第7話 華乃だって...

数分間、何も言わずに静かな時間が流れた後、華乃が突然、俺から少し離れ、ゆっくりと顔を上げてきた。彼女の瞳は真剣で、少しだけ緊張したような色を帯びている。息を呑むようにその表情を見つめていると、華乃は目をそっと閉じ、顔を少し寄せてきた。


その瞬間、俺の胸が一瞬で高鳴る。今度は、彼女からキスしてきた。


その柔らかな唇が俺の唇に触れると、全身に電流が走ったような感覚が広がる。最初は軽く触れるだけだったけれど、次第にそのキスは深く、ゆっくりとしたものになった。まるで、今までの不安や迷いをすべて解き放つような、温かく優しいキスだった。


俺はその瞬間、思わず目を見開き、華乃の目をじっと見つめてしまった。こんなことが信じられないような気持ちになって、体が固まる。昨日の夜、俺が華乃にキスをしたあの日と全く違う感情が胸に広がっていく。


彼女の目を見つめながら、何度も心の中で「本当にこれが現実なのか?」と自問自答していた。その瞳は、どこか照れくさそうで、それでも確かな決意を感じさせる。


「華乃…」

俺が声をかけると、彼女は少し恥ずかしそうに目をそらし、軽く頬を染めながら答えた。


「…なんで、そんなに驚いてるの?」


その言葉が、俺をさらに驚かせた。華乃は、まるで最初からこうするつもりだったかのように、少しだけふくれっ面をしている。その無邪気な表情が、また可愛らしくて、俺は心の中で思わず笑みをこぼしてしまった。


「だって…華乃からキスしてくるなんて、信じられないくらい嬉しくて…」

俺の言葉に、華乃は再び目を見開き、驚いたように俺を見た後、ほんのりと照れくさそうに笑った。


「私だって、輝人のことが大好きだから。」

その言葉を聞いた瞬間、心が温かく満たされていくのを感じた。これからも一緒にいたい、ずっとこの気持ちを大切にしていきたいと、改めて強く思った。


「俺も大好きだよ。」

その言葉が口から自然にこぼれた瞬間、華乃は少し驚いた顔をした後、にっこりと微笑んだ。その笑顔は、まるで世界で一番幸せな瞬間を感じているかのようで、俺の胸がきゅっと締め付けられる。


「輝人…」

華乃が少し顔を赤らめながら、俺を見つめてきた。その瞳には、確かに愛情が満ちていて、俺の心はその温かさで溢れた。


「これからもずっと、一緒にいようね。」

華乃が静かに言うと、俺は心から頷いた。彼女の手をそっと握り返しながら、答える。


「もちろん、ずっと一緒に。」


お互いに言葉にしなくても、これから先、何があっても二人で乗り越えていくことを、心から信じていた。今日のこの瞬間が、二人の新しい始まりだと感じた。

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