第6話 沈黙の後

しばらくの沈黙が続いた後、華乃が静かに動き出した。最初はただ少し体を動かしただけかと思ったが、次の瞬間、彼女はゆっくりと俺の肩に寄りかかってきた。その柔らかな温もりが、心にじんわりと広がっていくのを感じた。


「華乃…?」

俺が声をかけると、華乃は顔を少し上げ、恥ずかしそうに目を合わせる。


「…うん。」

彼女は小さく頷き、さらに近づいてきた。今度は俺の腕にそっと頭を乗せて、まるで安心したように深く息をついた。その音すらも、心地よく感じてしまう。


「こんなこと、初めて。」

華乃がぼそりと呟いた。その言葉に、俺は少し驚きながらも心の中で優しく返した。


「俺もだよ。」

彼女の髪に触れながら、そっと顔を近づける。少し冷たい空気が二人の間に漂うが、それはどこか心地よくて、余計に心が落ち着くような気がした。


「でも、なんだか…すごく安心する。」

華乃が目を閉じて、もう少しだけ俺に寄りかかる。その言葉には、今までの不安や緊張が全部溶けていくような、優しい気持ちが込められているのが伝わってきた。


俺は、華乃の頭をやさしく撫でながら、しばらく無言でその静かな時間を楽しんだ。お互いに言葉にしなくても、きっと今の瞬間が大切なことを、二人とも感じているのだろう。


「ずっとこうしていたい。」

華乃が小さな声で言ったその言葉に、俺は心から頷いた。二人の距離が、少しずつ、でも確実に近づいているのを感じる。


「そうだね。」

俺はただ、それだけを返した。


そして、何も言わずにそっと彼女を抱きしめる。言葉では足りないほどの想いが、体中から溢れてくるのを感じていた。

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