第2話

体育館を出ると柚葉が驚き顔でやって来た。


「実紅だったっけ?」


「ううん。」

言いながら首を横に振った。


「まぁ普通にしゃべってたし、式は無事終わったし、さすが実紅だわ。普通絶対無理だよ!」


「私もびっくりしたんだよ。連絡もなしに新入生代表挨拶させられるなんて思ってなかった。」



「まぁ、普通はありえないよね。でも高校生活楽しみだなぁ。高校生ってみんな彼氏できるらしいよ!私も夏休みまでには彼氏作るわ!」



柚葉らしい。



「彼氏ね…。」



本来なら「私も彼氏ほしいな」とでも言うような流れ。でも嘘はつきたくない。だって欲しいと思わないから。




「実紅も作んなよ彼氏!」



(っ……!)



言葉を偽らない柚葉は思っていることを口に出しただけ。しまったという顔をしているのがわかる。



「…あのさ、実紅、いい加減忘れたら?もう4年も会ってない人なんて。」



「………」

私だってできるならそうしたいよ。




「大体さ、会って分かるの?そんな人。」




「絶対分かる。」

根拠もないのに、

そう言い切れるのはなんでだろう。




「はぁ~実紅、また「ーー紅?」



そのとき、柚葉の声に重なって聞こえた声があった。



「ーーーーなるよ?って実紅!聞いてる?」



「…今名前……」



呼ばれた。


声の方を振り返る。



「実紅、どうした?」

不思議そうに柚葉が顔を伺ってくる。



でももう聞こえない。

気のせいだろうか?



「ほら、行くよ?」



柚葉に促され歩き出した時だった。



(グイッ)


え?


「わぁ!」


不意に後ろから腕を掴まれバランスを崩した。

倒れるっと思った瞬間。



「実紅?」



さっきと同じ声が頭上から聞こえてきた。

気づくと声の主に支えられている。



「ごめん。大丈夫?」



その人は、そう言ってばつが悪そうに笑った。



「…そ…ら君?」

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