第7話 この人との泊まりとか不安すぎる

 しばらく洞窟を彷徨い、なんとか出口へと繋がる道を見つけ、森に辿り着いた。


「やっと出られましたね」

「そう、ですね」


 ……なぜ、そんなにも寂しそうな表情をするのか。ようやく目的の素材を採取できるのだから、もう少し喜んでも良いだろうに。


「それで、鈴鳴り草はありそうですか?」

「今探しますね」


 ナギさんは手頃な木の傍でしゃがみ、草を別けるように探し始める。


 そして、すぐにこちらへと向いた。


「ありましたよ、鈴鳴り草!」

「それなら良かったです。嵐もここを通る時は弱くなっていたのですかね」


 カバンに入れ、こちらへと駆け寄ってくる。


「数は大丈夫ですか? 足りないとなれば、また取りに来るだけですが」

「はい。元々一つあれば問題無かったので。宝玉に一番重要なのは……」


 言いかけて、やめた。そこまで言われると気になるのだが、調合についてはナギさんの仕事。俺が気にしても意味はないか。


「では、早く戻って調合してしましょうか」


 個人的にも、村で話を聞いておきたいし。


「あっ、ちょっと待ってください!」


 っと、踵を返そうとしたが、ナギさんが腕に抱き着いてきた。


「その……もう少し、寄り道していきませんか?」

「寄り道ですか? 宝玉が完成しない限り、ナギさんは神に襲われるリスクを持ったままです。早く帰った方が良いかと」

「じゃ、じゃあ! この場で調合しますから!」

「ダメです。祭壇に供えるまで、リスクは無くなりません。今はナギさんの安全が最優先です」


 それに、俺にはもう、ナギさんに調合させる気はないし。


「……だったら、勇者さんが守ってくだされば良いでしょう! はい決まりです! もう少しピクニックを楽しみましょう!」

「……ピクニックが、したいのですか?」

「そうです! 私、勇者さんと遊びたいんです!」


 不思議な願望を持つ人だな。それに、まるで切羽詰まったような顔をする。


 ……もしかして、それほど冒険が楽しかったのだろうか。ナギさんはこれまでずっと、村長代理として気を緩む間もなく働いてきただろう。そこに神なんて相手と戦う必要が出てきた。


 こうして油断できるのも、自分以外に戦える者が、俺が来て仲間になったから……


「分かりました。そういうことであれば、お付き合いします」

「付き合ってくださるんですか!?」

「ニュアンスが変ですね。一緒に遊ぶだけです」


 まあ、少しくらいは羽を伸ばす機会を与えたって良いだろう。ナギさんはそれだけ頑張ってきたのだから。


「……どうせなら、キャンプでもしましょうか」

「お、お泊りですねッ!?」

「……何を考えているのかは疑問が残りますが、まあ良いでしょう」


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【作者より】

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