第3話 モブNPCvs不良?


 俺は思いもしなかった呪物と自分の相性の良さに気づき、自然と笑みを浮かべてしまっていた。


「攻撃力250……うん。始まりの街でこの攻撃力は悪くない数値だろう」


「くそっ、何余裕そうにしてんだ!」


 すると、男はまた右手で俺を殴ろうとしてきた。しかし、スタミナがもう少ないらしく、フラフラの状態からの一撃だった。


 喧嘩なんかしたこともない俺でも、こんな攻撃ならタイミングを合わせて弾くことくらいはできるだろう。


 何より、今の俺は呪物を着けて攻撃力がある程度あるわけだしな。


 俺はそう考えて、男の大振りに合わせて男の手を強く弾いた。


 バシンッ!


「え? うわっ!」


 すると、俺に手を弾かれた男は反撃されると思っていなかったのか、拳を弾かれた勢いで斜め後ろに倒れてしまった。


 ゴチンッ!


「ギャッ!」


 そして、男はそのまま壁に後頭部を打ち付けて蹲ってしまった。


「へぇ、成人男性を軽くつまずかせるくらいの攻撃力か」


 俺はうずくまっている男を見下ろしながら、自身の手のひらを見つめた。


 さすがに、普通の呪物じゃ成人男性を圧倒できるほどの力はないか。まぁ、元々の攻撃が未定義なわけだしね。


 呪物と言うのはいくつかランクがある。


 普通の呪物の上に、上級呪物、特級呪物と呪物の与える力によってランク分けされているのだ。今俺が着けている『棘黒指輪』は、多分一番下のランクの呪物だ。


 それも、ゲームの中で一度も見なかったくらい低レベルのものだと思う。元々、裏路地に落ちてたようなものだしね。


 そんな呪物でここまでの力が得られるというのなら、十分すぎるだろう。


「呪物はダンジョンで見つけるのが定番だったはず。それなら、ダンジョンに潜って呪物をどんどん身につければ、強くなれるはずだ」


 せっかくゲームの世界に転生したのなら、ゲームの世界を堪能したい。そして、堪能するためには力が必要だ


 ……うん。これからこの世界ですることが見えてきた。


 俺はこの世界にある呪物を集めて強くなる。そして、魔法学園とかゲーム本編に出てきた舞台を一通り聖地巡礼してやる!


 せっかくゲームの世界に来たのなら楽しまないと損だしな。


 俺がそんな目標を立てて握りこぶしを空に掲げていると、頭を抱えてうずくまっていた男がふらふらと立ち上がった。


「ん? お、俺は一体何を?」


「あれ? 妖気が消えた?」


 立ち上がった男を見てみると、虚ろだったはずの目には光が戻っていた。どうやら、妖気が体から抜け出ていったらしい。


 確か、作中でも妖気の影響が軽度の場合、強い衝撃を受けると体から妖気が抜けることがあるとか言っていた気がする。


 どうやら、この男は妖気に憑りつかれていたといっても、かなり軽度な状態だったみたいだ。


「え? うわっ!」


 俺がそう考えていると、男が足元に転がっていたサバイバルナイフを見て声を上げて驚いていた。


 しかし、そのあとにそのサバイバルナイフが自分のものだと気づいたのか、拾い上げてからサーっと顔を青くさせた。


 それから、男は再び俺を見ると、勢いよく深く頭を下げてきた。


「す、すまなかった! 本当にすまなかったぁ!」


 すると、男はこちらの返事も聞かず、そう言い残して逃げ出すように走って俺のもとを去っていった。


 そして、そのとき微かに膨らんでいる布袋を落していった。


「え、ちょっ、ちょっと!」


 俺がその布袋を拾い上げて呼び止めるも、男はこちらを振り返ることなくダッシュで裏路地を抜けてどこかに消えていった。


「いや、これどうすればいいんだよ」


 俺はそう言いながら拾い上げた布袋の中を覗いてみた。すると、そこには多くはない硬貨が入っていた。


 どうやら、これはさっきの男の財布らしい。


「ひー、ふー、みー……まぁ、戦利品ということで受け取っておくかな」


 俺はそんな言葉を残して、これ以上不良みたいなのに絡まれないように急いで裏路地から抜けることにした。


 そして、俺は男の布袋からその日の宿代と飯代を頂戴したのだった。


 まぁ、あれだけのことをされたのだから、少しくらい男の金を使ってもばちは当たらないだろう。


 明日は冒険者ギルドに行って、冒険者登録でもしようかな。


 そんなことを考えて、俺はこのゲームの世界で大活躍をする未来を夢見て寝ることにしたのだった。


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