「帰る」ということ

千瑛路音

「帰る」ということ

 「帰る」と言えば、大人だと帰郷などを思いつくが、そういう場合、つい不幸な事があったなどと思ってしまう。『チチキトクハヤクカエレ』などと言う電報で帰るとか。


望郷の念と言う言葉がある。長い年月遠く離れた故郷を懐かしく思うといった意味でいいだろうか。例えば、安心感のある家の中にいる印象の心情ではあるがどこか不安というか心に一抹の悲しさみたいなものがある。


なぜそうなるのかなあと思うと、家族や友達と離れた時の寂しさからくるものだという事に気が付く。あるいは慣れ親しんだ風景を二度と見られないという悲しみとか。


帰るという事はつまりは帰る場所から現在は離れているわけだ。帰る場所というのは基本的に家なんだろう。


生まれた所を生家と言うが、この世に出てきて初めて生活する場所だ。外界から身を守ってくれる安心できる場所。そこから離れているのだから不安になるのは仕方のない事なのだろう。


そして、帰るという事は現在いる場所から離れなければならない。その場所は生き続けている場所という事になるので、そこから離れるという事は生命力が落ちることを意味するという風に考えると「帰る」というのは不幸なことという結論に至る。と思う。                   終わり

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