第5話 6月の仰天

 6月に入った。今年の梅雨は空梅雨とかで、自転車通勤の俺は、ひどく助かっている。新年度もふた月が過ぎると、俺も1年生たちも、すっかり鴨高の生活に染まり、この古い石造りの校舎の中を毎日駆け回っていた。

 対抗戦メンバーも順調に練習を重ね、何度か試合慣れのために、街のかるた会へ出かけて練習をさせてもらったりもした。

 戦績で見ると、岡崎は別格として、次に来るのが柊、彼は本職でやっている人たちとも、対等に渡り合う程で、会のおじさんに、入れと熱心に誘われていた。3番手は、日野、3年の貫禄で1年生とは差があった。その次が1年の二人なのだが、まだ、かるたを覚えきれてなかったり、覚えてはいても、それを試合で有効に使えるかと言えばまだ難しい状態だ。しかし、伊山にはスピードがある。少し暴走気味のところもあるが、速さだけなら岡崎にも匹敵するほどだ。残る天見だが、彼女は札に最後まで食らいついていく集中力では負けていない。試合の後半のみんなが疲れてくる時も、最後まで集中を切らさず、しばしば逆転劇を見せてくれる。ちなみに補欠の倉木は、1年にも全くついていけず、早々に完全なサポート役に徹している。去年日本に来ただけということもあり、まだまだ日本語の細かいところまでは難しいようだ。練習相手が足りない時は倉木ではなく俺が呼ばれる始末だ。と言う具合で、メンバーは完全に5人で固定され、それぞれが8月の大会目指して確実にレベルアップしていた。

 そんなある日の放課後、俺は、用があって中倉先生を探し、校舎をうろついていた。

 もしかして実習室で絵でも描いているのかと思い、北館の実習室に向かう。

 部屋まで来ると、入り口の引き戸が少し開いて中が見えた。

 中に人の気配がして覗くと、いたのは天見だった。

 俺は、その時、妙な気配を感じて、戸を開けようとした手が止まる。

 中には、天見の後姿が見え、彼女は机にスケッチブックを広げ何かをしていた。

 変だと思ったのは、彼女が誰かと話していたからだ。

 誰もいないのに。

 教室には確かに誰もいない。

 だが、彼女は笑いながら話をしていた。

 俺は思い切って戸をガラリと開ける。

 天見が驚いて、振り向いた。

 その時、俺は自分の目に一瞬映ったものが信じられなかった。

「おう、天見、なんだ、その、美術の課題でもやってたのか」

 俺は自分でも明らかに目が泳ぐのがわかった。俺は嘘がつけないたちで、大抵はすぐバレてしまう。

 だが、その俺を見る天見も、驚きの表情で固まっていた。

 何かを隠そうとする顔だ。これは職業柄、すぐにわかる。それでつい聴いてみた。

「今のなんだった? 何かいたように見えたんだが……いや、俺、目だけはいいんだよな、昔は2,0も見えたんだから。それが、どうも最近急に悪くなってきて、さすがに老眼には早いと思うんだが、最近はスマホのせいで若くてもなるっていうだろ……、あれ、俺なんの話してるんだ」

 シドロモドロの俺を、天見はじっと凝視していたが、初めの驚きから立ち直ると、何かを見定めるように、その透き通った褐色の三白眼で俺をじっと見上げた。

 そして、やおら「先生!」と詰め寄るように言った。

「もしかして、今、見えました?」

「ああ、すまん、別に盗み見するつもりはなかったんだ。ただ、ちょっと戸が開いてたもんで、つい見えてしまって、その、ほんと、たまたま見えただけで……」

 天見は、一瞬目を閉じると、意を決したように言った。

「先生、ちょっとこれ見てもらえますか」

 彼女は鉛筆片手にスケッチブックに向かって座り直し、目をぎゅっと閉じた。

 何かを念じるように、眉間に皺を寄せ、一心に鉛筆を握りしめている。

 その手に注目していた俺は、自然と彼女の右手の甲の褐色の痣に目がいく。鉛筆を握る手の痣は、ひどく痛々しく、俺はそこから目を離せなかった。

 黙って見守っていると、天見はすっと瞼を開け、スケッチブックに何かを描き出した。

 鉛筆がサラサラと音を立てて紙に線を素早く引いていく。

 その手の動く速さは、これまで見たこともないスピードで、画用紙に何かの形が浮かび上がってくる。

 一匹の猫だ。三毛猫か、体に二種類の色の模様のある猫が座ってこちらを見ている絵だ。まるでモノクロ写真のような正確さで、右目の上に稲妻のような黒い模様がある。

 描き終わった天見はスケッチブックを置いて俺を見た。

「先生、これ見えます?」

 絵画実習で汚れた机の上に緑のスケッチブック。そこに描かれた三毛猫。

 そうか、さっき見たのはこれだったのか。天見がこんなに絵が上手いとは知らなかった。でも、この絵が見えるかと言われても、見えるのは当たり前のことだろ、何を言っているんだ。

 と思いながらも、俺は、今にも動き出しそうな猫の絵に不思議な魅力を感じ、見つめていた。

 あれっ、と自分の目を疑った。今、絵の猫が動いたように見えた。

 瞬きも忘れてじっと見ていると、

 うわ、今、猫の髭が揺れた! 

 次の瞬間、猫が何かの殻を破ったかのように突然身体全体を動かした。

 画用紙の中で、三毛猫は前へ足をグッと伸ばし、大きく伸びをするときちんと座り直して、こちらに視線を向けた。そして、

「おい、こいつは何だ?」

 俺と猫は同時に喋った! 

 喋った? 猫が? そう俺にもわかる言葉だった。

「やっぱり先生、トビのこと見えるんですね。すごい、すごいよ、先生」

 天見が嬉しそうに声を上げたが、俺はなんのことかわからず、目の前のこいつをまじまじと見つめていた。

 スケッチブックの白い紙の上に、描かれた1匹の猫のデッサン。その鉛筆で描かれたモノクロの猫が、白い画用紙の中で動いている。アニメのように、でも明らかにこの猫は生きているように見える。アニメというより、モノクロ動画のリアルさがある。天見が描いていたときは確かに絵だった。いくら上手くても絵は絵だ。それが動いたとしてもやはり絵とわかる。それが今、目の前で暇そうに前足を舐めているこいつは、モノクロだが生きている猫そのものだった。

「この猫、生きてるよな」

 俺が恐る恐る手を伸ばそうとすると、猫がこちらをジロリの見たのでやめた。

 俺は、自分の目で見たもの以外は信じないのを信条にしている。だから幽霊やらUFOなんていうのも、見たことがないので、今は信じてはいない。しかし、それがないというのも実際にこの目で確かめていないので、否定もしない。

 今、目の前に「この猫」がいる。

 三毛猫は、手を舐めるのをやめると、くつろいだように寝そべり、薄目でこっちを見ている。こいつは確かに生きている。俺はそのことを不思議なほど素直に信じた。これがどういうものなのかというのは別の問題だ。

「さっきは突然先生が来たもんだから慌ててトビ、飛んで逃げちゃったけど、私のこれ、今まで偶然誰かが見たとしても、その瞬間消えちゃってたんで、他の人には見えないもんだって思ってたんです。だから、見える人って初めてで……。

 信じられないかもしれないけど、私、これはって思えたものを、こうして絵に呼び出せるんです」

 それから天見は、とつとつと自分の、その不思議な力との出会いについて語り出した。


◇◇◇◇◇ 

 それは丁度1年前、ソラが中3の4月、祖母、滝さんが亡くなった。

 滝さんは母の実母で、近所に一人住まいをしていた。小さい頃、彼女が祖母に必要以上に懐くことを嫌がった母は祖母宅に行くことまで禁じるようになった。それでもソラは母の目を盗んで、学校帰りに祖母の所へ寄っていた。母からいつも寄り道をせずに戻るよう言われていたので、30分だけの寄り道だ。

 祖母の家の縁側に座り、ほんの少しの間、お菓子を食べたり学校の話をしたりする、それだけだったが、それは他に代えられない大切な時間だった。

 それが突然終わりを告げる。

 滝さんが体調を崩し入院してしまう。そして、わずか3ヶ月後に滝さんは亡くなった。

 結局、祖母が入院しても見舞いにも連れて行ってもらえず、次に祖母の顔を見たのは通夜の席、狭い中で静かに眠る滝さんの姿だった。

 滝さんの顔は穏やかだった、ほんとに眠っているだけのように。その白い顔は、今も忘れられない。あれほど好きだった滝さんが亡くなったのに、滝さんが煙となって空へ消えても、不思議と涙は出なかった。

 それから1月ほどして、いつもより早く学校が終わったので、久しぶりに滝さんの家に行ってみた。

 滝さんの家は門が閉ざされたままで、同じ場所とは思えないほど薄暗く生気がなかった。ソラは、しばらく家の生垣の根元に座り込んで、ぼんやりとしていた。白い小さなスズランの花が頭を垂れるようにして生垣の影に咲いていた。

 ――この花、滝さん好きだったな。今年の花、見れなかったね。

 ……いけない、もう帰らなくっちゃ。

と思った時、生垣からガサガサと1匹の猫が出てきた。

 こちらをじっと見る猫と視線があった気がした。やがてくるりと向きを変え、その猫は生垣の向こうへ姿を消してしまう。

 その夜、ソラは、なぜかその猫のことが心に残って、1人、部屋でノートに落書きのように猫の絵を描いていた。ノートに描かれた猫の絵。

 ソラは絵を描くのが小さい頃から好きだった。そして、その絵を一番褒めてくれたのが祖母の滝さんだった。

 夏休みの作品が賞をとった時も、母さんは何も言ってくれなかったけど、滝さんは自分のことのように喜んでくれた。

 その時の滝さんの言葉を思い出した途端、これまでずっと泣けなかったソラの目に、涙が溢れた。

 その時だ。

 自分の描いた落書きの猫が動いて見えた。

 初め、涙のせいかと思ったが、絵の猫は、ごく自然にノートの中で自由に動き続け、こちらを見上げてこう言った。

「お前、なんで泣いてるんだ」

 それが、野良の三毛猫、トビとの出会いだ。

 トビとは、なくてはならない友達になった。

 他の動物でも描いて試してみたが、トビのように動くことはなかった。

 いろいろ試してもできなかったので、トビだけが特別なのかと思い出した頃に、近所の神社の狛犬で突然成功する。

 狛犬を見た時、これはいけると感じたのだ。

 狛犬がこちらを呼んでいる、そう感じてすぐに描いてみると、狛犬と話ができた。

「うちの近所の神社の狛犬さんがね、やたら昔のことに詳しくて面白かったんですよ」

 思い出し笑いをしながら楽しそうに天見は話してくれた。

「おい、もういいかソラ。そろそろ高岸の婆さんが飯をくれる時間なんだ。俺、行くぜ」

 トビと言われた三毛猫は、画用紙の中から、俺を見上げて言った。

「なあ、あんたのことよく知らないけど、おいらが見えるってことはさ、これは縁だぜ。だから……、ソラのこと、力になってやってくれよな、じゃあな」

 そういうと身を翻し、画用紙の外へ向かって跳んだ。猫は消えていた。

 俺は、思わず、今猫がいた画用紙を触って確かめる。真っ白な紙に戻った画用紙には、なんの痕跡も残っていなかった。

「お前の話だと、あの猫、現実にいるんだよな」

「ええっと、今頃、家の近所の屋根の上にでもいるんじゃないかな。トビは近所の野良なんで」 

 ふーん、と唸ったきり俺は次の言葉が出てこなかった。確かにこれは現実だ。だが、あまりに突拍子のない話で、すでに俺の理解の域を遥かに超えていた。

 こうなると、ただあったことをそのまま受け止めるだけだ。それしかできなかった。Let it be. 俺の脳内BGMには古典ロックのフレーズがひたすらリピートしていた。そんな中でも、トビって奴が最後に言った言葉が、フックとなって俺の胸に引っかかって抜けそうになかった。

「天見、お前、なんか困ってることあるのか」

 俺は言葉にしてみたが、天見はぶんぶんと頭を横に振った。

「なんにもないです。トビのいうことは気にしないでください。あの子はいつも気まぐれなんで、言うこともしっちゃかめっちゃかだし。それより、先生、このこと絶対に誰にも言わないって約束してもらえますか」

「もちろん。お前がそれを望まない限り決して他言はしない。まあ、誰かに言ったとしても信じてもらえるとは思えないけどな。自分でも、こうやって、ほっぺをつねりたいくらいだ」

 俺は、そういうと、自分の頬を、ぎゅっとひねって見せた。

「いて! な、やっぱり痛い」

 天見の表情が、少しほどけて笑顔になった。

 そこへ突然、ドタドタと廊下を走る音がして、ガラリと戸が開いた。

 勢いよくやってきたのは伊山だった。

「ああ、やっぱりここにいたんだ。あれ、葉山先生も。ソラ、練習、人が足りないんだよ。来れるんだったら練習に来てよ」

「うん、今、行こうと思ってたとこ」

「あ、先生も担当なんだから、たまには平日も覗きに来てくださいよ」

 天見は、今までの話が全部なかったかのようにして、伊山と賑やかに行ってしまった。

 俺は笑って見送りながら、まさに狐に騙された気分だった。

 ただ、さっきの天見が本当の天見だ。それは、確かなことだった。そして、俺にはまだまだ見えていないものがたくさんあるだろうってことも、わかった。

 担任として何を見てたんだろって気分になり、俺は、しばらくそこを動けなかった。


 翌日からは、彼女の大切な秘密を共有できたことで、天見もずいぶん心を開いてくれるようになった気がする。終わりのホームルームの後や、対抗戦の練習の時など、よく向こうから話してくれるようなった。ただいつも彼女の横には伊山や南條、生徒会のメンバーがいて、あの絵の話については、あれから何も聞けていない。

 なんだか、こちらから聞くのもためらわれて、絵のことについては、彼女から話すまではと、静観することにした。

 かるたの練習は6月に入ってますます熱が入り、週末には街のかるた会に練習をつけてもらいに行くなどして練習を重ね、夏が近づくにつれ、忙しさは増していった。

 岡崎の話によるとかるたの実力は順調に伸びているという。柊も彼なりのペースで練習に顔を出して、来れば楽しそうにやっている。

 京都の夏は厳しいことで有名だが、6月の終わりだというのに、すでに連日30度を超える日が続いていて、これからの本格的な夏が思いやられた。

 梅雨の方も、今年は本当に雨が少なく、ここまで少ないと夏の水不足が心配されると、気象庁が注意喚起を始めた。

 そんな6月が終わろうとする放課後、俺は、伊山に相談があると呼び出された。

 俺がガラリと実習室の扉を開けると、中には伊山、天見、南條のいつもの3人組がいた。

 伊山が、いつになくかしこまった態度で喋り出した。

「先生さ、マンションに一人暮らししてるって聞いたんだけどさ、先生のマンションって、ペットとか飼ってもいいとこなのかな?」

「ん? 随分古いからな、特にダメっていうのはないみたいだ。1階の部屋の人は、犬を飼ってるんじゃないかな。時々吠えるのが聞こえてくるから」

 それを聞いて3人の表情が一気に明るくなる。

「先生なら私たちの話、聞いてくれると思うから言うんだけど」

「うん、絶対聞いてくれるよね」

 南條が、大袈裟なほど頷く。横では天見が、訴えるような目で、俺をじっと見ている。

「先生、今私たち、とっても困っているんだ」

「なんだ?」と先を促すと、伊山が突然頭を下げた。

「先生、お願いだ。ネズミを1匹飼って欲しいんだ」

 伊山に続いて、両横の天見、南條も頭を下げる。

「ネズミ? どういうことだ?」

 3人は、その言葉を待ってましたとばかりに、勢い込んで説明を始めた。

 3人の熱さに圧倒されながら俺はただ話を聞いた。話を整理すると、こういうことらしい。

 この校舎で迷いネズミを見つけたのが、四月、入学して早々のこと、どうやらどこかから逃げ出してきたファンシーラット(掌サイズの一般的な飼いネズミのようだ)で、3人はそいつに密かに餌をやっていたらしい。

「お前ら、小学生みたいなことやってたんだ」

 俺が少し呆れてそういうと、南條が言いにくそうに言い訳を述べる。

「私たちも、ここでずっと飼えるなんて思ってたわけじゃなくて、心当たり探して回ってたんです。ただ、私たちの家はもちろん、なかなか飼ってくれるって人が見つからなくて、それと、パンのことが学校で知られたらきっと大騒ぎになるだろうって相談してたら、ずるずると……」

「それにしても、3ヶ月もお前ら、よくバレなかったな」

「パンは、なんと言っても聞き分けのいい子なんで」

 伊山がニコニコと自慢げに言うと、天見が勢い込んで、俺に訴えた。

「パンていうのは、私たちがつけたその子の名前です。その、パンが好きなのと、模様がパンダなので。それで、先生も京の暑さは大変だっていうのは、すごくわかってると思うんですが、ネズミって暑さ寒さに弱くって、このままの暑さが続くと学校ではもう危険なんです」

「ネズミの最適飼育温度は20度から26度、今はなんとか校舎の床下でしのいでるんだけど、もうこの暑さでそれも限界みたいで」

 南條の解説に、天見、伊山もうんうんと大きくうなずく。

 俺が、3人の真剣な顔を見回して、うーんと唸った。

 小学生の頃、学校帰りに拾った猫に餌をあげていたことを思い出す。

 しばらくして猫がいなくなったと思っていたら、友達が近くの道路で車に轢かれていたと教えてくれた。その友達が、轢かれてどんなだったかを、やたら具体的に語るのがとても腹がたったのを覚えている。そんなの聞きたくないって言いたかったのに、言えなかったっけ。

 だが、今の俺にペットの世話ができるかというと、正直自信がなかった。恥ずかしながら、自分の食事さえ面倒で腹さえ満たされればいいという生活をしている俺だ。命を預かるのを、そう簡単にという気持ちもあった。

「ここまで話しちゃったんだから、もうパンを見てもらおうよ」

 南條が、そう言うと、わかったと天見が教室後ろの戸棚の方へ行って戻ってきた。

 彼女の掌に、そいつがちょこんと乗っていた。

 天見の掌に立ち上がるようにして、こっちを見上げるネズミは、白黒模様のパンダ柄だ。しかも毛がふわりとして、きらきらの黒い目で鼻をヒクヒクさせてコチラを見上げている。そいつは、俺に明らかに訴えかけるように「チュチュッ」と鳴いた。俺でさえ、その可愛さに唸ってしまう。

「うっ、こいつは確かに危険だな」

「もうー、いつ見てもやっぱりかわいいっ! 先生、こんな可愛い子に、熱中症で倒れろっていうんですか」

 南條が俺に詰め寄る。

「な、先生、可愛いだろ。お願いだ。こいつをなんとか助けてやってよ」

「お願い、葉山先生!」

 声を合わせての懇願に、俺はあっけなく陥落した。

「わかった、なんとかするよ」

 3人は、大騒ぎで手を取り合って喜んだ。その喜びようを見てしまうと、まあいいっかと思ってしまった。

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