第8話 古の聖女の力を引き継ぎ強くなる
『あっ、あらためて初めまして! あっ、わたし
どうやらこの死体、というか幽霊、
いにしえの聖女っていうし、厳かな雰囲気の人かなって思ったんだけど……。
『あっ、実はわたし、あっ、人との話すのもうずいぶん久しぶりで! しかも日本の人とかもういつぶりだろうっ。あっ、き、キモいですよねすみません……』
なんだか、とってもおしゃべりな人だ。
しかもいちいち言葉の最初に、「あっ」て付けるし。
コミュ障な人なのかな……。
『あっ、その、すみません。あっ。わ、わたし……その、ヒキニートでして』
「ヒキニート……?」
『あっ、はい。向こうでは虐められてて、引きこもりだったんです。小学校からずっと、学校通って無くって……』
「それは……なんと言えばいいのか……大変でしゅね……」
『うっ、うっ……いい人ですねあなた……こんなヒキニートと、話してくれるなんて……』
ヒキニートさん、もとい、
彼女は、当時の王族に連れられ、王都で聖女として活動することになったそうだ。
だが……聖女としての活動は、あまりに過酷だったらしい。
思わず嫌気のさした彼女は、城を抜け出し、元の世界に帰るべく、帰還方法を探したそうだ。
しかし方々手を尽くしたけど、帰る方法はついぞ見つからなかった。
一方で、国は逃げ出した聖女をなんとしても捕まえ、ただ働きさせようと、猟犬のごとき執念で追い回したという。
結局、人の寄りつかない、この場所へと帰ってきた。
以後、ずっと、死ぬまで引きこもっていたそうだ……。
『あっ、あはは! こっちでも向こうでもひ、ヒキニートとか! あはは……! ウケますよねぇ……!』
「……可哀想」
なんだか、話を聞いてるだけで、可哀想に思えてきた。
勝手に連れてこられて、こき使われて、あげく……犯罪者のような扱いを受けるだなんて。
私も……一歩間違っていたら、
幼女の姿では無く、OLの姿で、転移してきていたら……。
『わたしを哀れんでくださり、ありがとうございます』
『そうだ! ここで会ったのも何かの縁です。あなたに、わたしのチートアイテムをプレゼントしちゃいますよ!』
「え、いいんでしゅか……?」
『はいっ! あなたは、わたしのことを悼んでくれました。とてもいい人です。あなたの異世界生活が、少しでも豊かになるように……あなたに、力を与えたいんです』
正直、助かる。
力はいくら合っても、困ることはないから。
「本当に、いいんでしゅか?」
『もちのろんです! その、死体が持ってるバッグが、チートアイテムです』
私が
私は、彼女の死体が大事に抱えていたバッグを持ち上げる。
黒ずんでいたバッグは、私が触れると、まばゆい光とともに形を変える。
黄色の、可愛らしいポシェットへと変化した。
『それは、わたしのチートアイテム。その名も、【
「
「たくさんのチートスキルが付与された、魔法の鞄です!」
私は
~~~~~~
・取り寄せ鞄
→地球から食料などを、取り寄せ可能。
※お金が必要
・
→装備中、自分を含めた姿を自在に変えられる
・
→カバンの中に、もう一つの異空間を作る~~~~~~
どれも……大変有用なスキルばかりだ。
『取り寄せ鞄は、お金をいれて念じれば、地球のアイテムを取り寄せ可能です! 漫画も菓子パンもカップ麺も取り寄せ放題! ヒキニートの必需品!』
続いて、
『これは
私は
すると、可愛らしい旅装へと、一瞬で変わった。
「みゃー!」
てしてし、とましろが尻尾で地面を叩く。 多分拍手してるんだろう。
確かに、さっきまでのダサいワンピースより、今のほうが可愛らしい。
タイツにスカート、そしてケープ。そして……帽子。猫耳が生えてる。(部屋の中に鑑があった。多分取り寄せたんだと思う)
『
た、建物っ!?
ましろが鞄の中にぴょんっ、と入る。
そして、顔だけ出して、「みゃ~♡」となく。
『猫さんは気に入ったようですね』
あとで……私もちゃんと確認しておこう。
まずは……ぺこっ、と私は頭を下げる。
「こんな便利なもの、ゆじゅってくだしゃって……ありがとうごじゃいましゅ」
『いいです。もうわたしには、必要ないものですから。さーって、これでもう思い残すことはありません。さっさと逝きます』
……明るく振る舞ってるけど、彼女は、不安なのだろう。
彼女の魂は、果たして……どこへいくのか……。
「ここで死んだら……どうなるんでしょうか……」
『わからないですね。わたしの元いた場所に帰れると……うれしいな。死んだ、パパとママに……会えると、いいなぁ……会いたいなぁ……』
……死んだらどうなるかなんて、私にはわからない。
天国があるのかもしらない。
……でも、彼女の死体を、ここに残しておくのは、可哀想すぎた。
「あの……
『え? それは……いいけど。でも、どうしてですか?』
「だって……ひとり、残るの、かわいしょうでしゅ……。しょれに! 私が旅してるうちに、現実の世界に、帰る方法、見つかるかも! そしたら……あなたの死体を、向こうの……あなたの実家のお墓に、届けてあげましゅ」
確かに向こうに未練はない。
でも、もし旅の途中、帰る手段が見つかったら……この人の死体を向こうに届けてあげたい。
私に、こんな便利なものをくれた、この人のために。
親切にしてくれた人に対して、何もしないのは……人としてどうかと思うし。
『あっ、あはは……うれしいなぁ……』
しゅうう……と
成仏するんだろう。
『ありがとうございます。本当に、うれしいです。……そうだ、最後に……手をだしてください』
「手……?」
私が
きゅっ、と彼女が私の手を握る。
ぽわ……と私の中に、何か強い力が流れ込んでくるのがわかった。
『貴女に、聖女の力を継承しました』
『条件を達成しました』
『聖女スキルがレベルアップします』
~~~~~~
聖女スキル
・結界lv10
・治癒lv10
・浄化lv10
~~~~~~
3だった私の聖女スキルが、一気に10になっていた。
『これで本格的にお別れです』
「っ! しゃようなら、
『その……最後に、その……名前で呼んで欲しいなぁって……』
「じゃあ……愛美しゃん。ばいばい!」
愛美さんはうれしそうに笑うと、煙のように消えてしまった。
……私は目を閉じて、祈った。どうか、彼女の魂が、元の世界の天国に、いけますようにと。
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