前のエピソード――第六話: 小さな冒険

　その週末、エルム村では年に一度の「村の集まり」が開かれることになった。集まりは、村人たちが一堂に会し、今年の収穫や村の行事について話し合う大切なイベントだ。フィオは最初、都会のように堅苦しい集まりを想像して少し緊張していたが、ミナが「大丈夫だよ、エルム村の集まりはとても和やかだから。」と励ましてくれたので、少し安心して会場へ向かうことにした。

　会場は、村の広場にある大きな広間のような場所だった。木のテーブルや椅子が並べられ、中央には小さなステージが設けられている。村人たちはそれぞれに談笑しながら集まり、互いに親しげに挨拶を交わしていた。フィオは周囲の温かな雰囲気に少し驚きながらも、心が落ち着いていくのを感じた。

　「フィオさん、こちらへ。」ミナが手を振ってフィオを呼び寄せた。彼女が案内してくれたのは、村の年配の方々が座っているテーブルだった。「こちらが村の長老たちよ。」ミナは優しく紹介してくれた。フィオは緊張しながらも、微笑んで自己紹介をした。

　「おお、ようこそ、フィオさん。」長老の一人がゆっくりと声をかけてきた。「都会から来たんだね。こちらの生活に慣れてきたかな？」その穏やかな問いかけに、フィオは自然とリラックスした。「はい、少しずつ慣れてきました。」フィオは恥ずかしそうに答えた。

　その後、集まりが始まった。村のリーダーがステージに立ち、今年の収穫の報告や来年の作物について話を始めた。その話題の合間に、村の人々は各自の意見や提案を述べ、フィオはその様子を興味深く聞いていた。誰もが自然に自分の意見を述べ、またお互いを尊重し合っているのが印象的だった。都会では感じられなかった、温かいコミュニケーションのあり方がそこにはあった。

　「そして、今年の新しい提案として、皆で村の花壇を整備しようという話が出ている。」リーダーが声を上げると、村人たちは一斉に賛成の意を示した。「それなら、フィオさんも手伝ってくれると嬉しいな。」ミナが目を輝かせながらフィオに言った。フィオは少し戸惑ったが、笑顔で答えた。「もちろん、喜んでお手伝いします！」

　集まりの後、村の人々は自然と親しくなり、話を弾ませながらそれぞれの家に帰っていった。フィオは、自分が少しずつ村の一員になっている実感を強く感じていた。都会で感じた孤独感や疎外感とは全く違う、温かい絆を感じることができた。

　「みんな本当に優しいですね。」フィオはミナに微笑んで言った。「うん、ここでは皆が家族みたいなものだから。」ミナはそう言ってフィオの肩に手を置いた。フィオはその優しさに包まれながら、心から幸せを感じていた。エルム村での生活は、思っていた以上に素晴らしいものだと感じるようになっていた。