第3話 変態とパンツの出会い
◆
「はあ、はあ、はあ……。み、道のりは遠いぜぇ……」
苺パンツの付喪神 いちごは、マンションへの道のりを人間に見つからないようにコソコソと隠れながら歩いていた。
わんわん! わんわん!
「うおっ!」
野良犬に見つかり、いちごは路地裏を追いかけ回された。
「ぎゃああああああああッ!」(オレはどうしても、どうしても、彼女の元に帰らないと行けないんだァァッ!)
いちごは素早く、犬の入れない隙間に入り込んだ。
はあはあと息を切らせ、犬が諦めてここから去るまで いちごは隙間に潜んだ。
「はあ、はあ、はあ……お、思い出すぜ。オレが初めてくりすと会ったの時のことを――――」
◆
「あらあら、くりすちゃん。そのパンツが欲しいの?」
「うん、おばあちゃん。この苺パンツ可愛い」
オレは売れ残りってヤツだった。
テレビ番組で流行って沢山入荷しすぎて、流行が終わったら誰にも見向きもされず倉庫行き。数年間 放置されて、閉店セールで半額で売り出されていたのがオレだった。
このまま誰にも買われず、また倉庫でずっと眠ったまま、いずれは処分されることを覚悟した。
どうやらオレには付喪神になる才能があったらしく、付喪神になるには100年かかると言われているが、オレはたった数年で1割ほど付喪神化していた。だが、これが逆に辛い。動けず意識だけはある。拷問ってヤツだ。けれど不思議と死にたいとは気持ちはなかった。
これは付喪神としての特性なのだろう。
物として生み出されたプライドというヤツなのだろう。
誰かに履いてもらいたい。
パンツとして作られた物の欲望。
――誰かッ、誰かオレを履いてくれッ!――
心の奥底でオレは叫んだ。
「――っ!」
少女がオレを見ている。じ――っと見つめている。
店の端っこの安売りのカゴに入れられた、最期の1枚になった苺パンツのオレを見ている。
「おばあちゃん、このパンツ買ってー」
この時から、くりすはオレにとって『神』になった。
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