第11話

東上洞の入り口で、3人組が立っていた。

揃いの上着に揃いのバンダナ。


「よっし、いきますか!」

「…300m先のビルだ」

「了解」



そのころ、東上洞では、鏡虎団についての悪いうわさが流れていた。



「なぁ、最近、鏡虎団が盗みをしているってきいたか」

「え、街を守っているんじゃなかったの?」

「どうやらちがうらしい。大きなマフィアばかり狙って盗みをしているんだって」

「信じられない。本当に鏡虎団なの?」

「間違いないよ、見たって人がいるんだ。お揃いの物を持った3人組だって」

「じゃあ鏡虎団で間違いないわね」

「最低!」

「信じていたのに」






同じとき、鏡虎団の事務所にて。


「よし、今日も暇だからパトロール行くか」

「ヨシ!コロッケ食べよう!」

「なんでだよ」


レイとシャオがパトロールの支度をしていると、事務所の扉が開かれた。


「大変!鏡虎団!」


飛び込んできたのは大きな丸眼鏡とおさげの少女。

以前、鏡虎団に助けられたという少女は肩で息をしている。


「おぉ!ミツキ!どうした!」

「しばらく東上洞には近づかない方がいいわ」

「なんで急に…そりゃ無理だよ」


ミツキは今にも泣きそうな顔をしていた。


「鏡虎団が東上洞で盗みをしているって噂でもちきりなの…」

「は?俺たちが盗み?」

「何言ってるヨ。そんなことするわけないネ」

「でも、見た人がいるって…」

「その方はなんと?」

「お揃いの物を身に付けた3人組だって・・・」


レイ、シャオ、ジホは顔を見合わせる


「サングラスかけてるって?」

「そのお揃いの物がなんなのかはわからないの…でも東上洞で3人組と言えば鏡虎団しか考えられないって…街の人たちが噂していて…」

「…ミツキは信じてるのか?」


レイの問いにミツキは大きく首を振る。


「鏡虎団がそんなことするわけないわ!」


その様子を見てレイはニッと笑った。


「じゃあ大丈夫!あとは俺たちに任せておけ!」


心配そうに事務所を後にするミツキに力強く手を振って見送った後、3人は会議を開く。


「まずは、そいつらの盗みを止めないとな」

「でも私たち疑われてるんでショ?聞き込みには行けないヨ」

「監視カメラのハッキングしてみましょうか」

「あぁ」


ジホはそういうと、PCに自分の端末線をつなぐ。

キーボードになにやらうちこんでいくと、画面には複数の監視カメラの映像が。


「ジホ、ハッキング上手くなってね」

「ありがとうございます。これも何かの役に立つかと思って。」

「なぁ、おかしいゾ、この映像」

「え、何が」

「本当なら、この場所にこの看板があるはずなのに、映ってナイ。それに、ミロ。たぶんコレ、偽物の映像だ」


シャオの指さす画面を見ると、少し不自然な景色が広がっていた。


「これ、いつの映像だ」

「昨晩です。ちなみに、リアルタイムは…」


ジホが操作をすると、今の映像に切り替わった。


「ふん、これだな」

「どうやら、まだ盗みは行われていないようです。下見ですかね」

「知るか。どんな理由であれ、盗みは止める。」

「それに、私たちじゃないって証明しないといけないヨ」


こうして3人は、夜にこの映像の場所で、あやしい3人組を待ち伏せすることにした。


夜になるとにぎやかになる東上洞。

そんな街も夜深くなるとにぎやかな場所と静かな場所が浮かび上がる。

3人が潜むのは静かなビルの合間。

空きビルの一画で気配を殺しながらくつろぐ鏡虎団。




一方そのころ。


同じく3人組が東上洞のとあるビルの屋上に降り立つ。


「よーし!この前下見した通りだ!」

「想。落ち着いて。この辺りには何でも屋がいるらしいわよ」

「ん~でも、紫苑が見て問題無かったんだろ?」

「恐らく問題はないと思われる。しかし警戒は必要。相手は鏡虎団といい、我々と同じ3人組。出くわし、もしも一対一で対応するとなった場合、こちら側は圧倒的に不利である。なぜならば」

「わ~わ~!そんな難しい事言うなって!大丈夫!話せばわかってくれるよ!俺たちの正義を!」


全員そろいのスカジャンを身に付けている。

白いスカジャンに裏側は龍の刺繍が入っている。

想と呼ばれたリーダー格の少年はスカジャンを肩に掛け、紺色の短髪を揺らしている。

紫苑と呼ばれた少年は、スカジャンの下にパーカーを着てフードを深くかぶっている。大きな丸眼鏡をくいとあげ早口で話す。


「正義ねぇ。まぁ理解できなければわからせるまでよ。問題はないわ」


凛とした話し方をするのは、黒髪を再度テールにし、大きなリボンを身に付けている少女だ。スカジャンの下からはレザーショートパンツにガーターベルト、ロングブーツだ。


「雪玲。我らに勝ち目は少ない。正面衝突は避けなければならない。その理由は」

「紫苑。わかったわよ。あなたが戦力にならないからって言いたいんでしょ」

「…相違なし。理解しているのなら好戦的な考えを改めてほしい」

「雪玲。紫苑。大丈夫!その鏡虎団ってのも、この街を、この世界を守りたいはずだ。だから、ダイジョブ」


あっけらかんと、そして力強く言う想に紫苑と雪玲は溜息をつく。


「想のその底抜けに相手を信じて疑わない、みたいなの、本当に不思議だわ」

「同意する。なぜ人を信じられるのか疑問である。」

「お前たちだって俺のこと信じてくれてるじゃないか」

「…まあそれはそうだけど」

「頃合いだ。向かおう」


3人は屋上から屋上に飛び移り、鏡虎団が潜伏しているビルまでやってきた。


想が先頭になってビルに侵入していく。

このビルの所有主は、中華系マフィアの大手である“フォンファン”である。

噂では、あちこちから優秀なアンドロイドを買い集め、新たなアンドロイドを生み出そうとしているという。

そして、最近、高価なアンドロイドを購入したという。

想たちのねらいはそのアンドロイドだった。


屋上では紫苑がPCを取り出し、操作している。

彼はハッカー。

手当たり次第にハッキングしていたところを想に拾われた。

紫苑は次々にビルのシステムに入り込んでいく。

雪玲はいつでも行けるように待機している。

彼女はアンドロイド専門の殺し屋として悪徳マフィアに飼われていたところを想に救われたのだ。


紫苑から想に連絡をいれる。


「解除完了。その先に進むことが可能」

『りょーかい!』

「雪玲、我らも向かおう」

「了解」


紫苑と雪玲の二人も階段を使って侵入する。

紫苑のおかげでシステムが不調をきたし、侵入者を知らせるアラームは一切ならない。


「いつも通り、余裕ね」

「あ?なにが余裕ヨ。なにしにきたネ」


2人の前に、シャオ、レイ、ジホが立っている。


「数の不利。ここは引く方が」

「ふん、こんなところで引くわけがないじゃない。」

『お!鉢合わせたか!俺もそっちいくわ!』

「は?あんたはこなくていいわよ!」


レイが目を細めて3人をにらみつける。


「何が目当てで盗みに来たんだ?」

「言うわけないでしょう。もううちのリーダーが最深部まで向かっているわ。もう遅いのよ」


雪玲が言う。


「レイ、位置情報を送ります。向かってください」


ジホが端末を操作し、レイに伝える。


「いかせるわけないでしょ」


雪玲が飛びあがって太ももからナイフを抜き、レイを追いかけた。


「そんなお前をいかせるわけがナイネ。残念」

「なんなのよ、どいて」

「…どくと思うのカ?どかせてみろヨ」


シャオが素手で雪玲の動きを止める。

レイは振り返らずに駆けていく。

そのままシャオと雪玲がもみ合いになる。


ジホが紫苑の前に立つ。


「…システムに入り込んだのはあなたですね?そのPC、わたしていただけませんか?」

「不可。残念だが俺は戦闘向きじゃない。壊れても責任は取れない。」

「壊れる?僕がですか?あり得ませんね」


ジホはふんわりと笑う。


「僕は、レイお手製のアンドロイドなので」


ジホはそういうと、一歩で紫苑に詰め寄りPCに手を伸ばす。

紫苑も身体を逸らし、避けた。



レイは手元の端末を確認しながらビルの中を駆けていく。


「にしても怖いくらいセキュリティ死んでんな。相当腕の立つハッカーだな、あいつ」


そこへ、前を走る男の姿を見つけた。


「おい!とまれ!」

「わわ!もう追いついたのかよ!君、やるなぁ!」


想が驚いて足を止める。

足を止めたことに驚くレイ。


「な、え、あ?」

「ん?俺を追いかけて来たんだろう?」

「あ、え、そうだけど、え?」

「なんで俺たちを追うんだ?」


想の問に面食らうレイ。


「盗みを止めに来たんだ」

「それが意味のある盗みだとしても止めるか?」

「どういう意味だ。なんなんだ、お前ら」


想は両手を腰に当てて胸を張る。

そして肩から掛けていたスカジャンを羽織り直した。

背中の龍がはためく。


「俺たちは燦龍衆。俺たちの目的のために探し物をしている。だから俺たちはここにきた」

「目的?」

「そうだ!君たちは鏡虎団だな?そして、君はリーダーのレイ。」

「…そうだ」

「きっと俺たちの目的は同じなはずだ」

「どういうことだよ」

「君たちだって、この街を、この世界を守りたいだろう」

「…世界のことはわからんが、街は…平和であればいいと思う」


想はレイの言葉を聞いて、満足そうに笑った。


「じゃあ、俺たちは仲間だ!」

「は?」

「俺たちが探しているのはこの世界において悪となるものだ!放っておいたら大変なことになる」

「そんな説明で、はいそーですかってなるかよ。なんで危険なものが出回っていると情報を流さない。」

「そんなことできるわけないじゃないか。相手はそれをわかって手に入れているかもしれないぞ」

「…そもそもそれはなんなんだ」


レイが聞くと想は意味ありげにほほ笑んだ。


「殺りく兵器だよ」


レイは一瞬で考えを巡らせる。


「殺りくアンドロイドってことか」

「へぇ?知ってるんだ」


想の表情が険しくなる。

ゆっくりと拳を握り体の前で構える。


「知っていて止めるって言うなら、手加減しない」


レイは黙って首を振る。


「殺りくアンドロイドなんて履いて捨てるほど存在しているのを知らないのか。ここにいるであろうアンドロイドを回収、破壊したところで次々に生み出される。意味ないだろ」

「…でも一つ一つ壊さないといずれ大きな悪となる。それに、ここにあるアンドロイドは、そこらの殺りくアンドロイドとはわけが違う。あくまでも、欠片なんだよ」

「は?欠片?」

「そうだ。見た目は一体のアンドロイドだが、そこに埋め込まれたチップは不完全だ。その不完全なチップが埋め込まれたアンドロイドがあちこちに売られている。一見わかりはしない。ただ、分かるやつには、分かるんだよ。それがどれだけ価値があるものなのか。その不完全なチップが全て集められ、一つになったら、もう人間には太刀打ちできない。」


物心ついたときから東上洞にいて、アンドロイドと関わりを多く持ってきたレイにとっても初めて聞く話だった。


「そんなのは…聞いたことがない」

「それは、レイの心が美しくて良い人間だからだよ」


レイはその言葉が少し引っかかった。

以前、清良に似たようなことを言われたことがあったのを思い出していた。


「俺は善い人間なんかではない。」


想は息を吐いて笑う。

その瞬間だった。


2人の横から暴走したアンドロイドが飛び出してくる。


「っぶね」

「でたな!こいつだよ!レイ!」


アンドロイドは勢いよく二人に向かって殴り掛かってくる。


レイが素早く腰のポーチから工具を抜く。

攻撃をよけ、想とレイが背中合わせになる。

レイが想にいう


「おい、お前、俺がこいつの動きを止める、だから隙を作れ!」

「お前じゃない!俺は想だ!」

「あぁもうなんでもいいよ!」


想は壁を思い切り踏み込み、勢いよく飛ぶ。

レイも床を滑り、天井にぶら下がる案内板に手をかけた。

アンドロイドの首元に足をかけて、首を絞める。

しかし、アンドロイドの反撃がやまない。

想が劣勢になる。

レイがアンドロイドの胸部を狙い両足でけりをいれる。


「助かった!レイ!」


想はそういうと、一度アンドロイドから距離をとる。

手元には、2つの爆弾。

アンドロイドが目の前に来ると頭上に向かって爆弾を投げた。


勢いよく煙があがる。


アンドロイドが動きを止めた。


レイが素早くアンドロイドに近づく。


レイに気づいたアンドロイドが襲い掛かる。

想がもう一度首に巻きつき、頭を折った。

レイがその隙に背中のハッチを開ける。


「…まじかよ」


レイは絶句する。


「どうした、レイ」

「お前が言ってたのはこういうことか」


レイは手際よくアンドロイドの機能を停止させると、ある部分を指さした。


「…そうだ。これがチップだ」

「こりゃ、明らかに様子が違うな」


レイが指さした先を見てみると、不自然に癒着されたメモリーチップが見える。

本来入るはずのサイズよりも大きく無理に溶接されている。


「こんなに溶接されちゃ、取れないじゃないか」


レイが言うと想はまっすぐにレイを見て


「だから壊すしかないんだよ」


と言った。

レイは想から視線をそらし、唇をかむ。


「レイは不思議だ。アンドロイドにも命があるようにふるまうんだね」

「当たり前だ。アンドロイドにも命はある。シャオもジホもアンドロイドだが俺の仲間だ」

「…うん、俺にもアンドロイドの仲間がいる。」

「じゃあわかんだろ、大事なら」

「だからこいつらを壊しているんだ。この溶接は感染する。」

「は?」

「このチップを埋め込んでいるこの溶接に使われている物質はアンドロイドに感染するんだよ。アンドロイドがこの物質に触れたら感染してしまう。それに、完全体になってしまったらこの物質を持っている個体はウイルスをばらまけるようになるんだ」


想の言葉を聞いてもレイの表情は変わらない。


「それでも俺は直せるなら直したい」


レイはそういって、腰のポーチから工具を取り出し溶接を剥がそうと試みる。


「レイ、君は本当に不思議だ。でも、ごめん。賛成はできない」


想はアンドロイドの頭に銃を突きつける。


「待て、俺がなんとかするから」

「待てないよ。いつ再起動するかわからないから」


想とレイがにらみ合う。


「俺が直す」


レイはすぐにアンドロイドに視線を戻し、作業を再開させる。

想は銃を下げなかった。


レイは工具を使ってゴリゴリと音を立てながら溶接を取り外していく。

中々剥がれないそれも、レイが2つ、3つと工具を駆使していくうちに少しずつ浮き始めた。

そしてついに、端が浮き、工具をぐっと中に差し込むことができた。


「これで、てこの原理で・・・」


レイは工具にぐっと力を入れる。


「レイ、君はすごいね、この溶接を剝がした人間は初めて見た…」


気が付くと想はレイの手の上に自分の手を重ね、レイに加勢していた。

レイは想に自分のつけていた防塵マスクをかぶせた。

想は驚いたようにレイを見る。

レイはふっと笑って視線を戻した。


「ぐっ、もう少し」

「力を合わせよう。せーのっ!」


想が掛け声をあげ、二人で勢いよく下に向かって押し下げる。

次の瞬間


ガコン

と音を立てて溶接がはがれた。


想はすぐさまメモリーカードを銃で打ち破壊する。

レイは溶接されていた物質に、強い酸性の液体をかけて消滅させた。


「これでこのアンドロイドは殺さなくて済むだろ」


レイがにっと笑う。

想は悲し気に視線を下げた。


「うん、そうだね。このアンドロイドは、救われた。でも…」

「わかってるよ。全部は救えない。でも俺は、」


レイはまっすぐに想を見る。


「俺は、救える範囲の物は救いたいって思っちゃうんだ」


そういってへらりと笑うレイをみて、想も目じりを下げる。


「やっぱ君は不思議だ、レイ」


レイは手際よく汚染されていたアンドロイドを修理すると、壁に立てかける。


想は無線を使って、仲間たちに呼びかけた。


「こちら、想。全部終わったよ」





想からの無線が入り、紫苑の動きが止まる。

紫苑と交戦していたジホも自然と動きを止めた。


「雪玲。聞こえたか。もうこの争いは意味をなさない。撤退する」

「…それはつまり?」


ジホが聞くと、紫苑は視線だけジホに向ける。


「やりとげたのだろう。そちらの頭か、うちの頭が。」


紫苑の言葉を聞いてジホはにっこりとほほ笑む。


「どちらも、かもしれませんね」

「形容しがたいが、うちの頭のことだ。そういったことも考えられる。」

「そうですね、では、僕はこれで」


ジホは紫苑に軽く会釈をすると背を向ける。

その視線は鋭い。

紫苑もじっとジホの背中を見つめる。


「ジホ、といったか。なかなかの身のこなしだったな。こちらに傷一つつけずに…」


紫苑はちらりと手元のPCを見る。


「機械だけを壊したのか」


PCはキーが外れていたり、モニターにはエラーの表示が。

ジホは紫苑が構築したハッキングシステムを破壊していた。



同じとき。無線を受けた雪玲も動きをとめていた。

シャオは不思議そうに首をかしげる。


「おしまいよ。無駄な争いはしないの。怒られるからね。」

「そうカ。じゃあおしまいだ。うちも怒られル。」

「あなた中国製アンドロイドね」

「文句あるカ」

「ないわよ。そっちのエンジニアは腕が立つのね。初期よりもだいぶ強化されているんじゃない?」


シャオはレイの顔を思い浮かべた。


「…そうだナ、バカだが、腕はたつ」

「へぇ、アンドロイドのくせにそんな顔するのね」

「ア?」


雪玲はシャオに背を向けると、コツコツと音を立てて去っていく。


「クソ、人間相手に苦戦したヨ…こんなの久々ネ」


シャオは雪玲の背中に毒づいた。




朝日が照らす中、ビルの屋上で、鏡虎団と燦龍衆が向かい合う。


想がレイに言った。


「助かったよ!鏡虎団!俺たちはこれで同士だな!ところで、レイ、どうして俺がアンドロイドだってわかったんだ?」


レイは3人に背を向けた。


「勘だよ、早くどっか行け、もう顔も見たくねぇわ。同士だなんてふざけんな」


レイの言葉を聞いて想は満足気に笑う。


「また会おう!鏡虎団!」


燦龍衆は腕の機械からワイヤーをのばし、他のビルに飛び移っていき、そのまま姿が見えなくなった。


レイはだるそうに肩を鳴らした。


「あぁーつっかれた。帰ろうぜ。盗みは阻止した。」


シャオがにっこり笑ってレイの背中に飛びつく。


「そうだナ!よくやったぞ、レイ!」

「あーもーおもてーよシャオ」

「ア?重くねーダロ」


その光景を見て、ジホも笑う。


「帰ったらご飯にしましょうね。今日は何にしましょう」

「あー、んー、いや、今日は外食にしよう」


レイが言う。

ジホが不思議そうにレイを見ながら次の言葉を待つ。


「…あー、なんだ、そろそろ商店街が開く時間だろ。」


レイは気まずそうに頬を掻く。

ジホは合点がいったというように


「なるほど、街の人たちに挨拶しなくてはいけませんね」


シャオも頷いて


「そうだナ!コロッケ食べたいヨ!」


と言いながらレイの背中で体を揺らした。


鏡虎団の悪いうわさはその日のうちに消え去った。


【何でも屋 鏡虎団   今日も営業中】

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