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身長は百七十センチ弱。長くてスリムな美脚、ポニーテール、化粧もけばくないから一般的なイメージとして定着しているようなギャルが苦手な男子にもうける。これで胸もそれなりに大きくてミニスカートで、しかも制服を身にまとっていたら視界に入った瞬間に男はイチコロだよね。
「よく聞こえたね」
私は純粋にあやがタイミング良くやって来たことに驚いた反応をする。
「ちょっと前からすぐそこの廊下でユメと話していたんだよ。そしたらうちの教室がなんか盛り上がっているから気になって覗いてみたら、私の名前をマリが言うんだもん」
「なるほどね。いや、あやを話題にしたのはいくら背が低い女子と付き合いたいっていう男子がいても、あやだったら誰でもオッケーしちゃうんじゃないかって話してたの」
「そういう話。……もう昔の話だから言っても良いかな。私の告白、断った男子いるよ。身長がどうのこうのかは置いておいて」
「えっ、いるんだ。でも、昔ってまさか小学生の頃とか言うじゃないの〜」
あやの私でもフラれないわけじゃないという答えに、えみは小学生の恋愛はノーカンと言わんばかりの勢いでからかう。
「昔ってそんな前じゃないって。二年前、高校一年生の時」
「うそ、ここに入ってからの話? 誰にフラられたの?」
「……」
この質問に沈黙するあや。そりゃあ言いたくないよね。けど、気になるのは妙にあやは私を見つめていること。いや、これって睨めつけられている?
「マリの前では言いたくないかな。つまりそういうこと」
ようやく口を開いたあや。その言葉に胸がドキンって鳴る。また沈黙が流れる
「あやさんも、磯村くんのこと好きだったんですか? しかも、もう告白済み」
奥村さんが再び訪れた沈黙を破る。彼女も驚きを隠せないようでゆっくりとあやに確認するように言った。
「そう。もちろんマリと付き合う前。でも断られた。理由を聞いたら、他に好きな人がいるからだって。誰? って聞いても答えてくれなかった」
「そう。それは残念だったね」
話しても良いって言っても多少は傷口をえぐられたのは間違いない。えみが失恋の話をわざわざ話してくれたあやに感謝するように言う。
私はあの日、傘の中で話した内容を思い出した。
「磯村くんって好きな人いるの?」
「いるけど、最近いたになってしまったというか」
「えっ、どういうこと?」
「もう付き合っている人がいるってことだよ。この前、手を繋いで帰っていくところ見ちゃった」
「えー、誰と誰なの?」
「それは言わないということで」
「なにそれー」
あの時はラッキーとしか思っていなかったけど、あやという選択肢を捨ててまで固執した女子って一体、誰なの!? もしかして私が恭ちゃんと付き合うことができたのは巡り合わせよく運が良かったというわけか。
「その好きな人が真里さんだったということなんですかね?」
「そうなのかな? もう別れようとしているけど」
奥村さんとえみの予想は外れている。けど、敢えてこのことは黙っていようと思う。
「えっ、別れるんだ。なに、上手くいかなかったの?」
「そうそう。付き合って二年経つというのに全然恋人らしい関係性は築けなかったんだってー」
セックスすらしていない、と言わなかっただけえみの気遣いを感じるが恭ちゃんに告白したと打ち明けた直後、この別れるという話はあやはどう受け止めるのか気になってしまう。まさか……。
「そう。きっと私だったら磯村くんと上手くやれたと思うな〜。じゃあ、マリと正式に別れたら慰めに行ってあげようかな」
最後は悪戯するような目つきで言い放つあや。早く別れてくれない? と表情で訴えているのが伝わる……。
「いうねーあや。それにしてもあやはそのあと誰とも付き合わなかったの? 先輩からも告白されたって聞くし、別の相手探しは困らなかったと思うけど」
「悔しいけど、それだけ磯村くんのことが頭から離れられなかったんだと思う。彼、奇跡の存在じゃない? 容姿だけでなく中身も整っている男性なんてそうそういるもんじゃないでしょ」
あやにここまで言わせる恭ちゃんって何者……いや、私と付き合っているんだけど。
私はどうやらとんでもない貴重な人材を自ら手放そうとしていることに幸いにも気がついた。
もしかして私、人の見る目がない?
いやいや、付き合っても全然、私はそれだけの価値を感じたことはなかったから別れようと思っているわけで……。
「あや、夢見すぎ。遠くから眺めている分には綺麗なところしか見えないのかもしれないけど、いざ近い関係になって接してみると、そうでもないよ」
これが経験者だから語れる真実だ!
「私のこと見過ぎってどういうこと?」
あやが戻ってこないからか、ユメも来た。そういう意味ではない。
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