俺たちブラック団!
teikao
第1話 俺たちブラック団!
〈令和6年年末〉
1人の中年男性は大掃除をしていた。今住んでいる家ではなく、まだ両親が住んでいる実家のボロアパートの大掃除の手伝いだ。
ついてきた息子が何かを見つける。
「とーちゃん、このカード何?見たことないぞ」
「お、なっつかしーなぁ…とーちゃんがガキの頃に流行っていたカードさ」
「とーちゃんの子供の頃?」
「聞きたいか?長くなるぞぉ」
これはとある田舎の、全校生徒約400人の小学校に通っていた、彼が子供の頃の物語。
…………
〈平成13年7月28日〉
1人の冴えない少年だった俺はこの日を今や遅しと待ち侘びていた。
普段は母親に起こされるまで起きない。
「おはよう!」
「あら、早いわね
「おーよ、今日から夏休みだからな!」
元気爆発で朝ごはんを食べると俺は外に飛び出した。
〈午前七時半〉
俺の住む団地は一号棟と二号棟があり、二つの建物の間に小さな公園と駐輪場がある。
俺は公園のベンチに座って腕を組む。
「あ、団長だ!」
「団長はや」
窓から公園のベンチに座る拓を見た2人の少年が公園にやってきた。
「おはようございます団長!」
「団長はやくね」
「おはよう肉まん!ピザまん!」
肉まんとピザまんの2人は小学三年生。礼儀正しい方が肉まん。ダルそうな方はピザまん。俺が立ち上げた悪ガキ軍団、ブラック団のメンバーだ。
「夏休みだぞお前ら、山の基地か!川の基地か!」
ブラック団は近くの山と河川敷に秘密基地を作っている。秘密基地といっても、ただの溜まり場で彼らの食べたお菓子やジュースのゴミと、当時流行っていたカードゲームのレアでは無い、いらないものしかない。
「山にいきましょう!」
「川に行こうぜ」
肉まんとピザまんの意見は見事に割れた。
「じゃ、ジャンケンで決めるだな」
拓がそう言って音頭を取る。
「じゃ、いいかお前ら、じゃーんけーん」
「「ポン!」」
勝ったのは肉まんだった。
「山で決まりだな!」
「よっしゃ、山に行きましょう!」
「ま、別に俺はどっちでもよかったんだけど」
3人が山の基地に向かおうとすると1人の少年が走ってきた。
「まってー!」
「おう、チビじゃねぇか」
小学二年生のチビ。最年少のメンバーだ。
「どこいくの団長?」
「山の基地だ、チビも来いよ」
「行く!あ、ちょっと待ってて」
チビは何かを取りに行った。
「団長、まだ朝早いから酒屋やってなくね?」
「そうだな、ジュースは自販機で買うとして、菓子がねぇな。持参するか」
「了解です団長!」
酒屋といってと小学生の彼らは酒を買うわけでは無い。駄菓子も売ってあるため子供達が立ち寄る時はそちらが目的だ。
ちなみに当時は今ほど厳しくなく、子供の使いでも酒や煙草は店どころか自販機でも買えた。
当時の中高生に喫煙者が多かったのは安易に手に入ったからである。勿論、俺も高校生になる頃には酒も煙草もやっていたw
俺たちは再び集まると山の基地に向かった。
山の基地は大きな木に空いている穴の中。少しくらいが秘密基地感があって雰囲気はいい。
問題は蚊の多さで、必ず蚊取り線香と虫除けは持参する。忘れた時は何十箇所も刺されて体中赤くなるが、刺されまくると感覚がバグるのかなれるのか、不思議とそこまで痒く無い。
「なぁ、お前ら夏休みはどっか行くのか?」
拓の質問にピザまんは答える。
「俺はなんも。団長は?」
「俺はどっかも行かねーよ、俺にはお前らだけだぜ」
俺のお前らだけだぜという言葉に目を輝かせて肉まんとチビも答える。
「僕もです団長!ブラック団バンザイ!!」
「僕も!」
団地に住む子供達の家庭はほとんど貧しい。俺は親父がギャンブル依存者、肉まんは母子家庭で貧しく、ピザまんの親は飲みが大好きで、スナックに通い詰めてお金がない。
チビの家のことは…知らないが多分、似たような感じだろう。
俺たちは昼飯の時間も忘れて遊び呆けて、適当に解散して帰った。
特に劇的なドラマがあるわけでもない、ただ気の合う仲間といた日常が楽しくて仕方なかった。
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