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「とりあえず、これからどうするか作戦を立てないとな」

「ああ、そのことについて、サラ殿とユラ殿を交えて話していたんじゃがな」


 バーバラが遠慮がちに言う。


「先ほど、二人一組になって、行動しようという話になったのじゃ。ワシとユラは戦闘の方が得意じゃから、魔物を狩ることメインでポイントを稼ごうと思う。そこでお前さんたち二人には、宝箱を探すことに専念してほしいのじゃ」

「二人一組になるのは、何か意味があるのか?」

「マルセル殿も言っていたように、今回の試験ではカードを奪われる可能性がある。一人では、奪われそうになっても抵抗することが難しいじゃろう。……もちろん、ユウキ殿が嫌と言うんじゃったら、作戦を変える。ワシが宝箱を探す方にまわってもいい」


 俺はすぐに首を振った。


「いや、それでいいよ。俺はもともと、宝箱を探すつもりだったしな。戦闘も別に得意じゃない」


 不意に、周囲が騒がしくなった。

 いつの間にか、奴隷たちが売店の前から消えていた。


 時計を見ると、時刻は既に12時を回っていた。

 試験が始まったのだ。


「バーバラとユラは魔物討伐に、俺とサラは宝箱を探すことに専念する。作戦はこれだけだ。次は12時間後……昼の12時にここに集合な」

「ああ、分かったぞ」


 俺は手を振り、バーバラとユラを送り出した。

 二階層の広場には、俺とサラだけが残された。


「よしサラ、俺たちも行くぞ。出遅れちまった」

「ほんとだよ。いつ出発するんだろうって、ソワソワしてたし」


 広場には、通路が2つあった。

 一つは、俺たちが広場に入ってくるときに通った通路。

 もう一つは、ダンジョンの内部に続いている通路だ。


 サラとともに、小走りでダンジョンの内部へと入っていく。


『君たちには、このポイント数を競ってもらう。ポイント数が上位3名の者は、外に出る権利が与えられるというわけだ』


 ふと、マルセルの言葉が蘇ってきた。


「……」


 俺は走る速度を徐々に下げていき、やがて完全に立ち止まった。


 この二次試験に参加している人の中から、3人が外に出る権利を得る。

 それに対し、俺たちのチームは4人だ。


 つまり、チームのうち3人が外に出る権利を取得したとしても、一人だけ残ってしまうということ。

 全員が外に出る権利を得ることはないということ。


 ドクン、と心臓が大きく波打った。


 サラにガシッと腕を掴まれた。

 そのまま、ダンジョンのさらに内部へと引っ張っていく。


「ユウ、行くよ」

「でも……」

「そんなこと、説明されたときから分かってたでしょ。アタシは覚悟してる」


 サラの瞳からは、確固たる決意がにじみ出ていた。


 ……そうだ。


 俺は頭を振って、脳内にあった迷いを取り払った。

 頬を2回叩き、サラに向き直る。


 不必要なことを考えるな。

 さっきも思ったことだろ。

 今は、二次試験にだけ集中すればいい。

 選抜試験を勝ち抜くことだけを考えていればいい。


 サラは、神妙な表情でコクリと頷いた。


「とりあえず、2階層から探しに行こう。わざわざ下の階層まで下りるのも面倒だしな」

「いや、5階層くらいから行こ。2階層は人が多いだろうし」

「いきなり5階層? 危険じゃないか?」


 マルセルは言っていた。

 ダンジョンは階層が深くなるほど魔物の強さも強くなる、と。


 2階層でさえ、どれくらいの強さの魔物がいるか分からない。

 それをいきなり5階層なんて……。


「大丈夫、大丈夫、心配ないから。アタシが心を読めるのは知ってるでしょ」

「そりゃ知ってるが……」

「アタシが心を読めるのは、人間だけに限らない。魔物も例外じゃない」

「……ああ、そういうことか」


 サラは、例外なく全ての生物の心の声を読むことができる。

 つまり、魔物を避けて移動することができるってわけだ。




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