第5話 ミノタウロス戦(2)

戦いが始まって20分が経過したがまだ魔獣に致命傷を与えることができずにいる。


「そろそろ屍になってほしいが...」

「ハイアクアブラスター...!!」


最初はいつもの流れだった、しかし今思えば戦っているのは生物であり、コンピューターではないことを思い出すべきだったのかもしれない。

「あ...」ミノタウロスは水に触れた後、姿勢を低くし僕の方向に向かってきた。


彼女の方ではなく僕!? だが近接用にマチェットを持ってきて————

「あっ折れた!!」自分を守るものが折れてなくなっても魔獣の突進は止まらない。自分は浮遊感を覚えて...そして、地面に足がついていないことに気が付いたときには遅かった。


「ぐ、は...ああ」

「だいじょうぶですか!?」


自分は地面に落ちた、その痛みはこれまでの人生の中で最大の物でありサーシャの声に返事を返すこともできないほど、痛みに体が支配された。

僕には、上半身のゴリラが笑っているように見えた。これまでの戦いは魔獣ミノタウロスからしてみれば遊んでいるだけだったのかもしれない。そんな考えが浮かぶ。


「う、うぃああ...た」


立ち上がることができなかった、恐らく足の骨が折れていたのだろう。

「が、ああ——」何もできない自分を蹂躙してくる、上半身のゴリラは自分の手をつかみ、ゴリラの腕に挟まれた自分の手は、強力なゴリラの握力によって折れてしまった。


そんな時何かを話している..彼女が、いや...魔法を詠唱しているサーシャがミノタウロスの後ろにいる。そのことに気付くたが、自分の意識は詠唱が終わる前に消えた。




意識が消えるまでに...恋心を自覚した、自分は...僕は彼女に惚れているのかもしれない、そんなありきたりな恋心を自覚している最中であり。動いて彼女を助けたかった。なにができるかではなく、純粋に助けたかった。


しかし自分の体はどれだけ恋を自覚して動こうとしても動くことはなかった。


体に力を入れる、それでも僕が動くことはない。














これでもう、僕は動かない。







______





彼女が唱えたのは、幻覚を引き起こす蒸気を発生させる、禁断の魔法のうちの一つ。

「————これが、禁断水魔法奥義幻魔水!!」

彼女の周りで蒸気が溢れる


この蒸気に恐怖している上半身ゴリラの闘争本能はサーシャとくらべて劣っている、と言えるだろう。しかし下半身牛はそうではない、日本で行われている闘牛を見ればわかるかもしれないが、上半身ゴリラなどと比べものにならないほどの闘争本能をもちそれはサーシャが相手でも劣ってはいない。


そして、それがこの戦いの結果を決めてしまったと言えるかもしれない。


「ぶほおおおおおお」


魔獣が見えた光景に向かって動こうとするもそれは幻覚であり、本当の景色では岩が存在している。その岩に全力で突進してしまった魔獣は失禁してしまい、そうなれば足を失ったゴリラは恐怖して動き回ってしまう。

しかし、それはクロスボウによってできた傷の出血を激しくしてしまうだけであった。



そのまま強敵だったミノタウロスは出血多量で屍になってしまった......。





「まさか...幻魔水がミノタウロスに効くなんて...」

驚きだった、あんなに強敵だった魔獣がこんなに簡単に屍になるなんて...。






「あれ、どこにいったんだい?」戦いが終わったが、君はどこにいるんだろうか?そういえば君に名前を聞いていなかった気がする。あったら名前を聞かなければならないだろうな...。


それに...私のフルネームもまだ教えていない。




あと君の世界のことも、聞きたいことがある。なのに...どこにいったんだ?









「...あ」

私は、君を...彼を見つけた。







そこにいるのは、そこにあったのは...血で————————






















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