第3話 東方の冒険者 ミトゥース 宿命
「緋珻巫よ、カイザン公爵家の跡継ぎは、そなたの瞳にはどう映った?」
養父である可部の睛迷は、私に公爵邸でお会いしたエドワード様の事を訊ねてくる。
「はい。エドワード、とてもお強い方です」
私は、感じた中の1番無難なものを答える。
「そうか。ならば、そなたは、その強さをどう見る?」
「え?」
「カイザン公爵の跡継ぎが、あのようにお強い理由はなんだと思う?」
「……それは……」
緋色の瞳の少女は、そこで言葉を詰まらせた。
「答えられぬか? そなたの瞳には、何も映らなかったと言うのか?」
「それは……その……」
私は、養父である可部の睛迷に答えを返すことが出来ない。
エドワード様の瞳には、緋色の瞳を持つ私が映っていたから。
「儂が思うに、カイザン公爵家の跡継ぎは、『神』の加護をその身に宿しているからだと見ている」
「……神の加護?」
「そう。神の加護だ。だから、跡継ぎであるエドワード殿には、緋珻巫よ、そなたの様な支えが、必要なのだ」
「……支え?」
「そうだ。そなたの緋色の瞳は、エドワード殿の『神』を映す鏡だ。そなたが、エドワード殿を支え、その『神』を宿す瞳を持って、カイザン公爵の跡継ぎに寄り添うのだ」
「……私が……エドワード様の……支え……」
私は養父である可部の睛迷の言葉を復唱する。
「そう。そして、それは、そなたにしか出来ぬ事だ。だから、カイザン公爵の跡継ぎを支え、導くのだ」
養父である可部の睛迷は、私にエドワード様を『神』を宿す瞳を持って支え、導くように諭す。
「はい。分かりました」
私は、養父の睛迷に返事をした。
「その応えを待っていたぞ。緋色の瞳を持つ娘よ」
養父である可部の睛迷は、満足そうに頷く。
「……という事で、そなたも付いて行け」
「……へ?」
……という事とは?
「『神』の加護を持つ男を支えるには、緋色の瞳を持つ娘が必要だ。だから、そなたもエドワード殿に付いて行け」
「……は? ……え?」
私は養父である可部の睛迷の言っている意味が分からず、ただ、戸惑う。
「カイザン公爵家の跡継ぎは強いが、まだ若輩者なのだ。だから、許嫁であるそなた緋珻巫が、その身を寄り添わせ、支えるのだ」
「え? ……ええ?」
私は、養父である可部の睛迷の言っている意味が分からずに、ただ、戸惑う。
「だから、そなたも付いて参れ。カイザン公爵家の跡継ぎを支えるために」
「……は……はい……」
養父である可部の睛迷は、私にエドワード様を支えるために付いて行けと仰った。
私は、その言葉の意味を理解出来ないままに頷く。
こうして、私は旅支度を整えて次の日の朝カイザン公爵邸の門扉の前に転移する。
カイザン公爵家の門扉の前には、カイザン公爵家の警備兵の皆様が集まっていた。
そして、その集団の前に私は立つと、軽く会釈する。
すると、警備兵の皆様は、私に向かって敬礼してくれた。
「公爵様より聞いております」
と言われ邸内に案内されるのであった。
それが、世界の運命を左右する物語の始まりだとは知らずに。
ラグラジェント戦記 真実の記憶 truth code 月野片里 @zeluda
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