第2話 俺の無双展開がはじまる。

「俺は!」

 金髪碧眼の王子様アランは俯いた。

 俺の思わぬ口撃に何も言えなくなったようだ。

 彼は、アレキサンドラの嫉妬を煽るために他の女を使う幼稚な男だ。

 悪いが、俺の好みは大人の男。


「トルネコ・ウィザード公爵!」

 俺はこのゲームでの大本命の男の出現に歓喜した。

 がっちりした体型に、小細工ないドSな性格。

 まさに俺の理想を絵に描いたような男だ。


「アレキサンドラ様?」

 トルネコはクールな男で強引にアレキサンドラに迫る仕様になっている。

 それゆえに、突然ウィンナーの膝上から立ち上がり抱きついてきた俺に驚いている。


「アラン様が、ミーナ様がいるのでもう私はいらないとおっしゃるのです。」

 アレキサンドラは美しい女性だ。

 俺はやっと女の体を手に入れたので、存分に使い本命トルネコを誘惑する。


「ア、アレキサンドラ?」

 思わず、敬称も忘れて俺を呼ぶトルネコにほくそ笑む。


 どうだ、これが女の香りだ。

 俺は今まで男という足枷を背負っても、周囲の男達を女以上に夢中にさせてきた。

 だから、これからも同じように男たちを夢中にさせる。

 女の体を手に入れた俺は無敵だ。


「トルネコ、アレキサンドラは私の婚約者だぞ」

 嫉妬を煽ろうなどと、姑息な駆け引きをしようとしていたアランが必死になっている。

 これが、白昼夢でも楽しくて仕方がない。


「アラン様、私のことは気にせずアレキサンドラ様とご一緒になってください」

 今の流れを理解しないピンク髪のミーナがやってくる。

 彼女は今、慎ましいキャラを演じている。

 しかし、本性は貪欲に王子の婚約者におさまりたい女だ。


 アランはアレキサンドラの気を引こうと彼女に近づきつつも、この慎ましいキャラに本気になりそうになる浮気者な男。

 まるで、塾で女子を見たからと言って姫ポジの俺を蔑ろにしようとした男たちのようだ。


「アラン様、私は揺るぎないものしか価値を感じません。今のあなたはゆらゆら揺れる柳のようでございます」

 アランの気持ちをくすぐるようなことをわざという。

 これが、男の気持ちを知り尽くした男の本気だ。


「俺は揺らいでなんかいない、君だけを愛しているアレキサンドラ」

 今、アランの瞳には俺しか写っていない。


「護衛騎士の立場でありながら、あなたへの気持ちを抑えられません」

 いつになくたぎっているウィンナー卿。


「アレキサンドラ、悪い女だな。でも、君のそんなところも愛している。反逆罪に問われても良い」

 本命のトルネコが愛おしそうな目で見つめてきた。

 この世界が白昼夢でなければ良いのにと、俺はぼんやりと思った。

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男子校の姫ポジの俺が悪役令嬢になったら無双した件。 専業プウタ @RIHIRO2023

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