第4話「アーバン・ゲリラ」
メガホンから発せられる情けない声を聞いて、思わず笑いが込み上げた。
「止まれって言われて止まるやつがどこにいるんだよ……」
だが警察たちがピエトロに勇気を与えたことは間違いないだろう。
彼は立ち上がり、堂々と振り向いた。
そしてピエトロは初めてアーバンゲリラの姿を見た。
全身を鉄と見られる金属に包まれ、至る所にナイフ、銃など無数の武器が携帯されている。
顔はエイリアンのようなマスクで包んでおり、ドレッドヘアーのように見えるがそれは全て金属でできた装飾かなにかのようだった。
「お前の目的はなんだ……」
アーバンゲリラは答えなかったが、ゆっくりとパトカーの方を指さした。
「警察か? じゃあ彼らだけを狙えばいい。なぜ民間人を巻き込む。お前は単独か? なにかの組織なのか?」
アーバンゲリラは答えない。表情が読み取れないので話を聞いているのかも分からないが、ただパトカーの方を指さしているだけだった。
パトカーの位置はここから30メートルほど。ピエトロが近くにいるため銃撃ができない様子だった。
(俺が邪魔になっちゃあ元も子もないな。俺がコイツを倒さなくては)
ピエトロはポケットから普段から装備しているサバイバルナイフを取り出した。
全身を金属で覆っていはいるものの、関節がある。どこかの節に差し込めばダメージは確実に与えることができるはずだ。
西洋の鎧と同じだと考えれば、そこまで無敵というものでは無いように思える。
(今しかない)
アーバンゲリラが片手をあげている今がチャンスであると感じ、ピエトロは走り出した。
だがアーバンゲリラの関節にナイフを差し込もうとした時、彼が指を指していた、パトカーの地点が激しく爆発した。
「アツ…」熱を感じた瞬間には身体が宙に浮いていた。
全てがスローモーションのように見える。パトカーがまるで風船のように浮き上がり、こちらに飛んできた。
長いようで一瞬だった。気づけば身体は地面に激しく打ち付けられ、パトカーがさらなる爆発を引き起こし始めた。
耳鳴りが止まらない。爆音さえももう聞こえない。
アーバンゲリラはどこだ?
……怒りがだんだんと湧いてきた。ここで諦めてはただの足でまといだ。警察の足を引っ張るなんて情けないまま終わる訳には行かない。
(俺は……Saviorだ。)
全身の感覚は無い。ただピエトロは立ち上がった。
彼の何がエネルギーとなり彼の身体を動かしているのか、本人にも分からない。
だが、そのなにかがピエトロをつき動かし、堂々とたち続けているアーバンゲリラのもとに彼を運んだ。
アーバンゲリラはゆっくりとピエトロの方を見た。爆発に巻き込まれてもこちらに向かってくる男に驚いているのだろうか、表情が隠されているので全く何を考えているのか分からない。
「アーバン……ゲリラ………」
最後の力を振り絞って、アーバンゲリラの鎧の肘の連結部分にナイフを突き刺した。
(刺さった………)
視界はぼやけておりほとんど何も見えないが、手の感覚が肉を刺したことを教えてくれた。
(一矢報いた……。殺すことは出来ないかもしれないが……一矢……)
アーバンゲリラの身体から何かが溢れる。血液か? いや……。
(……"粉"?)
そこでピエトロの意識は途絶えた。
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