第2話 武神から人間へ

 どれほど眠っていたのだろうか……


 目を覚ますと、我は見知らぬ建物のベッドの上にいた。


 ここはどこなのか、我はふと窓越しに外を見る。


「に、人間……?」


 外を見ると、たくさんの人間が歩いているのが見えた。


 まさか我は、本当に人間界へと落とされてしまったのか?


 そうして外を眺めていたのだが、我は体全体に違和感を感じとる。


「な、なんだこれは〜!?」


 我は思わず叫ぶ。


 なぜなら、ガラスに反射した我の姿が、我の知っている姿ではなかったからだ。


「我は……人間になったのか……?」


 いや、なったというより、デウスによって人間にさせられたと言うべきであろう。


「大丈夫ですか!?」


 すると、我の大声に反応してか、若い青年が扉を勢いよく開けて部屋に入ってきた。


「はぁ良かった……無事だったんですね!」


 無事? 無事とは何事ぞ?


「すまぬが若き者よ、我はどうしてここにおるのだ?」


 すると青年は、心配そうな顔をして話し始めた。


「あぁ、僕が倉庫で武器の整理をしていたら、突然後ろから人の気配がして、見るとあなたが倒れていたんです。それで、僕はパニックになっちゃって、どうすれば良いか分からなかったんで、とりあえずうちのベッドに寝かせていたって訳です」


 そうか……この者には迷惑をかけたな。


「うむ……助けてくれた恩は必ず返す。ところで若き者よ、名は何と申す?」


 せめて名は聞いておかねば、またいつかどこかで会った時に忘れてしまうかもしれぬでな。


「ぼ……僕は、ミル=ラーデンです」


「ほう、ミルというのか。良い名ではないか。この恩はいつか必ず返す」


 我は神界では怠惰で傲慢だと、周りからは言われておったが、意外にも恩はしっかりと返すのだよ。


「いえいえ、そんな大したことしてませんし、恩とかは気にしないでください」


 ほう、人間にはここまで謙虚な者もいるのか。


 我が見てきた人間は皆、強欲で利権にまみれ、戦ばかりしている奴らだったからな。


 ここまで謙虚な人間もまた珍しい。


「ところで、あなたの名前はなんですか?」


 ほう、ミルは我の名に興味があるのか。


「我はかつて英雄と謳われた伝説の武神、グラディウスである!」


 この名を聞けば、驚いて腰を抜かすであろう。


「へ……?」


 だが、ミルの反応は我の思っていたものとは全く違ったのだ。


「いやいや、グラディウスは神の名前ですよ! 嘘が下手すぎますよ笑!」


 何!? この我を疑うのか!? 


 ならば仕方あるまい。武器を司る神、武神グラディウス様の力を見せてやろう!

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