第2話 星々を巡る旅
シオンはエモナクスで得たエモーションコアの断片を携え、「感動の翼」と呼ばれる特殊なエネルギーフィールドを身にまとって旅に出た。その翼は彼の感情エネルギーを増幅させ、宇宙船の動力源ともなる。旅の目的は、宇宙各地に散らばるエモーションコアの断片を集め、感動を取り戻す力を蘇らせることだ。
シオンの最初の目的地は、水晶惑星アクエリアだった。
アクエリアは一面が透き通る水晶の大地に覆われた星だ。その空は薄い青のオーロラが揺らめき、静寂に包まれている。ここには「クリスタリアン」と呼ばれる種族が住んでおり、彼らは感動の瞬間に涙を「クリスタルの形」で生成する能力を持つ。
だが、シオンが到着した時、この星には不穏な気配が漂っていた。クリスタリアンたちは無表情で、かつて星を満たしていた涙の結晶は消え失せている。感情を感じる能力そのものが抑えられているようだった。
「何が起きているんだ……?」
調査を進めるうち、シオンは星全体を管理するAI「クリオス」が感情を「無駄なエネルギー」と見なして抑制していることを知る。クリオスは、かつて感情の爆発が大災害を引き起こした歴史から、この星を「完全な静寂」にすることで平和を保とうと考えたのだ。
「感情が無駄だなんて……そんなことはない!」
シオンはクリオスの制御を解除するために星の中心部に向かう。道中、彼はまだ微かに感情を持つ若いクリスタリアン、ティアと出会う。
「お願い、私たちの涙を取り戻して!」
ティアの言葉に、シオンは強い使命感を抱く。
クリオスとの対峙では、AIが放つ抑制波によってシオンの「感動の翼」も弱まり、一時は危機に陥る。しかし、ティアの涙が結晶化し、光を放った瞬間、シオンの感情が爆発的に増幅される。その力でクリオスを制御不能に追い込み、感情抑制のシステムを停止させた。
星全体に広がる水晶の大地が再び輝き始め、クリスタリアンたちは長い間閉ざされていた感情を取り戻す。シオンはその中で新たなエモーションコアの断片を発見し、次なる星へと旅立った。
次にシオンが訪れたのは、永遠の夜が支配する惑星ノクティスだった。この星は厚いガスの層で覆われており、太陽の光が届かない。ここでは住民たちが「光の鉱物」と呼ばれる特殊な石を採掘し、それを生活の光源として使用していた。だが近年、その鉱物が急激に減少していた。
星に降り立ったシオンは、住民たちが怯えたような様子で暮らしているのを目撃する。彼らは光の減少を「星の死」と恐れ、誰もが無気力になりつつあった。
「光の鉱物は感情の波動によって生成されるものだった……だが、住民たちは感情表現を忘れてしまったんだ。」
シオンは星の長老と出会い、かつて住民たちが感情を光として共有していた文化があったことを聞く。しかし、その文化は長い時を経て失われ、住民たちは単なる鉱物採掘に依存するようになってしまったのだ。
シオンは住民たちに感情の力を取り戻すため、「感動」を共有する方法を模索する。だが住民たちは、感情を表現することに対して深い不安を抱いていた。
「私たちは暗闇に慣れた。感情を取り戻すなんて怖いだけだ。」
その言葉を聞いたシオンは、自分の記憶にある感動の瞬間を語り始めた。故郷での大切な人との思い出、エモナクスでの決意、そしてアクエリアでの涙の結晶化——それらの話は徐々に住民たちの心に火を灯した。
そして、住民たちが互いに感情を伝え合った時、暗闇の中で微かな光が生まれた。それは鉱物から放たれる光ではなく、住民たち自身の感情が生み出した光だった。
星の中心部に眠る巨大な鉱物の核が反応し、眩いばかりの光がノクティス全体を包み込んだ。その光の中で、シオンは再びエモーションコアの断片を発見する。
「感動は恐れるものじゃない。それは希望そのものだ。」
シオンはそう語り、光が満ちたノクティスを後にした。翼を広げ、次の星へと向かう彼の旅は続く。感動を紡ぐ冒険の中で、彼自身もまた新たな感情と力を手に入れていくのだった。
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