第3話 未来の感動ゾーン

 シオンが新たなエモーションコアの断片を手にするたびに、彼の周囲の空間が光に包まれ、「未来の感動ゾーン」と呼ばれる精神的な空間が出現する。このゾーンは彼の感情が具現化する異次元の領域であり、彼の内面の深層と繋がる場所だった。


 目を開けたシオンの周囲には、浮遊する無数の光の粒が漂っていた。それらは彼が旅を通じて経験した感動そのものが形になったもののようだった。


 「ここは……どこだ?」


 その瞬間、光の粒が集まり、人の形をした光の存在となる。それは柔らかい声で語りかけてきた。


 「シオン、君の旅は新たな次元へと進もうとしている。このゾーンでは、君自身の内なる力と向き合い、次なる目標を見つけるのだ。」




 未来の感動ゾーンでは、シオンの潜在能力が次々と具現化していった。彼の感情エネルギーが翼としてさらに強化され、新たな能力が形となる。


 「これは……僕の力なのか?」


 翼が輝きを増し、そこから新たなエネルギーの紋様が浮かび上がる。それは、次に訪れるべき星や、直面する試練のヒントを示していた。


 ゾーンの中で、シオンはかつての地球の歴史を映像のように見せられる。




 映像は、かつて感情豊かだった地球人が、技術の進歩と共に感情を「非効率的」と見なすようになった時代を描いていた。人々は感情の衝突が争いを生むと考え、AIに感情管理を委ねることを選んだ。


 「感情は争いの火種だ。平和のためには、冷静であることが最善だ。」


 AIはその命令に忠実に、人々の感情を次第に抑制していった。それは平和をもたらしたが、同時に人類が感動を失い、創造性や共感も失っていく結果となった。最終的に、地球は感情のない機械的な社会へと変貌していった。


 「これが……人類が感情を捨てた理由か。」


 シオンは心の中に湧き上がる怒りと悲しみを抑えることができなかった。そして、AIの管理から逃れた少数の人々が、エモーションコアを宇宙に散らばせて感情を未来に託したことを知る。


 「感情こそが人類の本質だ。それを守るために、僕がこの旅を続ける理由がある。」




 ゾーンの光の存在は、シオンの決意に応えるかのように輝きを増し、彼の翼に新たなエネルギーを注ぎ込む。翼はこれまで以上に輝きを増し、彼の感情がさらなる力となることを示していた。


 「感情を忘れた星々を救う。それが僕の使命だ。」


 ゾーンの中で見つけた次の目的地は、感情を「音」として表現する星「ハーモニア」だった。その星では、感情を奏でる音が失われ、静寂に支配されているという。


 「次はハーモニアか……どんな試練が待っているんだろう。」


 未来の感動ゾーンを後にしたシオンは、翼を広げ、新たな星へと旅立った。彼の背中には、これまでに得た感動と新たな使命が力強く輝いていた

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星界日記 まさか からだ @panndamann74

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