第3話

「――それで、他に学校生活で変わった事はありますか?」

「いえ、特に無いです」

「じゃあ、今までと同じお薬出しておきますね」

「ありがとうございます」


 放課後、今日は通院日だったので、いつものお医者さんに来た。

 中学2年の時から2年位、毎月通ってる。

 最近は、お医者さんとのやり取りも代わり映えしない。


「どっかスーパーで弁当買って帰るか…いや、明日土曜日で休みだから朝食も…」


 今までも自分で飯は用意してたから、一人暮らしでも特に変わった訳じゃないけど。


「億劫だなぁ…気分的に」


 女子と話すと、どうしても疲れる。


 暫く自転車で走りスーパーに入る。

 野菜売り場から見ていっても…自炊する気力が沸かないから、何も思いつかん。


「…弁当コーナー見るか」


 適当に2つ買って、1つは明日食えばいいだろ。

 …こういう時って、どの弁当も美味そうに見えねえなぁ。


「――い、おーい」


 食欲が出ないと、何食っていいか分からん。


「ちょっと、ほらほら見えてるでしょ、司くん!」

「見えてるよ、何でお前ここに居んの?」

「お前じゃなくて、芽衣ちゃんだよ!ウチのお家この辺だもん!」

「わかった芽衣だな、俺はここが家の近所なんだよ」

「あれ?そうなの?」

「ああ、つっても元々住んでた家じゃなく、学校ちょっと遠いからアパート借りて一人暮らし」


 本当は家から出たかったのも有るけど。


「あ、そうなんだ…じゃあ、夕ご飯買いに?」

「だな」

「へぇー…自炊とか、しないんだ?」

「あー、やったりやんなかったりだな」

「あ、自分でご飯作れるんだ」

「ああ、元母親が殆どネグレクトしてたから」

「…ごめん、また地雷踏んじゃった」

「気にすんな、俺は地雷原だから気にしてたら会話出来ないぞ」

「…そ、それでも気をつけるね!」


 無理だと思うけどな。


「あれ、じゃあ妹さんはご飯どうしてたの?」

「妹は母親に気に入られてたから、よく外食に連れていかれたりしてたな。後は俺が作って…あれ?お前に妹の事話したっけ?」

「は、話したよ!いつも本読みながら上の空だったから分からなくなるの!」

「ああ、そっか悪いな」

「…ふぅ、あぶな」

「ん、何か言った?」

「え?あっと、じゃあ今日はお弁当なんだ?」

「そうなんだけど、何食っていいか分からなくなってな」

「あー、わかる!そういう時ウチもあるよ!」

「だよなぁ?」


 話が分かるやつだ。


「本当に、お前が男だったら良かったのに…」

「…嬉しいんだか複雑なんだけど」

「しかしどうすっかな…いっそラーメン屋でも行くかな…」

「じ、じゃあさ!ウチが司くん家で作って上げよっか?」

「ごめん、女の作ったものは無理なんだ」

「そこも駄目なんだ…それ外食も無理なんじゃない?」

「ラーメン屋って大体オッサンが作ってるだろ?厨房も見えるし」

「だからラーメンなんだね…」


 厨房に女性が居る店は避けてる。


「…じゃあさ、こういうのはどう?」

「なんだ?一応聞こうか」

「えへへ…あのね、一緒に焼き肉しない?」

「ほぉ」


 こいつ…肉が嫌いな男子高校生は居ないぞ?

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