070
「とりあえず、これからどうするか作戦を立てないとな」
「ああ、そのことについて、サラ殿とユラ殿を交えて話していたんじゃがな」
バーバラが遠慮がちに言う。
「先ほど、二人一組になって、行動しようという話になったのじゃ。ワシとユラは戦闘の方が得意じゃから、魔物を狩ることメインでポイントを稼ごうと思う。そこでお前さんたち二人には、宝箱を探すことに専念してほしいのじゃ」
「二人一組になるのは、何か意味があるのか?」
「マルセル殿も言っていたように、今回の試験ではカードを奪われる可能性がある。一人では、奪われそうになっても抵抗することが難しいじゃろう。……もちろん、ユウキ殿が嫌と言うんじゃったら、作戦を変える。ワシが宝箱を探す方にまわってもいい」
俺はすぐに首を振った。
「いや、それでいいよ。俺はもともと、宝箱を探すつもりだったしな。戦闘も別に得意じゃない」
不意に、周囲が騒がしくなった。
いつの間にか、奴隷たちが売店の前から消えていた。
時計を見ると、時刻は既に12時を回っていた。
試験が始まったのだ。
「バーバラとユラは魔物討伐に、俺とサラは宝箱を探すことに専念する。作戦はこれだけだ。次は12時間後……昼の12時にここに集合な」
「ああ、分かったぞ」
俺は手を振り、バーバラとユラを送り出した。
二階層の広場には、俺とサラだけが残された。
「よしサラ、俺たちも行くぞ。出遅れちまった」
「ほんとだよ。いつ出発するんだろうって、ソワソワしてたし」
広場には、通路が2つあった。
一つは、俺たちが広場に入ってくるときに通った通路。
もう一つは、ダンジョンの内部に続いている通路だ。
サラとともに、小走りでダンジョンの内部へと入っていく。
『君たちには、このポイント数を競ってもらう。ポイント数が上位3名の者は、外に出る権利が与えられるというわけだ』
ふと、マルセルの言葉が蘇ってきた。
「……」
俺は走る速度を徐々に下げていき、やがて完全に立ち止まった。
この二次試験に参加している人の中から、3人が外に出る権利を得る。
それに対し、俺たちのチームは4人だ。
つまり、チームのうち3人が外に出る権利を取得したとしても、一人だけ残ってしまうということ。
全員が外に出る権利を得ることはないということ。
ドクン、と心臓が大きく波打った。
サラにガシッと腕を掴まれた。
そのまま、ダンジョンのさらに内部へと引っ張っていく。
「ユウ、行くよ」
「でも……」
「そんなこと、説明されたときから分かってたでしょ。アタシは覚悟してる」
サラの瞳からは、確固たる決意が
……そうだ。
俺は頭を振って、脳内にあった迷いを取り払った。
頬を2回叩き、サラに向き直る。
不必要なことを考えるな。
さっきも思ったことだろ。
今は、二次試験にだけ集中すればいい。
選抜試験を勝ち抜くことだけを考えていればいい。
サラは、神妙な表情でコクリと頷いた。
「とりあえず、2階層から探しに行こう。わざわざ下の階層まで下りるのも面倒だしな」
「いや、5階層くらいから行こ。2階層は人が多いだろうし」
「いきなり5階層? 危険じゃないか?」
マルセルは言っていた。
ダンジョンは階層が深くなるほど魔物の強さも強くなる、と。
2階層でさえ、どれくらいの強さの魔物がいるか分からない。
それをいきなり5階層なんて……。
「大丈夫、大丈夫、心配ないから。アタシが心を読めるのは知ってるでしょ」
「そりゃ知ってるが……」
「アタシが心を読めるのは、人間だけに限らない。魔物も例外じゃない」
「……ああ、そういうことか」
サラは、例外なく全ての生物の心の声を読むことができる。
つまり、魔物を避けて移動することができるってわけだ。
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