古代の遺跡

古代の遺跡 1

初めて目にする「古代の遺跡」。ここがかつて神殿だったなんて信じられない。崩れた石柱や苔むした階段、そのすべてが長い年月の積み重ねを静かに語っている。息を吸い込むと、冷たく湿った空気が肺に染み込む。どんな危険が待ち受けているのか、想像してもキリがない。足が少しだけすくむ。でも、ここで立ち止まってはいられない。


強化鉄の剣を握りしめると、ほんの少しだけ気持ちが落ち着く。頼れるものはこれしかない。足元の石畳が微かに軋む音を立てる。音が静寂を破るたびに、背後に何かがいる気がして振り返りたくなるが、今は目の前だけを見て進むしかない。


通路は広く、壁には古代の彫刻が風化した姿をさらしている。その一つひとつに意味があるのだろうが、解読できるわけでもない。ただ、この場所にかつて栄えた何かがあったのだと思わせる。足音だけが響く中、少しずつ緊張が積み重なっていく。この静けさが逆に怖い。何かが潜んでいる。そんな気配が、空気の中に溶け込んでいる。


やがて通路が開け、広間が目の前に現れる。壁一面にはかすかな光を放つ文字が刻まれ、広間全体を淡い明かりが包んでいる。その中央に蠢く影――ダストスピリットだ。記録で読んだ通り、小型の風塵モンスター。直接攻撃は大したことがないが、視界を奪い隙を作るのが得意だと聞いている。実際に見ると、その不定形な体が不気味で仕方ない。


一匹がこちらに気づき、ふわりと浮かび上がるように接近してくる。剣を構え、その動きを見極めるが、曖昧な形の体は攻撃のタイミングを掴みづらい。一撃を試みるが、刃が体をすり抜けた感触がする。やはり簡単にはいかない。中心部――あそこを狙うしかない。


粉塵を巻き上げ、視界を遮るスピリット。その渦の中にわずかに浮かぶ核心部分を捉えようと目を凝らす。冷静に剣を構え、慎重に一撃を放つ。刃が何かを捉えた感触。スピリットが崩れ落ち、広間は再び静けさを取り戻す。


だが、安堵する間もなく、壁際から次々にスピリットが現れる。今度は複数だ。一体ずつなら何とかなるが、囲まれたら厄介だ。粉塵を巻き上げながら動き回り、こちらを混乱させようとしている。これでは攻撃どころか、動くのさえ難しい。


近くの一匹に狙いを定め、剣を振り下ろす。中心部を狙えば、一撃で仕留められるはずだが、その隙に他のスピリットが粉塵を巻き上げ、視界を完全に奪う。焦らず、ゆっくりと呼吸を整えながら一体ずつ確実に減らしていく。


最後の一匹を倒す頃には、体力がじわじわと削られているのを感じる。ポーションを取り出し、一口飲む。冷たい液体が喉を潤し、少しだけ活力が戻る感覚。だが、これではまだ足りない。次の通路にはもっと厄介なものが待っているはずだ。


次の広間に入ると、先ほどよりも広い空間が目の前に広がる。天井が高く、中央には風の結晶が淡い光を放っている。その美しさに見惚れる間もなく、広間全体を覆う濃い粉塵が目に入る。その中心で漂う巨大なダストスピリット。通常の個体とは明らかに違う。あれがボス個体だろう。


周囲に漂う粉塵は、吸い込むだけで息苦しい。剣を構える手に汗が滲む。近づけば近づくほど、空気が重くなっていくようだ。ここまで来たのだから、退くつもりはない。ただ、どう仕留めるかだ。


スピリットが静かに動き出した瞬間、広間全体が渦巻く風に包まれる。視界が奪われ、剣を振り払っても粉塵が途切れることはない。この中で冷静を保つのは至難の業だが、相手をよく見極めなければならない。中心部の光。それだけが唯一の目印だ。


渦の隙間に光が見えた瞬間、剣を突き出す。手応えがあった。だが、スピリットは崩れるどころか、さらに勢いを増して渦を巻き起こす。風が肌を切りつけるような感覚が全身を覆う。攻撃を加えるたびに反撃が強くなる。これは長引く戦いになる。


ポーションを再び口に含み、わずかな体力を回復する。その間も粉塵が追いかけてくるような錯覚に陥るが、ここで動きを止めるわけにはいかない。中心部を再度狙い、全力で剣を振り下ろす。


刃が光を貫いた瞬間、スピリットが大きく揺れ、その形が崩れ始めた。粉塵が渦を巻きながら消えていき、広間に静寂が戻る。残されたのは、輝く「風の結晶」。これがボスの落とした戦利品か。手に取ると、冷たい感触が指に伝わる。この場所に眠る何かの一部だと感じる。


まだ遺跡の冒険は始まったばかりだ。この先に何が待つのか分からないが、一歩ずつ進むしかない。剣を握り直し、次の通路へと向かう準備を整える。


◯獲得アイテム

・風の結晶 ×2


[Tips]

風の結晶

風属性を持つ特殊な結晶。軽く冷たい感触を持ち、触れると微かな振動が伝わる。魔力を蓄える性質があり、装備の強化や魔法道具の素材として重宝される。特に風系の魔法や装備に使用すると、その効果を大幅に高めることができる。


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