100日後に世界を滅ぼせと言われたダンジョンマスターだけど、そんなの嫌なので逆に人類を救う最強のダンジョンを作ることにしました!
なか
1日目「俺、大工からダンジョンマスターになる」(1)
「天野、また段取りミスかよ!これだから使えねぇんだ!」
現場監督の怒声が響く。いつものことだ。小さな工務店で大工見習いとして働いているけど、俺の扱いは常に「下っ端」か「役立たず」。
木材を運び、釘を打ち、怒られ――それが俺の日常。
「釘を曲げるなんてセンスねぇな」「寸法間違えて柱切るとかあり得ねぇ」――先輩たちの罵声は、もはや聞き慣れたものだ。
でも、大工が好きだ。
父さんが残してくれた古い大工道具。それを使って作った小さな棚。それが俺にとっての誇りだった。父さんの言葉、「家を作るのは誰かを守るためだ」――それに憧れて、俺も大工を目指したんだ。
でも、現実は甘くなかった。俺は何をやっても上手くいかない。先輩たちの軽蔑の視線が、現場の空気を重くする。
今日の現場は、三階建ての木造住宅の建設途中。俺は二階の足場に立っていた。
「これ、ロープが緩んでるな……」
安全ベルトを繋ぐためのロープがたるんでいることに気づき、俺はそれを直そうとした。
「天野、余計なことすんな!」
先輩が怒鳴ったけど、俺は無視した。こういう小さな気づきが事故を防ぐんだ。それは知識だけじゃなく、現場で学んだ俺なりの経験だ。
「ここを締め直せば――」
その時、足元が大きく揺れた。
「うわっ!」
支柱がぐらつき、バランスを崩した俺は宙に浮いた。
「天野!掴まれ!」
必死に手を伸ばしたけど、ロープに届かなかった。俺の体はそのまま――。
「なんで……俺ばっかり……!」
目が覚めると、冷たい石の床が背中に当たっていた。
「……ここ、どこだ?」
周りを見渡すと、そこは見たこともない空間だった。
石造りの壁、青白く光る奇妙な石、湿った空気――現場とは似ても似つかない空間。
「……夢か?いや、夢であってくれ!」
自分の頬を思い切りつねる。痛い。つまり、これ、現実?
「目覚めたな、新たなるダンジョンマスターよ。」
突然、低い声が響いた。振り向くと、黒いローブを纏った人物が立っていた。
「……誰だ、お前!」
「お前は選ばれた。この『滅亡のダンジョン』を完成させる新たなるマスターだ。」
「滅亡のダンジョン……?ちょっと待て、どういうことだよ!」
「このダンジョンを完成させ、人類を滅ぼせ。それが、お前の使命だ。」
「いやいやいや!俺はただの大工見習いだぞ!世界を滅ぼすとか、ワケわかんねぇ!」
ローブの人物は冷たく告げた。
「拒否するならば、この場で消滅するのみ。」
「消滅!?おいおい、冗談だろ!」
「問答無用だ。これよりお前に力を授ける。」
眩い光が俺を包み込む。
「うわっ!眩しい……何だこれ、頭の中に……設計図?」
目の前に浮かび上がったのは、建築用の設計図のような画面だった。
「トラップ配置?ダンジョン強化?……これ、施工図に似てるぞ!」
「この力を使い、ダンジョンを完成させよ。そして100日後、人類を滅ぼせ。」
「無理だって!俺、大工だぞ!人を守るために働いてるのに!」
ローブの人物は黙ったまま、影のように消えた。
俺はその場に座り込んだ。
「ふざけんなよ……滅亡の使命?俺が?……こんなの絶対おかしいだろ。」
遠くから、不気味な唸り声が聞こえる。
「な、何だ……?」
暗闇の奥で、何かが動いている気配がする。
「おいおい、説明だけして状況放置とか……頼むから、夢であってくれ――!」
100日後に世界を滅ぼせと言われたダンジョンマスターだけど、そんなの嫌なので逆に人類を救う最強のダンジョンを作ることにしました! なか @naka007769
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