第八話: 初めての収穫祭
エルム村の秋が深まり、収穫の時期が訪れた。村では毎年、この季節に収穫祭が盛大に行われることになっている。フィオは、その祭りの準備に参加することになり、今までの穏やかな日常とは少し違う活気に包まれていた。
「収穫祭って、どんなことをするんですか?」フィオは、ミナに興味津々で尋ねた。「いろいろあるよ!」とミナは楽しそうに答えた。「まずは、村の畑で収穫された作物を集めて、みんなで料理を作るんだ。その後、夜には村の広場でダンスや音楽があって、みんなでお祝いするんだよ。」
フィオは、その話を聞いてワクワクした。都会での生活では、こういった素朴な行事には縁がなかったからだ。収穫祭は、村全体が一体となる大きなイベントであり、その準備もまた楽しいものであった。
祭りの前日、村人たちは一斉に畑へ出かけて作物を収穫した。フィオもミナと一緒に、野菜や果物を集める手伝いをした。太陽の光の中で、赤や黄色に色づいた野菜が輝いて見えた。土の匂いや、野菜の持つ自然な香りがフィオの心を癒した。都会では味わえなかった、直接自然と触れ合う喜びを感じることができた。
収穫が終わると、村の広場に集められた作物を使って、みんなで料理を始めた。大きな鍋に野菜を入れて煮込むシチューや、焼きたてのパン、果物を使ったデザートなど、次々と美味しそうな料理が作られていった。フィオも、手伝いながらその料理を見ているうちに、次第にお腹が空いてきた。
「フィオさんも、料理を作ってみる?」とミナが提案してきた。「え、私も?」フィオは少し驚いたが、ミナがにこやかに頷くので、思い切って挑戦することにした。フィオは、村の女性たちと一緒に、地元の食材を使ったシンプルな料理を作ることになった。みんなで手分けして作った料理は、どれも温かくて、素朴で美味しそうだった。
祭りの夜、村人たちは集まって広場に座り、作り上げた料理を囲んだ。満ち足りた笑顔が広がり、フィオはその光景を見て心から幸せを感じた。都会では感じることのなかった、こんなに温かなつながりを持てたことに、改めて感謝の気持ちが湧いてきた。
夜が深まるにつれて、村の広場では音楽とダンスが始まった。みんなが輪になり、楽しそうに踊りながら歌う様子を見て、フィオも思わずその輪に加わった。最初は少し照れくさかったが、すぐに自然と体がリズムに乗り、楽しくなった。
「こんなに楽しいなんて思わなかった。」フィオはミナに話しかけた。「ここに来て、よかった。」ミナは満面の笑みで答えた。「そうでしょ?エルム村には、どんな時でも心を温めてくれる何かがあるんだよ。」
その夜、フィオは心からエルム村を愛していることを実感した。この場所には、都会では決して感じることのなかった、穏やかで温かい空気が流れている。
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