第4話 生活の地盤

 山奥の小屋に住むことを決めた俺たちだったが、何はともあれ地盤固めから。

 ということで、まずは土地の改良に手を付けた。


 山奥で暮らすということは、街に出る機会が極端に減る。

 即ち、求められるのは自給自足の生活。

 安定して確保できる食料を育てておくのは必須条件だろう。

 幸いにもここにはブドウが生い茂っていて、作物を育てる環境としては悪くなさそうだ。


「取り敢えず、近くの食べられる植物の種を片っ端から集めてみる?」


 だいぶアバウトな作戦だけど、悪くない。

 この山で育った作物ならちゃんと育ちそうだし、街に買いに行く手間も省ける。


「ま、これだけ土地も広いし失敗も経験だ。やってみるか」

「うん」


 目的を決めてからの日々はあっという間だった。


 朝は野草を集め、日が落ちるまで畑を耕す。

 食事は時雨が持っていたパンや干し肉と、種を抜いた野草で賄う。

 最低気の農具は小屋の置いてあって、錆びてはいたけどそれを使って畑を耕している。


 朝から晩まで肉体労働。

 走り回るし桑を振るのも疲れるし、ぶっちゃけめちゃくちゃキツい。

 でも、俺はどこか満足感みたいなもので心が充実しているのを感じていた。

 これが、俺が求めた平穏な生活。


「ふふ。楽しそうだね」

「普通だよ、普通」

「普通が一番好きなくせに」

「うっせー。知ったような口を聞くな」

「だって知ってるんだもーん」


 時雨との仲は相変わらずで、そもそも俺はまだこいつの言うことを全ては信じられてないし、ちょっと怪しい奴だけど、なんだか追い出す気にもなれず、ずっと生活を共にしてる。


 二人で飯食って、畑耕して、寝る。

 そんな生活を送り続けて一週間。

 種を植えた畑から、小さな芽が出ていた。


「うおおおおおお! 見ろ、時雨! 芽だ!芽が出てる!」

「うん。出てるね」

「俺たちが耕した畑から、ちゃんと芽が育ってるぞ!」

「うん。頑張った甲斐があったね」

「なんか感動するなぁ……」

「ふふ。そうだね。僕もアッシュが嬉しそうで嬉しいよ」


 植えた種の全てが発芽する、とまではいかなかったけど、この土地でどんな作物が育つのかという情報は、何となく集まったと思う。


「フレッシュトマトにヤツネイモ、ホワイトコーン、エッグピーチ。今の季節はこのくらいだけど、時期が違えば別の作物もいけるんじゃないかな?」


 もうじき冬が訪れる。

 ある程度でも収穫できれば大満足だ。

 ともかく、これでこの土地でも作物が育つことは確認できた。

 後はこの畑をしっかり管理すれば、当面の間は食料に困ることもないだろう。

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