第4話 運命の時

俺は、心の中で覚悟を決めた。今この瞬間を逃したら、また同じように迷って後悔するだけだ。


「……華乃。」

俺は彼女の名前を呼び、しっかりと顔を上げて目を見つめる。華乃は少し驚いたように目を丸くして、箸をそっと置いた。


「昨日、言えなかったことがあるんだ。」

自分の心臓の音が大きすぎて、これ以上隣の家に響いていないか心配になるくらいだ。


「俺、華乃のことが好きだ。ずっと前から。」


言葉を口にした瞬間、胸が少し軽くなった。だけど、華乃の反応が怖くて、俺は緊張しながら彼女の顔色を伺った。


華乃は一瞬固まったようだった。次に視線を少し下に落とし、手で頬を隠すように触れた。その仕草がたまらなく可愛い。けれど、それ以上に胸を締め付けるのは、その頬が見る見るうちに赤く染まっていくことだ。


「……そっか。」


小さな声でそう呟いた後、華乃はちらりと俺を見上げた。その表情は、いつもより少しだけ恥ずかしそうで、だけどどこか嬉しそうにも見える。


「なんで今なの?」

華乃が、頬を赤く染めたまま聞いてくる。その声には、少しだけ拗ねたような響きがあった。


「我慢できなくなったんだよ。」

正直にそう答えると、華乃はさらに顔を赤くして、小さく笑った。


「……じゃあ、私も言うね。」

華乃が恥ずかしそうに視線を泳がせながら続けた言葉に、俺は息を呑んだ。


「私も……輝人のこと、ずっと好きだったよ。」


その瞬間、部屋中の空気が柔らかく変わった気がした。ずっと伝えたかった想いが、ようやくお互いに届いた。その幸せな実感に、俺は思わず笑顔になり、華乃もつられるように笑った。


こんな朝を迎えられるなんて、昨夜の俺は思ってもいなかった。けれど、これが俺たちの新しいスタートなんだと思うと、心の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

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