　秋の深まりとともに、エルム村は色とりどりの葉に包まれ、風景はまるで絵画のように美しくなっていった。フィオは、この季節の変化を毎日のように感じながら、村での生活にますます馴染んでいった。都会では味わえなかった、自然とともに過ごす時間が貴重で、心が穏やかになるのを実感していた。

　ある日、ミナと一緒に村の外れの森へ出かけることになった。村人たちの間で秋の野草を採るのが流行していて、ミナが「ちょっとした冒険に行こう」と誘ってくれたのだ。フィオはその提案に喜んで応じ、二人で歩きながら森の中へ足を踏み入れた。

　「この森、いつ来ても新しい発見があるんだよ。」ミナが楽しそうに話す。フィオは周りを見渡しながら歩き、秋の森に足を踏み入れた感覚をじっくり味わった。柔らかな落ち葉が足元を覆い、時折、木の間から差し込む光が幻想的に森を照らしている。

　「ここではどんな野草を見つけるんですか？」フィオが尋ねると、ミナは得意げに「秋の野草は、食べられるものや薬草も多いんだよ。」と答えた。「今日は特に美味しいキノコを探してるの。最近、あまり見かけなかったからね。」

　二人は森の中を歩きながら、キノコや他の野草を見つけては、収穫していった。フィオは最初は少し手際が悪かったが、次第にコツを掴み、どんどん楽しくなってきた。自然の中で過ごす時間がこんなに充実していることに、改めて気づかされた。

　「これが美味しいキノコよ。」ミナが手に持った小さなキノコをフィオに見せた。「見た目はちょっと地味だけど、食べるととても美味しいんだ。」フィオはそのキノコを見て、少し驚いた。都会で見たキノコとは全然違って、色も形も素朴だったからだ。

　「本当に美味しいんですか？」フィオが興味津々で尋ねると、ミナは笑って答えた。「もちろん！ほら、これをお料理に加えると、すごく味が深くなるの。」

　二人はその後も森の中で野草を探し続け、帰る頃には大きなカゴがいっぱいになった。フィオは満足そうにそのカゴを見つめ、久しぶりに心からリラックスした気持ちになった。

　「今日は楽しかったですね。」フィオはミナに言った。「あっという間に時間が過ぎてしまいました。」ミナはにっこりと笑って答えた。「自然の中で過ごす時間は、気づかないうちに心を癒してくれるからね。フィオも少しずつ、こういう時間を楽しめるようになったんだね。」

　その言葉に、フィオはうなずきながら、心の中で確信した。エルム村での暮らしが、ただ穏やかであるだけではなく、少しずつ自分を成長させてくれていることに。秋の風景とともに、自分の心もゆっくりと変わっていくのを感じることができた。

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