第9話「崩壊する秩序(3)」

翌朝 7:00


看守の怒鳴り声で目を覚ました。ピエトロはあくまで留置であるため、起床時間に起き労働する必要はないのだが、寝心地が悪いこともあり目を覚ましてしまった。


(身体中痛え)


ぼうっと外を見ていると、オレンジの囚人服を着た長髪の男がこちらを見ながら看守に引っ張られて言った。


(シュガー……か)


痩せこけた男に僅かな哀れみを感じた。


そのまま、鉄格子の窓から外を眺めた。


「早く出てえ…………マーカス……助け出してくれ、俺を……」


背伸びをして鉄格子を両手で握る。遠くに何か飛行機のようなものが見えた。


「この際飛行機でもいい……。俺に手を差し伸べてくれ〜…………」


その飛行機と思えたものは段々とこちらに近づいてくる。


やがてそれは飛行機やヘリコプターなどではないことに気づいた。


「ひ、人か……?」


そして気づいた。それは何か飛行物体に乗っている"アーバンゲリラ"だ。


手には何か持っている。よく見えなかったが、それが爆弾等の危険物であることは容易に予想出来た。


アーバンゲリラは飛来物の上にたちこちらをはっきりと見ている。


そしてその"何か"をピエトロがいる牢の鉄格子の窓から投げ込んだ。


カランと乾いた音をたてて転がる。そして電子音が一定のリズムでなり始めた。


「─────」 一瞬、ピエトロは頭が真っ白になった。


だがコンマ数秒後にはその爆弾を拾い上げ、外に向かって投げ捨てた。


だがあくまで人間の投力。爆弾の範囲外に投げることは出来なかった。


「ば……爆発する…………」


手をクロスさせ頭の前に突き出したが、牢のすぐ外で爆弾は爆発した。


身体が軽くうき、浮いたかと思えばすぐ鉄格子に叩きつけられた。


ピエトロの牢屋は一瞬で瓦礫の山と化した。


「あッぅあっ…………」


囚人服は破け、その破けた箇所から皮膚も爛れた。


天井も崩れ始め、砂埃が目と喉を襲う。だが、ピエトロは進んだ。


壁が崩れて山になった瓦礫を掻き分け、外へ出た。


爆発による炎を避けながら、アーバンゲリラの方へただ走った。


アーバンゲリラはなぜ刑務所を爆破したのか、俺を狙ったのか、全く分からなかったが、近くの廃工場に入っていったことはなんとか見えた。


刑務所の駐車場に止まっているパトカーのガラスを頭突きで破り、中から鍵を開けた。


「エンジンがかからない……鍵は……」


偶然グローブボックスに鍵が置きっぱなしになっており、それを使ってエンジンをかけた。


サイレンが鳴り出す。止め方が分からないのでそのままアクセルを踏み込み、なれない手つきで運転を始めた。

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