七十二候随想録

アカニシンノカイ

芹乃栄う

 芹乃栄う(せりさかう)


 一月七日は七草粥の日。七草には春と秋がありますが、七草粥のおかげで春のほうが断然、知られている気がします。

 と、ここまで書いて思いました。私、春の七草言えるのだろうか、と。

 せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。

 えーっと、あとは……指折り数えてもう一度、セリナズナゴギョウハコベラホトケノザと呪文を唱えるようにつぶやいて、七つ揃っていると気付く。あぁ、覚えていた。よかった。子どもの頃に覚えたものはなかなか忘れないものです。

 なにゆえ、すずしろの後にもなにか続くだろうと勘違いしたのか。考えてみると、「ほとけのざ、すずなすずしろ」の部分が「五・七」になっているからかもしれません。

 五、七ときたら五か七がないと落ち着かない。日本人というと大げさですが、私のなかには俳句や川柳などで親しんだ五七五、あるいは和歌・短歌の五七五七七のリズムが刻み込まれているのかもしれません。

 四季をさらに分けた二十四節季。そして、二十四節季をさらに分けた七十二候。

 冬は冬、夏は夏。冬は寒い、夏は暑い。それですまさず、細分化して細かい違いを味わうというのは実はかなり贅沢なことなのだな、と思えるようになったのは最近のこと。

 今の時期、小寒の初候は【芹乃栄う】。芹が生えてくる季節だからついた名前のようです。

 芹なんて七草粥でしか口にしないイメージですが、ちゃんと旬のものなのですね。

 昨年末から風邪をひいて、ずっと雑炊(変換キーを押したら最初“増水”と表示された)生活でした。ようやく固形物を口にできるようになったタイミングで七草粥は気が乗らない部分もあったのですが、ちゃんと食べておきました。

 なんとかかんとか一年を過ごし、新しい年を迎え、正月を仕舞うことができたことを味わうのが七草粥なのかもしれません。

 ちなみに一月七日は年があけて初めて爪を切る日だとされているそう。粥をつくる前に七草を浸しておいた水に爪をつけてから切るとよいのだとか。とりあえず、爪は切っておきます。

 あ、夜に爪を切ると蛇が出るんでしたっけ。巳年だからいいか。出てきたらご挨拶しておくことにしましょう。

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