第3話 ぺんたんのおかげ

ぺんたんと一緒に寝るとよく寝れる。

修学旅行でぺんたんを連れていけなかった時、私は全然寝れなかった。

安眠にも心の支えにもなってくれる本当に大切な存在だ。


今日は日曜日だから時間はいっぱいある。

ぺんたんのアドバイス通り、等身大の自分の素直なものを書こう。


と思っても、感想やレビューがないか気になるのが性分というか、書くことよりそっちをまず確認してしまう。


「うわっ、またメッセージきてるね」


スマホの画面を見たぺんたんが嫌悪感たっぷりに言う。

作品の都合と諸般の事情で私は23歳の女性という設定になっている。

若い女が書いているなら読んでみようかという男のスケベ心を利用する姑息な考えだ。


SNSにも連携できる機能もあるから、そっちでも映える画像なんかを載せたりして、都会に住むいい女ふうな感じを装って小細工を労していたりするけど、作品の人気に繋がっているかと言われれば微妙ではある。


「どうせまた出会い厨だよ」


「私の作戦…失敗してるよね…」


結局は誰が書いているかより何を書いているか。

内容で勝負しなければ意味なんてない。


そんな暇があるなら、文豪と呼ばれた人たちの文庫本を図書館にでも行って読んでいたほうがいい。

前にぺんたんにそんなようなことを言われたのを思い出して、少し自分が嫌になる。


仮に男のスケベ心を利用するのが成功して人気作者になれたとして、そんなものに意味はない。

アイツみたいな性欲モンスターに担がれた虚飾に過ぎない。


「あ、でもレビューもあるよ」


「本当だ!でも…悪い評価のかも…」


まだ5年生の時に書いた最初の作品で酷評された記憶が頭を過ぎる。


どんな評価だろうとそれを受け止めないと。

そう勇気を出して見てみると、こっちが恥ずかしくなるほどの絶賛レビューだった。


「莉亜ちゃんすごい評価されてるよ。やったね」


「う、うん。小説書いててよかったぁ!」


「これはちゃんと全部読んでないと書けないレビューだね。莉亜ちゃんの才能がバレてしまった」


「この褒められてる描写のところ、ぺんたんがこうしたほうがいいんじゃない?って言ってくれたところだよ」


「ボクは莉亜ちゃんの一部だからね。ボクの才能は莉亜ちゃんの才能だよ」


ぺんたんにも読者の人にも褒められて、私は嬉しくて何度もレビューを読み返した。

ふと気になってメッセージボックスを見てみると、出会い厨に紛れてその人の名前があった。


宮本賢治さんか…

このペンネームだと、宮沢賢治が好きなのかな?

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