　雪が降り積もった森は、いつもとはまるで違う表情を見せていた。フィオはミナに誘われ、森へと足を運ぶことになった。「雪の日の森は特別なものが見つかるかもしれないよ。」というミナの言葉に心を踊らせながら、二人は雪道を歩き始めた。

　木々は真っ白な衣をまとい、静けさが辺りを包み込む。足音や木の枝から落ちる雪の音が、森全体に響いていた。その中で、ミナはときおり立ち止まり、地面をじっと見つめていた。

　「ミナ、何を探しているの？」フィオが尋ねると、ミナは笑顔で答えた。

　「雪の下にも、冬にしか見つからない植物があるんだよ。たとえば……」

　ミナが指差した先には、雪を掘り起こした場所に青白い小さな花が顔を覗かせていた。「これ、フロスベルの花。寒さに強くて、冬の森でだけ咲くんだ。乾燥させると風邪に効くお茶になるの。」

　「こんな寒い中で咲く花があるなんて……」フィオは驚きと感心の入り混じった声を漏らした。都会では見たことのない自然の生命力に、胸が熱くなる。

　二人はさらに奥へと進み、雪をかき分けては小さな発見を繰り返した。凍った苔に覆われた石、雪に埋もれた赤い木の実、冬でも元気に動き回る小動物の足跡――そのすべてが新鮮で、フィオの心を満たしていく。

　しばらくすると、ミナが何かを見つけたように声を上げた。「フィオ、こっち来て！」彼女が指差したのは、雪に覆われた倒木の下。そこには薄茶色のキノコが生えていた。

　「これは？」フィオが尋ねると、ミナは満足そうに頷いた。「スノーバウンドキノコだよ。このキノコはスープに入れるとすごく甘みが出るの。冬の森でしか採れない特別な食材なんだ。」

　「すごい……！」フィオはそのキノコを慎重に採りながら、この村での新しい生活が自分の知らなかった世界を次々と広げてくれることを実感した。

　日が傾き始め、二人は森を後にした。村に戻る道中、フィオはふと立ち止まり、後ろを振り返る。「ミナ、森って不思議だね。寒くて厳しい場所なのに、こんなにたくさんの命があるなんて。」

　ミナは優しく微笑みながら答えた。「そうだね。森は生きてるし、私たちにたくさんの恵みをくれる。だから、私たちも森を大切にしなきゃいけないんだ。」

　フィオはその言葉に深く頷いた。エルム村での日々は、ただ楽しいだけではなく、大切なことを少しずつ教えてくれる時間でもあった。雪の森での発見は、フィオにとって忘れられない冬の思い出となった。

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