第4話

 共同で肉を買った後、俺は一人アパートで準備を進めていた。

 芽衣は一旦家に帰って、着替えて焼肉用のプレートを持ってくる。

 此処はスーパーから近いので案内して場所を教えたから、次も迷わず来れるはず。

 俺が家に女子を招くことになるとは。

 まあ、あいつは妹以外だと女子の中でも特に話しやすい。

 余程コミュ力が高いのだろう。


 などと考えていたら、案外早くチャイムが鳴った。


「おじゃまします、うわぁ…結構広いね」

「おう、何か父親が今の家売れたらこっち来るかもしれないって言って、広めの所契約したんだ」

「あ、うん…そっか」

「別に来なくて良いんだけど…まあ、あの家に居たくない気持ちは分かるよ」

「う、うん…」


 嫌な思い出しか無い家だからな。


「しかし、お前めっちゃボーイッシュだな?」

「えへへ、あんまり女の子らしい格好より、こっちのほうがいいでしょ?」


 デニムのパンツに、Tシャツとパーカー、キャップまで被ってる。

 かなり男っぽいな、流石に間違えることはないだろうけど。


「…なんか気つかわせて悪いな、正直助かってる」

「いいのいいの!ウチ元々こういう格好も好きだし!」

「そうなのか」

「でも、結構すんなり家に上げてくれたよね?」

「リハビリ、お前自分から来るっつったし、多少迷惑掛けてもいいかって思って」

「…複雑だけど、女性に慣れたいなら、いつでもウチで練習してねっ」

「お前そういうエッチな言い方すんなよ」

「エッチくないよ!」


 まあ、気を使って言ってるんだろうけど。


「それよりほら、お家からホットプレート持ってきたよ!」

「おお…ちょっとデカいな」


 家族用だとこんなもんかな。


「小さいよりは良いでしょ」

「そりゃそうだ」


 どんどん焼けるしな。


「ご飯も炊けてるし、準備はいいぞ」

「じゃあ、早速始めちゃおっか!」

「買ってきた紙皿と割り箸は、並べてあるからな」

「あ、お肉焼くお箸は別にしなきゃ。それも割り箸でいいかな?」

「んじゃ割り箸もう二組だしとくか」


 何だか、ちょっとしたパーティー気分だな。


「ん、どうしたの?何か足りなかった?」

「…いや、パーティーするってこんな感じなのかなって。俺、友達とクリスマスパーティーとかやった事ないから」

「そ、そっか…うん、今年はウチといっぱいやろうね!」

「いや、お前年間で何回クリパする気だ?」


 地雷踏む度に気遣わんでいいのに。


「そ、そうだね!まあ誕生日とかもあるし!」

「俺の誕生日、クリスマスのすぐ後で12月30日なんだよ、近いし師走で忙しいから無理だろ」

「あ、そうだった!ちがう、そうなんだね!」

「?まあでも、小学校の受験落ちてからは、母親は妹にしかプレゼント買ってなかったけど」

「え…、じゃあ、プレゼント貰ったこと無いの…?」

「父親はお金だけくれてた、正直それはそれで有り難かったけど。

 ただ、妹はよくクリスマスプレゼントを図書カードでねだって、俺に本をプレゼントしてくれたな」

「そうなんだ…妹さん、いい子なんだね」

「うちの家庭内で唯一まともだからな」


 あいつが居なければ、俺は家出してただろう。


「さ、準備出来たから肉焼くか」

「そうだね!」


 焼き肉は良いよな、タレの味はエ◯ラを信じればいいし。


「ご飯どのくらい食べるんだ?」

「あ、その紙皿に半分くらいでいいよ。あとはレタスとサンチュ齧ってるから」

「あいよ、こうしてるとキャンプみたいでもあるな」

「…キャンプもやったことない?」

「そっちは、そもそも俺アウトドア嫌いだからなぁ」

「あれ?そうなんだ…」

「山とか虫が出るじゃん」

「あぁー、ウチも虫は嫌だけど…そっか、今は虫駄目なんだ…」

「ん?まあ、女子は大抵虫苦手だもんな」


 まあ、それは置いておこう。

 今は肉を焼く。


「カルビにロース、豚トロ…まあ適当に並べるか」

「うわぁ…美味しそう!」

「いや、テンションあがるなこれ」


 食欲、めっちゃ出てきた。

 やっぱ肉だな肉。


「おおお…うめぇ」

「慌てて詰まらせないようにね、でも…はぁ、お肉美味しい」

「これ、いくらでも食えるな…肉足りるか?」

「一応、4人前のやつ買ったんだけどね…まあウチはそんなに食べないから大丈夫だよ」


 美味いま、そして暑い。


「うんうん、司くん美味しそうに食べるね」

「食欲無いなとか言ってたのが嘘みてえだ」

「良かったね!」


 結局、俺が三人前ぺろりと平らげてしまった。


「コメもっと欲しかったな…」

「随分おかわりしてたけど?」

「3杯な」 

「さすが男子高校生だよ…」


 少し早めの夕食だったけど、暫くは腹減らないだろうな。


「じゃあ、ウチ帰るね」

「おう、気を付けてな」

「うん!ばいばい!」


 行ったか。


「…部屋がすげえ肉臭い」


 窓、しばらく開けておくか。

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佐藤君は女性不信です @usuisio

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