第17話 シャロンと趣味の食べ歩き

 アルマはシャロンの買い物に付き合った後もシャロンと一緒に町中を歩いていた。

 どうもシャロンはアルマと二人で行きたい場所があるのだという。


 「どこまで行くんですか?」

 「この近くに大盛スイーツの店があるのだが、一人で入るのは抵抗があってな」


 シャロンはアルマに行き先を伝えた。

 彼女が足を進める先にあるものはスイーツの店であった。

 そこは大盛で有名な場所だったが量が量であるがゆえに一人で入るには抵抗を感じていたのである。

  

 「私は食べ歩きが好きなのだが、大盛の店にはなかなか入れなくてな。アルマ殿がついてきてくれて助かった」


 シャロンはアルマに感謝の意を伝えた。

 シャロンは食べ歩きを趣味としており、その体躯に見合わぬ健啖家である。

 だが一人で食に興じる姿を他人に見られることに恥じらいを感じるのが悩みの種であった。


 そしてシャロンはアルマと共に小洒落た店へと足を踏み入れた。

 中に入った瞬間、アルマとシャロンは店内に満ちた砂糖と果物の甘い香りに包まれる。

 シャロンは目を輝かせているがアルマはすでに胸やけを起こしそうであった。


 「鍋盛りプリンを一つ頼む」


 シャロンはアルマと二人で席に着くなり注文を入れた。

 鍋盛りプリン、それは名前の如く小鍋一個を使って作った特大のプリンでこの店の名物である。

 その名前にアルマは思わず己の耳を疑った。


 「ここにはちょくちょく来ていたのだがついにアレに手を出せる……」


 シャロンはウズウズしていた。

 かねてより鍋盛りプリンを食す機会をうかがっていたのだがアルマが同行してくれたことによりついにその時が訪れて感無量であった。

 まだかまだかと待ち焦がれて貧乏ゆすりをするたびに彼女の豊満な胸が自己主張をしてくる。

   

 「お待たせしました。鍋盛りプリンです」


 注文から数十分後、大皿に盛られた特大のプリンが運ばれてきた。

 カラメルがかかった頂点にはクリームが追加で乗せられており、見た目だけでも甘さを演出している。


 「来たぞ。さあ行くぞアルマ殿」


 シャロンはスプーンを手に目を輝かせた。

 彼女は目の前に置かれた特大のプリンを完食する気満々であった。

 一方でアルマはプリンの迫力に気圧されており、想像ですら半分程度で胸やけを起こしそうであった。


 「うん。美味しいな」

 「お店の名物になるのも納得ですね」


 アルマとシャロンは二人で鍋盛りプリンを攻略していた。

 プリンはただ量が多いだけではなく味もしっかりしており、見掛け倒しではない確かな名物であった。


 「しかし、これを一人で食べてたら体重が心配だったな」

 「うっ……た、確かに……」


 シャロンの何気ない一言でアルマは無意識に腕を止めた。

 甘味の食べ過ぎは太る原因である。

 魔術師という仕事柄運動が少なくなりがちなアルマには軽視できない問題であった。


 「私もつい最近少し太ってしまったらしくてな。胸が苦しくなったのだ」


 シャロンは自嘲気味に語る。

 だがそういう彼女は小柄ではあるものの別段ふとましいところはない。

 アルマは『食べた分がすべて胸に行っているのでは』と言いかけたがあえて口にせずプリンと一緒に飲みこんだ。


 十数分の実食の末、アルマとシャロンは鍋盛りプリンを感触した。

 皿の上には何も残っておらず、食べるのに使ったスプーンが二つ添えられているのみであった。


 「いやあ、食べられてよかった」

 「も、もう動けません……」


 シャロンは平然とした様子で口元を拭うがアルマは案の定胸やけを起こしていた。

 喋ることすら苦しく、歩き出すと口にしたものがすべて逆流してしまいそうな感覚すらあった。


 「次のお店に行こう。最近新しく揚げ料理の店ができたらしくてな」

 「えぇー!?まだ周るんですかぁ!?」


 アルマはシャロンに腕を引かれて次なる場所へと連れていかれた。

 連れられて行く中でアルマはシャロンの体力面での強さの秘密を見た気がしたのであった。

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