第6話 地下倉庫
てな訳で、早速小屋の大掃除。
寝泊まりするだけだと思って軽くしか掃除してなかったから、思いの外時間がかかる。
「いやあ。僕らよくこんな場所で寝てたよね」
「まあ、外よかマシだったからな」
「でもこの埃の量とか見ちゃったら、ちょっと水浴びしたくなっちゃった」
「おう。浴びて来い。俺はその間に床でも綺麗にしとくわ」
時雨は外で水浴びへ。
汗と雨で気持ち悪く、水浴びしたい気持ちはよくわかる。
俺も時雨が戻ったら浴びるか。
なんて考えながら、布切れを濡らして床を拭く。今にも壊れそうな棚をずらして、細部まで丁寧に。
どうせやるなら徹底的にやった方がいいってのが俺の持論だ。
そんな感じで床を拭いていると、厨房に不自然に板がズレている箇所を見つけた。
これは……ずらせるのか?
ちょっとした好奇心で板をずらしてみると、そこには空洞が。
真っ暗で、何も見えない。
だが、よく見てみると、周りの板も動かせるように細工されているのがわかる。
どうせやるなら徹底的に、だよな。
ということで、全部動かした。
そうして出て来たのは地下へと繋がる階段。
大きさもそれなりで、大人でも余裕で通れるくらいに広い。
「おーい! 時雨! まだ水浴びしてるかー!」
「今体拭いてるとこー!」
「終わったら来いよ! 面白えもん見つけた!」
時雨を呼び、待つこと数分。
まだ少し濡れた髪のまま、時雨は戻って来た。
「おお! これは——」
「ああ。地下通路だ。行ってみるか?」
「勿論! こういうのって、ちょっとワクワクするよね」
「わかる! 財宝とか、金目のもんが眠ってるかも知れねえしな!」
期待に胸を躍らせ、炎を灯した松明を明かりに階段を降りる。
なかなかに深く、まだ先は見えない。
「これは期待できそうだな」
「食料とかだったらどうしよ。掃除する手間が増えるんじゃない?」
「やめろ。行きたくなくなって来るだろ」
こういう時はプラスだけを考えるもんだ。
なんて話してる間に長く続いた階段は終わり、大きな扉に辿り着いた。
鍵はなく、押せば開く。
そんな感じの扉だ。
「いいか。開けるぞ?」
「うん。せーのでやろうね」
「「せーの!!」」
ギイィィィィと軋む音を立て、扉が開く。
奥には大量の樽が置いてあった。
「……樽? 他には?」
「何もなさそうだね」
「マジかよぉ〜……はぁ、俺の金銀財宝がぁ……」
「まあまあ。樽だって使い道はあるよ。たくさんの水を保存できるしさ。あ、これ中に何か入ってる」
「——なに!?」
財宝か!?
覗いてみると、赤い……水?
俺が戸惑っている間にも、時雨は指をちゃぷんとつけ、舐めた。
「バカ! 汚ねえから吐け! 早く!」
「ん? 大丈夫だよ。これ、お酒だ」
酒? この赤いのが?
確かに、ちょっとフルーティーで芳醇な香りが漂っている。
酒か……俺もちょっと飲んでみるかな。
軽く手で掬い、一口。
「美味え!?」
「ね。これワインだよ。外のブドウで作ってたのかな?」
「なるほどな。てことはこの樽、全部ワインか?」
「そうかも。一生かかっても飲み切れないかもねぇ」
「勿体ねえなぁ。こんなに美味いのに」
ぐびぐびいける。
元から酒は好きだが、ワインなんてのは貴族様の飲み物で飲んだ事がなかった。
高くて傭兵如きには手が出せるもんじゃねえからなぁ。
……ん? 待てよ。
「なあ。これって売れねえかな?」
「ワインを? ……うん! いいかも!」
「だよな! よっしゃあ! これで金も手に入るし、買いてえもんも買えるぜ!」
金銀財宝じゃあなかったが、このワインもそこそこ価値のある物。
思わぬ収穫だ。
今日はこのワインで祝杯だな。
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