お昼の時間

昼休み、私は瑠璃に誘われて二人で昼食を取ることになった。

外に出たら寒いのはわかりきっていたけれど、瑠璃はそんなことお構いなしだ。


「たまには外で食べるのも悪くないでしょ?」

「いや、普通に寒いんだけど。」


瑠璃は平然とお弁当を広げるけれど、私は寒さに耐えながら鞄からパンを取り出す。


「またパンだけ?」

「なに、それがどうしたの。」

「それで足りるの?お腹空かない?」

「これで十分だから。」


食が細い私は、それ以上食べなくても平気だ。けれど瑠璃は呆れたようにため息をついて、自分のお弁当のおかずを箸でつまんで差し出してくる。


「ほら、これも食べなって。」

「いや、いいって。」

「ほらっ!」


押し切られて、瑠璃から次々とおかずが口に押し込まれる。気づけば私のほっぺたはハムスターみたいに膨らんでいた。


「もう、無理だからっ!」

必死に手で制止し、水を飲み込んで喉を潤す。


「喉がつまって死ぬかと思ったわ。」

「そんなのどうでもいいの。むしろ、あんたのせいで私のおかずがなくなっちゃったんだけど!」


お弁当箱を見ると、確かにおかずがほとんど消えている。


「いや、それ私の口に突っ込んだからでしょ。自業自得だよ。」

「何よそれ。じゃあ、そのパンちょうだい。」


瑠璃は私の鞄からパンを奪うと、無理やり口につめ込む。

「ちょっ、返せって!」

「返しませーん。」


そんなたわいのないやり取りをしながら、私たちは昼食を済ませた。


まだ授業まで時間があったので、私たちはそのまま話を続けた。


「それでさ、新しい子――夏って、どうなの?」

「どうって、何が。」

「真人との関係。」


瑠璃は少し意地悪そうに笑う。


「だから何度も言ってるけど、どうでもいいって。」

「でも、あの子すごい可愛いし、性格も良さそうじゃん。それに昔仲が良かったんでしょ?」

「だから、それがどうしたの。」

「……あんた、本当に気にしてないの?」


瑠璃はじっと私の目を見てくる。その視線が少しだけ痛い。


「真人が誰を好きになろうと私には関係ない。」

「でもさ、いきなり可愛い転校生が来て、真人と昔からの知り合いでしょ?普通に考えたら、惚れるって。」

「真人なんか選ぶ人、見る目ないと思うけど。」


私の軽口に、瑠璃は呆れたような顔をした。


「でも顔は良いんだから、わかんないじゃん。漫画とか小説でもよくある展開でしょ、こういうの。」

「何それ、読んでるの?なんかウケる。」

「馬鹿にしないで。」


瑠璃が肘で軽く突いてくる。ふざけているように見えるけど、その目はどこか真剣だった。


「……あんたさ、それでいいの?このままだと取られるかもしれないよ。」

「だから別にいいってば。」

「本当に?」


「本当に。」

そう言い切ったものの、胸の奥にかすかな違和感が残った。瑠璃が何か言いかけたところで、チャイムが鳴り響く。


「やばっ、戻らないと!」

私たちは慌てて教室へと駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る