蜂の巣狩りしようぜ団長!」


 ビーフがそう言うとたこ焼きも続けて答えた。


「みんな居るんだし倉庫の上にあるでっかい巣をやろうよ!」

「そうだな、いっちょやってやるか!」


 ブラック団は色々な遊びをしており、この蜂の巣狩りも何度もやっていた。殺虫剤には頼らず、虫取り網で兵隊蜂を捕獲し、一匹ずつ撃退していき、最後に巣を破壊する。

 俺たちはフルメンバーで高いところにある大きな蜂の巣を狙った。

 蜂の巣は倉庫の屋根下ではなく、倉庫の上の少し出っ張ったところの影にある。

 倉庫に登っての蜂の巣撃墜作業は足場も悪く困難を極めた。


「あ、やべ」 


 ビーフが蜂を取ろうと虫取り網を振った時に蜂の巣を落としてしまった。怒り狂った蜂は俺たちを刺してきた。そこそこ高さのある倉庫のため見事に全員やられてしまった。

 幸いだったのはアシナガバチだったことか、痛いし刺された箇所は熱いが毒性はスズメバチより全然たしいたことはない。


 その日の夜は刺された子供の親からウチの親に苦情の電話があったことは言うまでもない。


 次の日から平日はラジオ体操がはじまり、秘密基地に行ったり、兄者の家で64というゲーム機で遊んだりした。

 スマブラにマリオカート、007など思い出すだけで懐かしい。


 …………


「ろくよん?何それ?」

「ははは、いまのゲーム機からすればしょぼいかもしれんが、とーちゃんが子供の頃は最高のゲーム機でな。お前のもってるスマブラの1番古いやつや、マリオカートもあったんだぞ」


 ちなみに平成13年の11月にはゲームキューブというゲーム機でスマブラDXが発売され、当時の子供達はこのゲームで死ぬほど遊んだ。


 大掃除もひと段落し、外に出る。団地の間にあった公園は草が生い茂りとても遊べるような状態ではない。

 子供達が減ったことや、そもそも外で遊ぶ子供がいなくなったからか、管理されていない公園の姿に拓は少し悲しくなった。

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