第2話 女性は少年に祝福を与える

アルコールも回りほろ酔い気分で気持ちよく歩いていると公園に着いた。

公園には滑り台にブランコ、砂場に水飲み場があっていかにもな公園でここ自体におかしい雰囲気は感じられない。

よく死亡事故があった際にお供え物も軽く見渡してみたがそれらしい物も無かった。


「まあ所詮噂話だしな」


あまり期待していた訳ではないが流石にここまで何もないと流石に拍子抜けだった。

このまま帰るのは何だかもったいない気がして公園のブランコに腰を掛け酒を飲む。

なんだか少年少女が遊ぶ場所でこんなことをするのは罰当たりな気がしなくもないが、誰もいないし今日くらいはいいだろう。


昔は良く公園で遊んだな。


ブランコで一周回れるかやジャングルジムでの鬼ごっことかあんな怖いこと良くやってたよな、マジで死んでないのが奇跡だと思う。

砂場にダム作ったりだとかあの謎のタイヤの上で落としあいとか自分達で遊びを作って遊んでいたの凄かったな。


あの時は男とか女とか変なしがらみとかが無くて楽しかったな。

日が暮れるまで沢山の人数で日が沈むまで遊んだあの日を思い出す。

いまみんなは元気にやっているのだろうか、もう10年以上会ってもいないし何をしてるのかなんて検討がつかないけど幸せに過ごしていて欲しい。


そんなことを想い、思い出しながらゆっくりブランコに揺られる。


あの頃の将来の夢は何だっただろうか、今はもう思い出せないがどうせ自分のことなので叶えられないような馬鹿で大きな夢を気っと抱いていただろう。


子供の頃のあんな記憶やこんな記憶を掘り起こしていく、もうあの頃には戻ることは出来ないとゆう事実に少し悲しさを感じつつも心は何だか暖かくて、自分の成長が嬉しくもあった。


「どうしたのお兄さん、振られちゃって傷心中?」

「うお!?」


いきなりかけられた声にビクリとブランコを揺らし、落ちそうになる体をチェーンを掴んで支える。

彼女は長く綺麗な黒髪を揺らして面白そうに笑う。


「ははは、お兄さん驚きすぎでしょ。そんな驚くことある?」

「いや完全に自分の世界に入ってて全然気付かなかったわ。それにほら最近ここに幽霊が出るって噂があるし」

「私もそれ聞いたことある。なに私、幽霊だと思われた感じ?」

「幽霊だと思ったよ、こんな時間に音もなく隣に座ってるとか怖すぎだろ」

「確かにそれは怖いかも、ごめんね脅かすつもりは無かったの」


改めて彼女をじっくり見てみる。

手足もしっかりついていて透けている様子もない、服装も今時で飲み会の帰りといった所だろうか。


「ただこんな時間に一人でブランコでお酒飲みながら黄昏てたから気になっちゃってさ」

「まあ確かに気になるよな。ここには散歩ついでに寄ったんだ、幽霊が出るって噂だから確かめようと思って」

「それで幽霊は見つけられた?」

「見つけられてたらもうここから逃げ帰ってるよ」

「それはそうだね、幽霊って見たことある?」

「今のところはないかな、怖いけど一度は見てみたいかも」

「私も見たことないんだ。いつか友達になってみたい」

「幽霊と友達になりたいってマジかあんた」

「え~面白そうじゃない?」

「面白くはないかな」


女性は隣に置いてあるビニール袋に視線を向ける。


「ビールあるかな?お金なら払うから余ってたら私にくれないかな、まだ飲み足りなくてさ」

「僕いまだにサワーしか飲めなくてさ、レモンサワーでいいなら持ってっていいよ。

金は要らない」

「お、レモンサワーいいじゃん。ありがとうこの御恩は忘れないよ」

「大げさだな」


お供え用だった缶を差し出すと上機嫌で受け取り蓋を開ける。

幽霊もサワーが好みじゃない可能性もあるし今日はお供え物は無しでいいか。


プシュッっと炭酸の抜ける音がでる。


「じゃあいっただっきまーす」


ごくごくと何口かお酒を煽りく~っと声をあげる。


「おいおい今日はもう飲んできたんだろ、そんなペース早くて大丈夫か?」

「へいきへいき私お酒強いから」

「それならいいんだけど、ちなみにどれくらい飲んできたんだ?」

「えっと生3杯にサワー2杯と日本酒にウィスキーかな」

「いろいろ飲みすぎだろ、悪酔いしてないよな?」

「大丈夫、私一日じゅうずっと飲んでた日とかあったし」

「酒強すぎるだろ…」

「遺伝っぽいね、父さんも母さんもお酒強かったから」

「飲み会の翌日は絶対に体に来るから羨ましいよ」

「じゃあいっぱい飲んで強くならなきゃね」

「アルハラは辞めてくれ」

「最近ハラスメント多くて困るよね」

「なんでもかんでもハラスメントなって困るよな。まあでもアルハラの概念はあっていいと思う」


昨今色々と配慮のある世の中にはなって来てはいるのはいいことだが、配慮し過ぎてどんどん出来ることも言えることもどんどん厳しくなってきている。

綺麗になって行くのはいいことだけど無菌過ぎるのも良くないと思う俺は古い人間なのだろうか。


「そのうち幽霊なんかにもハラスメントが作られたりしてね」

「そこまで来たら漫画の世界だな」

「でも未来は何があるか分からないよ?もしかしたら幽霊と自然に話せる日が来るかもよ?」

「そんなまさか、ある訳ないだろ」

「じゃあ今ちょっと試してみようか」

「試す?」


彼女は陽気な声を張上げ公園に響かせる。


「幽霊さん~いたら公園の街頭消してみて~」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

3丁目のコンビニ近くの公園には陽気な女性の幽霊が出る @Contract

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画