第6話 旅立ち

あっという間に出発の日になった。鈴木以外にも別の人間も行くため、空港への見送りはやめて、前日の夜に早苗の家に泊まることにした。

鈴木の部屋は、家具・家電は残してあるが食材や衣類のほとんどは処分をしてウィークリーマンションのようになった。


「楠木、これ。合鍵、渡しておくね」

「うん。鈴木も気を付けて」

1か月前に付き合い始めたばかりで同期の癖が抜けず未だに名字で呼び合っていた。

数か月に1回は帰ってくる。短くて1年長くても2年らしい。

大学時代の彼は、高校卒業前に付き合いだした地元の同級生だった。

合う頻度も数か月に1度なのであの時と変わらない。


それにしても、なぜ離れると分かってから男たちは告白をしてくるのか。

その気になったら動こうと思っていたが、終わる直前になってそろそろまずいと危機感を感じるのだろうか?私は、夏休みの課題研究か!?と心の中で突っ込みをいれた。


「じゃ、行ってくるわ。」

「鈴木なら大丈夫。行ってらっしゃい」

玄関前で長い抱擁と軽いキスをして見送った。昨夜のような濃厚なキスにしなかったのはお互い離れた後に思い出し地に足がつかなくなることを避けているようだった。


2020年1月。鈴木は異国の地へ旅立っていった。




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