第四話: 村の手伝い

 次の日の朝、フィオは村の広場でミナと再会した。ミナは手に大きなバスケットを持っており、「今日は村の収穫祭の準備を手伝ってくれる?」と声をかけてきた。収穫祭という言葉にフィオの目が輝いた。都会ではそんな伝統的な行事に参加する機会もなかったため、すぐに興味を持ち、「もちろん!」と答えた。


 「まずは畑に行こうか。」ミナに案内され、フィオは村の外れにある広大な畑へと向かった。畑には、色とりどりの野菜が並んでおり、収穫の時期を迎えていた。モロヘイヤやトマト、カボチャ、ニンジン…。どれも元気よく育っており、収穫を待つばかりだ。


 「最初は簡単な作業から始めよう。」ミナがバスケットを手渡し、フィオに軽い説明をしてから、畑の一角に案内した。フィオは手際よく収穫作業を始めるが、思った以上に体力を使うことに驚いた。都会ではデスクワークばかりで、こんな風に体を使うことはほとんどなかったが、体が少しずつ慣れてくるのを感じた。


 収穫が終わると、ミナはフィオに「これを運んでくれる?」と言って、重いバスケットを渡した。フィオは少し戸惑ったが、ミナの助けを借りながら何とかそのバスケットを運んだ。「エルム村では、みんなで協力して働くのが普通なのよ。無理をせず、できる範囲でね。」ミナの言葉が、フィオの心に温かく響いた。


 その後、二人は村の集会所に向かい、収穫した野菜を並べていった。村の人たちが次々に集まり、手伝いをしながら楽しげに会話を交わしているのが印象的だった。都会の忙しさとは全く異なる、ゆったりとした時間が流れている。


 「ここに住むと、こうやって自然に触れ合いながらみんなで協力して生きていくんだな。」フィオはふと感じた。都会ではあまり考えたこともなかったが、ここでは「一緒に生きる」ということが当たり前のように根付いていることを実感した。


 昼前には作業がほぼ終わり、みんなで食事を囲むことになった。村の広場には、手作りの木製のテーブルが並べられ、色とりどりの料理が並べられた。採れたての野菜を使ったサラダや、焼きたてのパン、そして温かいスープ。どれもシンプルだが、心が温かくなる味わいだった。


 「これがエルム村の生活なんだ。」フィオは口に頬張りながら、満足そうに微笑んだ。都会では味わえなかった、人々とのつながりと、自然と共に過ごす時間の大切さを感じていた。この村で、少しずつ自分の居場所を見つけていける予感がした。


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