3丁目のコンビニ近くの公園には陽気な女性の幽霊が出る

@Contract

第1話 最近噂の幽霊少女

月明かりと街頭が静かな夜の街を照らす中を当てもなく一人静かに歩く。

聞こえて来るのは近くを走る車の走行音と自分の足音だけだ。

不審者には気を付けてなくてはと思ったが、はたから見れば冴えない根暗そうな男が一人夜道を歩く光景は逆に不審者と間違われてもおかしくないかとも思う。


することも無くなって手持無沙汰で何となくで始めた夜の散歩だったがこれが意外にも夜風が涼しくて気持ちが良く、暗くて少し不気味に感じるがそれが少し冒険気分を搔き立ててこの年ながらワクワクした。

しかしながら当てもなくただ歩くとゆうのは以外と疲れるもので、毎度どっちに曲がるかとか辞め時を考えるのが面倒だ。

そこで僕は…俺はこの冒険の目的地を作ることにした。


三丁目の郵便局前の公園には幽霊が出る。


近頃バイト先のコンビニでも大学でもこの噂話がよく聞こえてきた。

もともと心霊の類にはあまり興味が無かったが、この冒険の目的地を探していた今の俺にはピッタリでその噂の公園に足を向けた。


なんでも噂だと出るのは女性の若い幽霊らしく、写真に映ったや睨むようにこちらを見ていた、中には追いかけられたなんて色んな話が聞こえてくる。


生きていたころは結構アクティブな幽霊だったのかもしれないな。


なんでも交通事故で亡くなった女子大生が居たらしくその霊ではないかと言われていた。確かに未来これからの明るく夢沢山のそんな時期に死んでも死にきれないだろう。

俺も今読んでいるマンガの物語が完結するまで死んでも死ねないので気持ちは痛いほど分かる。

どうせ通り道にバイト先のコンビニもあるし、お供え物でも買っていくとしよう。





コンビニからはいつもと変わらない明るい光が漏れていた。

店内の様子は時間も遅いだけあって今日も店内はガラガラに見え、品出しをしている友人の姿が見えたので店内に入り声を掛ける。


「今日も暇そうだな」

「え、あ、鳴海なるみ先輩お疲れ様です!」


声を掛けると笑顔を浮かべ彼女は明るい声をあげる。

彼女は柊 花音ひいらぎ かのん、同じ文学研究サークルの後輩でたまたまバイト先も同じでそこからよく話すようになった。

性格は明るく優しく少し人見知りだけど慣れるとどんどん話しかけ、誰からも好かれるそんな子だ。


まさか今日来るはずのない俺が来たのが驚きのようで目を大きく開けている。


「えっとあれ?先輩今日シフト入ってましたっけ?」

「今日は夕方で終わりだよ、可愛い後輩がサボってないか様子を見に来たんだ」

「サボってないですよ、マジメが私の取り柄なので」


今度は顔をぷくーと膨らませる様子に思わず笑う。

毎度のことながら表情がころころ変わって面白いな。


「冗談だよちょっと酒と食べ物を買いに寄っただけだ。柊がマジメなのはみんな知ってるよ」

「それならいいんですけど…でもこんな時間に珍しいですね?」

「明日休みだし久しぶりに夜更かしたくてな。散歩してたんだ」

「それなら日中の方が日が出てて賑やかで楽しくないですか?」

「僕みたいなのはこの時間帯の方が静かで涼しくて好きなんだ、それに早起き苦手だし」

「先輩たまに朝の講義遅れそうになって走ってますもんね」

「見られてたか」


目覚ましで目が覚めてもついつい2度寝しちゃうんだよなぁ。

この調子で社会人になるのを想像すると怖くて仕方が無い、どうにかして働かなくても良い方法は無い物だろうか。


「どうしたら早起きできるんだ?」

「私も早起きは得意では無いですが…早く寝るとか」

「それが出来ないんだ、新刊が構って欲しいって聞かなくてな」

「その気持ちは分かりますが適度な距離間が大切ですよ」

「それはごもっともだ」


一日が26時間くらいあればこんな問題解決なのだが誰か実現してくれないだろうか。


「てゆうかその、誰か起こしてくれる人とかいないんですか?」

「起こしてくれる人?いないよそんな奴」

「その…彼女さんとか同棲されてる方とか」

「いたら良かったんだがな、今年も縁がなさそうだよ」

「そうですか残念ですね」

「とか言いつつ顔が笑顔だぞ」


ため息をつきながら指摘するとしまったと言わんばかりに慌てながら言葉を探している。


「あ、えっとこれはその仲間を見つけて嬉しい感じです!」

「確かに周りがどんどんくっつくと流石に焦ってくるよな。柊ならすぐ周りの男が寄って来るから焦らなくていいと思うぞ」


実際サークル内でも彼女に好意を抱いてるやつがいるとゆうのも聞こえてくるし時間の問題だろう。


「いや私なんてそんな」

「十分可愛いから自身持てって、今年のサークルミスコンはお前が出れば優勝できるレベルだな。」

「無理です無理です!てか先輩はミスコンの賞金目当てですよね?」

「あ、ばれた?」

「先輩はいじわるです」

「ごめんごめん悪かったよ、今度はなんか奢るから」

「そこまでしなくてもいいですけど」


まあ実際、結構いい所まで行くと思うんだけどな。


お酒とつまみをいくつか買い店を出る。


「それじゃあまた学校で」

「はい、また学校で会いましょう先輩」


手を振る彼女を後にコンビニを出ると再び静かな闇に包まれ、少し心ぼそくなった。

それを振り払うようにお酒を開け夜道を進む。


夜は誰に対しても平等に訪れる、ただその感じ方や捉え方は人それぞれだ。

恐怖し慄き一日の終わりという人もいれば、幸せと幸福の象徴の始まりという人もいるだろう。

この夜に何を思うのか俺から見た事実を真実を、光景を景色をどうか君には知って欲しい。


一人でも多くの人彼女のことを覚えておいて欲しいんだ。



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